Waves F6 Floating-Band Dynamic EQ で始めるダイナミックイコライザー その1ダイナミックイコライザーの使い方 F6-RTA レビュー&使い方 [難しさ:ふつう vol.064]

ミキシングの理解が深まり、イコライザーとコンプレッサーが少しわかってきたら使ってみてほしいのがダイナミック・イコライザー。昔はなかったエフェクトで、かゆいところに手が届く素晴らしいエフェクトです。この記事では筆者お勧めのダイナミック・イコライザー「Waves F6-RTA」を用いてダイナミック・イコライザーについて説明しています。

ダイナミックイコライザーがよくわからない、これから使ってみたいという方はぜひ読んでみてください。

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動画版はこちら!動画音もあるのでわかりやすいと思います(^o^)

https://youtu.be/VQsfAOJXlPk

ダイナミック・イコライザーとは?

ダイナミック・イコライザーはイコライザーとコンプレッサーをかけ合わせたエフェクトであると言えます。ダイナミック・イコライザーという単語がわかりにくいので、最初はコンプレッション・イコライザーだと考えれば良いでしょう。

※なぜコンプレッション・イコライザーではなくダイナミック・イコライザーなのかは本シリーズ記事後半で明らかになります。

ここで改めてコンプレッサーの動作について理解しておきましょう。

言葉で表すと以下のようになります。

入力音について、指定した音量を超えた時に、指定した圧縮率で、自動的に音量を下げる

つまりエクセル等表計算ソフトの条件式のようなものなのです。「〜の時に〜になる」という動作であり、「音が大きい時に下げる」ということです。音が大きくない時は動作しないのです。また、動作について時間軸を持っているのがコンプレッサーの特徴です。

これに対しイコライザーを言葉で表すと以下のようになります。

入力音について、指定した帯域の音量を、常時上げる/下げる

コンプレッサーと異なるのは「常時」という点です。つまりイコライザーに時間軸は存在せず、その代わりに帯域という観点を持っています。コンプレッサーが横軸ならイコライザーは縦軸のようなものです。

最後に、ダイナミック・イコライザーを言葉で表すと以下になります。

入力音について、指定した帯域の音量が指定した音量を超えた時に、指定した圧縮率で、指定した帯域の音量だけを自動的に上げる/下げる

だいぶややこしいことになりました。ポイントは「常時動作する」イコライザーではなく、「特定の条件下でのみ動作する」イコライザーなのです。コンプレッサーの場合は動作条件は「音量=スレッショルド」のみでした。ダイナミック・イコライザーの場合は動作条件が「帯域」と「音量」の2つになります。

  • 音量を基準に動作:コンプレッサー
  • 常時動作:イコライザー
  • 音量と帯域を基準に動作:ダイナミック・イコライザー

つまり、特定の帯域に限定して動作するコンプレッサーなのです。

動作条件が増えるため、イコライザー/コンプレッサーよりも動作範囲が限定されるということになります。結果的にイコライザー/コンプレッサーの動作を最小限に抑えることができるため、音質変化への影響が少なくなります。

本記事では実際の使用例をいくつか紹介していきますので、「〜の時に〜だけ上げたい/下げたい」という条件が出てきたときにダイナミック・イコライザーに結び付けられるようにしていきましょう。

Waves F6 Floating-Band Dynamic EQとは?概要とレビュー

現在では様々なダイナミック・イコライザー(以下ダイナミックEQ)プラグインが発売されていますが、筆者のお勧めはWaves F6-RTAです。その特徴は機能が必要十分で多すぎず、使いやすいユーザーインターフェース。そして音質変化が少ないイコライザーです。また、価格も手頃で入手しやすいのもいいところ。

筆者はF6購入以降、ファーストコールのイコライザーとして使用しています。おすすめのポイントを3つ紹介しましょう。

※ファーストコール:ここではとりあえず最初に立ち上げる定番エフェクトのこと。

ただのEQとしても使用可能!6バンドの自由度が高いイコライザー

F6はダイナミックEQとして扱われていますが、ただのイコライザーとしても使用できます

6つのバンドを持っており、それぞれがシェルビング/ピーキングに変更可能です。また、ローパス・フィルター及びハイパス・フィルターは6バンドイコライザーから独立しているため、フィルターを使用しても6バンドEQをフルに使用できます。

