ミキシングをスピードアップする方法 ファーストコール・プラグインを決める[難しさ:やさしい vol.095] MIX/ミキシング/マスタリング

※ 当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

ミキシングを進めていく中で、誰しも取り組みたい課題がミキシングの高速化ではないでしょうか。僕の場合は年齢も高くミキシング自体が楽しいので最近はさほど高速化したいとも思わないのですが(苦笑)、それでも納期設定のある制作では必然的に納期に間に合うように作業する必要があります。また、納期に対して余裕があることは、作品のクオリティを高めることに繋がります。

この記事では初心者のうちに気づいておくべき「ミキシング・スピードアップのためのノウハウ」をひとつ、お届けします。

動画版はこちら

ファーストコール・プラグインを決める

結論から申し上げますが、ファーストコール・プラグインを決めることが高速化に大きく貢献します

ファーストコール・プラグインとは最初に使ってみるプラグインのことです。スタジオ・ミュージシャンに演奏を依頼する際に、最初にスケジュールが空いているか聞いてみるミュージシャンを「ファーストコール」と呼びますが、そこから命名しました。

現代は昔と異なり手頃な価格で相当数のプラグインが入手でき、また、手にあまるほどの情報が入ってきます。結果、ものすごい数のプラグインがインストールされていることが多くなりました。しかし、数多の選択肢を都度的確に使用することができる人などそんなにいないのです。シンセサイザーのプリセット選びでも同じことが言えるのですが、使うツールを選ぶことに膨大な時間を費やすことになってしまうのです。

本来は音作りに時間を割くべきです。多くなった選択肢が制作時間を長くしている可能性に着目すべきというのが、本記事の主旨なのです。例えば、ベースのトラックの音作りをするにあたって、どのプラグインを使うか迷う場合、まずファーストコールに決めているプラグインを立ち上げ、音作りを進めるのです。

ファーストコール・プラグインを決めておくことで、悩む前に音作りを進めることができ、音と向き合ってみることで方向性を絞って行くことができます

ご自身の中でのファーストコール・プラグインを決めてミキシングに取り組んでみましょう。以下に目安として4種類のファーストコールを決めるべきエフェクトを挙げてみました。

  • イコライザーのファーストコール:
  • コンプレッサーのファーストコール:
  • リバーブのファーストコール:
  • マスタートラックのファーストコール:

このうち4つ目の「マスタートラックのファーストコール」は、複数のプラグインをセットにして考えます。これは別記事で改めて紹介します。

どのようなプラグインをファーストコールに選べば良いか?

続いてどのようなプラグインをファーストコールに選んでいけば良いかをまとめてみました。大事なことは、最終的にはファーストコールプラグインを使わなくても良いということです。あくまで最初に立ち上げるプラグインであり、きっかけとして使うのです。

しかし最後までそのままという可能性も多分にありますから、質の高いプラグインが必要です。

1.使いやすい

最大の条件は使いやすいことです。ファーストコールプラグインは、必然的に使う台数が多くなります。つまり、操作する回数が多くなるということです。アナログ機器をモデルにしたプラグインでは、音が良くても使いにくいプラグインが多くあります。使いにくいプラグインは台数が多くなるとストレスも比例して増えることになります。

また、使いやすいにはCPU負荷が低いという条件も含まれます。音や機能が優れていてもCPU負荷が高いものはファーストコールには向きません。前述の通り使う数が多くなりますので、負荷が高いとプロジェクト全体の動作に影響し、結果的に使いにくい状態を生み出してしまいます。

周囲の評判は気にせず、自分が使いやすいと感じるプラグインを選びましょう。「自分の使いやすい」は、評判に左右されると選びにくくなりますので、ご注意ください。

2.音質的な特徴が少ない

音質的に癖の無いものを選びましょう。これには2つの理由が含まれます。

ファーストコールを用いて音作りをする過程では、対象の音を理解していくプロセスが含まれます。プラグインの音質的特徴が強すぎると、対象の音の特性なのか、そうでないのか、判別が難しくなります。特に歪みに気づきにくくなります

もう一つの理由は、ミキシング後半のことを考えての理由です。音が目立つためにはギャップが有効で、特徴的な音のプラグインはすべてのトラックに使うよりも目立たせたいトラックに限定して使ったほうが良い結果が得られます。よって、特徴的なプラグインを後で有効に使うために、ファーストコールでは温存しておく必要があります