イコライザーとして使用する場合は、各バンドの左3つのパラメーター(FREQ/Q/GAIN)だけを操作すればOKです。

つまり、左3つのつまみだけいじっているぶんにはただのイコライザーです。ダイナミックEQがよくわからないという人もただのイコライザーとして使えます。

見やすいスペクトラム・アナライザー(RTA=Real Time Analyzer)

今でこそ当たり前の機能になってきましたが、F6にはスペクトラム・アナライザー機能があり、入力音のスペクトラム(周波数分布)を目で見ることができます。例えば部屋の特性で音が溜まっている場所など、視覚的に把握できるため作業のスピードアップに役立ちます。

なお、インストールすると「F6」と「F6-RTA」がインストールされ、「F6-RTA」がアナライザー付のバージョンです。RTA無しよりやや動作が重くなりますが、最近のパソコンでは問題にならないでしょう。筆者はF6-RTAしか使っていません。

アナライザーは好みで色々調整ができますが、基本的にはデフォルトセッティングのままで良いでしょう。

使いやすいダイナミックEQ

3つ目がかなり重要で、F6のダイナミックEQはとても使いやすいのです。

ダイナミックEQは様々なプラグインがリリースされていますが、使いにくいものが多いのです。F6のダイナミックEQは思い描いているイメージとの差異が少なく直感的に使えるので、初心者〜中級者でも音が把握しやすく扱いやすいでしょう。

ダイナミックEQと通常のEQは統合されており、単体または複合的に使用することができます。右4つのつまみがダイナミックEQセクションです。使い方は本記事で説明していきます。

普通のEQを使う流れでダイナミックEQを使用できるという点が使いやすいと感じます。EQを使っている途中でダイナミックEQに切り替えたいというケースもしばしばあります。通常EQとして使えないダイナミックEQの場合は、これまでのイコライジングを捨ててダイナミックEQを作り直す必要が出てきますが、F6では通常EQ-ダイナミックEQがシームレスに(境目なく)統合されており、相互を自由に行き来できるのです。

今どきは他のEQでも同じことができるプラグインは多いと思いますが、F6は飾り気がなくて良いのです。音は変わらない、余計なことはしない。シンプルで使いやすい、実用的なファーストコール・イコライザーです。

基本的な動作の把握と使い方

ダイナミック・イコライザーの動作概要

実際の使い方を説明していきます。本記事では理解することを目的としていますので、わかりやすい例で進めてみます。

わざとバスドラムを過剰に大きい音量でミックスした音源を制作しました。このステレオ音源に対して、バスドラムの音量を小さくすべく、普通のコンプレッサーをかけてみます。

通常のコンプレッサーは音源全体が動作・検出対象であるため、バスドラムの音に反応してコンプレッションが作動し、バスドラム以外の音もコンプレッションされてしまいます。つまり、小さくしてほしくない音までコンプレッサーが作動してしまいます。

コンプレッサーではバスドラムの帯域だけ下げるといった帯域を限定した動作ができないのです。

では続いて、イコライザーでバスドラムを小さくできるか挑戦してみましょう。

今度はバスドラムは小さくなりましたがベースの音にも影響が出てしまいました。低域が少なくなりすぎて、寂しい、安定感のない音になってしまいました。

イコライザーの場合は動作帯域は限定できますが常時動作となるため、バスドラムの音がいない時も音がカットされ、バスドラム以外の音にも大きな影響が出てしまったのですす。

整理すると以下のような動作が必要であることがわかります。

バスドラムの音(バスドラムのある帯域)だけ、バスドラムの音がある時だけ音量を下げたい

これを可能にするのがダイナミック・イコライザーなのです。F6-RTAを用いてバスドラムの帯域だけコンプレッサー動作をさせてみると、見事にバスドラムだけ音量を下げることができます。

このように、「〜の時だけ〜の帯域を下げる」という複合的な条件動作を実現するのがダイナミック・イコライザーなのです。

ダイナミック・イコライザー F6-RTAの使い方

実際に設定してみましょう。コンプレッサーが理解できていればさほど難しくないでしょう。

動作対象帯域の指定

まず、動作対象帯域を[FREQ.]で決定します

右の[SOLO]ボタンを点灯させると指定している帯域の音だけ聞くことが出来ますので、便利です。ここではバスドラムの胴鳴り=過剰に大きい音だけを探してみます。帯域の中心が決定できたら、[Q]で対象帯域の幅を決めましょう。なるべく他の音に影響が出ないように広すぎないQを設定するのがコツです。