3.汎用性が高い(機能性が高い)

最後の条件は、どのような使い方にも耐えうる機能性を持ち、汎用性が高いことです。かんたんに言えば、必要な機能を備えたものです。

イコライザーを例に取ると、3バンドのイコライザーでは対応が難しくなります(機能性が低い)。HPF/LPFを備え、5バンド以上の操作点を持つイコライザーが良いでしょう。

コンプレッサーで例えれば、LA-2A等パラメーターの少ないオプティカルコンプレッサーでは対応できない音が出てきます。アタック・リリース・レシオの調整ができるものが望ましいでしょう。

ファーストコールプラグインの例

最後に筆者のファーストコールを紹介しておきましょう。

ミキシングに慣れてくると、ファーストコールを飛ばして特徴的なプラグインを最初から使う、選ぶこともできるようになります。しかし、何を使うか決めきれないことも多くあり、このようなシチュエーションではファーストコールを立ち上げています。

イコライザー Waves F6-RTA

筆者の講座・記事をご覧いただいた方はもう飽きていると思いますが(苦笑)、イコライザーのファーストコールはWaves F6-RTAです。前述3つの条件に見事に合致する、高機能かつ音質変化の少ないイコライザーです。ダイナミックEQを併用することでほぼ無敵の万能イコライザーになります(苦笑)。

created by Rinker
Waves
¥6,600 (2024/03/18 22:00:02時点 Amazon調べ-詳細)

F6-RTAの先は、NEVE系のEQ(Waves VEQ4やT-RACKS等)、EQP-1系、トランジェント操作系(Eventide Split EQ)、リニアフェイズEQ(iZotope Ozone)などに分岐していきます。

created by Rinker
Waves
¥9,900 (2024/03/19 03:14:12時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥27,720 (2024/03/19 03:14:23時点 楽天市場調べ-詳細)

コンプレッサー Waves H-Compressor

コンプレッサーは紆余曲折色々なものをファーストコールにしてきましたが、最近はH-Compが最も適していると考えています。こちらも多機能で軽く使いやすいということが特徴です。ファーストコール的に使用する場合は、「ANALOG」つまみを「OFF」に設定しておくことがキーポイントです。OFFにすれば音質的特徴が弱くなり、「2.音質的な特徴が少ない」という条件を満たすことができます。

H-CompはWaves H-Seriesバンドルに含まれています。

created by Rinker
Waves
¥13,200 (2024/03/19 10:45:29時点 Amazon調べ-詳細)

その先は1176系、Fairchild 660系、Oxford Dynamics等に分岐していきます。

リバーブ Waves H-Reverb

実際のところは、Sonnox Oxford ReverbかAvid Spaceというリバーブをファーストコールにしていますが、Oxford Reverbはなかなか高価ですし、SpaceはProToolsでしか使えませんので、Waves H-Reverbを挙げました。

Waves H-Reverb

こちらもH-Seriesバンドルに含まれています。

created by Rinker
Waves
¥13,200 (2024/03/19 10:45:29時点 Amazon調べ-詳細)
Sonnox Oxford Reverb

もちろん余裕があるようでしたらOxford Reverbは大変お勧めです。

created by Rinker
Sonnox
¥46,500 (2024/03/19 02:32:04時点 Amazon調べ-詳細)

こうしてまとめてみると、Wavesのラインナップが優秀であることに気付かされます。筆者がWavesが好きな理由のひとつとして、動作が軽いということがあります。Wavesプラグインの多くは動作が軽く、作業の邪魔をしないので、ファーストコールに適していると感じます。筆者のPCはかなり年代ものですが、それでも全く問題なく動きますので、高スペックPCがなくても楽しくミキシングできるでしょう。

動作が軽く感じるのはWaves特有の起動時に一定のCPUパワーを確保するという動作によるものでもありますね(^^)

以上のように、ファーストコールを選んでおくことで最初に迷う時間を短縮でき、これがミキシング高速化に大きく貢献します。ファーストコール自体をアップデートしていけば、自ずと自分のミキシングのカラーが出てきます。ファーストコールはスキルアップとともに変えても良いですし、ミキシングで最後まで使う必要はありません。気軽に選んでみましょう。

ミキシングをスピードアップする方法 ファーストコール・プラグインを決める[難しさ:やさしい vol.095] MIX/ミキシング/マスタリング” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。