コンプレッション動作の設定

続いて[ATTACK]と[RANGE]を設定します。

[ATTACK]はコンプレッサーのアタックタイムと同様で、動作開始までの時間を決めます。まずはリアクションを見るために[最速=0.5ms]に設定しましょう。

[RANGE]はコンプレッサーで言うところの[RATIO(レシオ)]のようなものだと思ってください。どの程度コンプレッションするかを決めます。こちらも動作がわかりやすいように[-10.0dB]程度の大きな値に設定してみましょう。

動作開始音量の設定

おわかりの方も多いかと思いますが、[RANGE]/[ATTACK]を設定してもまだ動作しません。動作開始音量=[THRESHOLD]が設定されていないためです。

対象帯域の指定([FREQ.][Q])、コンプレッション動作の設定([RANGE][ATTACK])ができたので、動作開始音量の設定([THRESHOLD])を行いましょう。音源を再生しながら[THRESHOLD]を下げていきます。

これでダイナミック・イコライザーが動作するようになりました。あとは設定値を微調整していきます。

なお、[THRESHOLD]つまみの周囲のレベルメーターは、[FREQ.][Q]で設定した帯域に限定されたレベルメーターです。このメーターを参考に、メーターに2割くらい食い込む感じで[THRESHOLD]を設定してみましょう。

動作時間の設定

[ATTACK]については、遅い設定にすることでコンプレッサー同様アタック音を通過させることができます。逆に言うと遅い設定にすると音が通過して抑えられないということになりますので、確実に音量を抑え込みたい場合は速いアタックタイムに設定します。ダイナミック・イコライザーを使用する場合は確実に抑え込みたいというニーズが多くなると思いますので、基本的には速めの設定を基準にすると良いと思います。最速スタートで良いでしょう。

また、リリースタイムについてもコンプレッサー同様です。リリースタイムがよくわからないという方は、自動設定(ARC)を活用しましょう。最下段の[GLOBAL RELEASE]で[ARC=Auto Release Control]を選択しておくと自動になります。なお、[MNL]はマニュアル=手動です。任意のリリースタイムを設定したい場合は[MNL]を選択し、自分で[RELEASE]を設定してください。

F6-RTAならではの最後の調整

最後にF6ならではの機能を使って、動作対象をさらに絞り込んでみましょう。

左側の[MID]というスイッチを選択してみましょう

これはMS処理と呼ばれるもので、わかりやすく言えば真ん中の音=M=MIDと両脇の音=S=SIDEの音に分けて処理を行う機能です。[MID]を選択した場合、真ん中の音だけが対象になるため、さらに動作範囲を絞り込むことができます。イコライザーの表示にも[M]のマークが表示されます。

バスドラムの場合、音の広がりは少なく、ほぼ真ん中(センター)に定位していますから、真ん中の音だけコンプレッションできれば良い訳です。このような場合は[STEREO=全部]ではなく[MID=真ん中]を選択します。逆に真ん中の音に影響を出したくない場合は[SIDE=両サイド]を選択しましょう。


このように、ダイナミック・イコライザーというのは動作対象を限定できるコンプレッサーだと考えれば理解しやすいでしょう。とことん限定した帯域・時間にだけコンプレッサー/イコライザーをかけることができるため、対象以外への影響を最小限にとどめた音作りが可能になるのです。使いこなせれば音作りの自由度が大きく広がる魔法のエフェクトということができます。

次回は、具体的なシチュエーションでの使用方法を説明していきます。

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シリーズ記事

その1 ダイナミックEQの概要と使い方 & Waves F6レビュー
その2 歌ってみたボーカルMIX 痛い音軽減&部屋鳴りの除去 アコギの響き改善
その3 ボーカルが大きく聞こえる大技!ダイナミックEQ x サイドチェイン
その4 カラオケ(オフボ)のキックだけ上げる方法 ダイナミックEQをブースト側に使う

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