歌い手さん向け 最初のオーディオインターフェースの選び方 歌ってみたに最適なオーディオインターフェースとは?
音響機器メーカーの製品企画に従事した経験を持つ筆者が、歌ってみたに使うためのオーディオインターフェースの選び方を解説。歌ってみたをグレードアップしたい歌い手さんのお役に立てば幸いです。
目次
オーディオインターフェースの必要性
そもそもオーディオインターフェースが何なのかというのは別記事で説明していますのでぜひご覧ください。
パソコンでもスマホでも、外部マイクを使う場合にオーディオインターフェースが必要になります。いわゆる「音のいいマイク」は音響機器専用の端子(XLR端子)で出力されるため、パソコンにもスマホにも接続できないためです。
マイクの購入とセットで検討すると良いでしょう。
オススメマイク
オーディオインターフェースの選び方
必須の条件は以下です。
- XLRメス端子がある
- ファンタム電源が供給できる
- 所有している端末(PCやスマホ)に対応している
- ヘッドホン端子がある
それぞれ詳しく説明していきます。
XLRメス端子がある
歌ってみた録音に適したマイクの接続端子はXLRメス端子(キャノンメス端子)です。接続にはXLR-XLRケーブル(XLRオス-XLRメスケーブル)を使用しますので、XLRメス端子が装備されているオーディオインターフェースを選びましょう。
以下の写真のように、機種によってロックあり・ロック無し等、様々なタイプがあります。ロックあり(ケーブルの抜け防止)はプロ向けの機器で多く採用されますが、歌ってみた録音では必須ではありません。
参考までに、マイク側はXLRオス端子というものが使われています。出力側がオス、入力側がメスとなっているため、ケーブルを延長することが容易です。マイクの接続に使用するケーブルは一般的にマイクケーブルとも呼ばれます。
マイクケーブルは様々で、音質が異なるものの、どれでも使用できます。迷ったら以下のCANARE社のケーブルは安心して使用できます。
筆者は以下のドイツ・KLOTZ社、SOMMER CABLE社のケーブルを愛用しています。
ファンタム電源が供給できる
コンデンサーマイクという種類のマイクは、動作するためにファンタム電源(ファントム電源)という電源が必要です。ファンタム電源が供給できるオーディオインターフェースを選びましょう。
ファンタム電源は「直流48V」という規格であるため、[48V]と省略されることが多くあります。機材に[PHANTOM][+48V]等の記載があるスイッチがあれば、それがファンタム電源供給スイッチです。心配な場合は製品のWebページ等を確認し、「ファンタム電源」「48V」等の記載があればOKです。
所有している端末に対応している
ご自身が所有している録音を行う端末に適合・対応した機種を選択しましょう。パソコン用とスマホ用があり、両方で使えるものもあればパソコン専用、スマホ専用のものもあります。購入する製品のWebサイトを確認し、明白な対応機種表記が無い場合は買っても動かない可能性がありますので、避けましょう。
多くのオーディオインターフェースはUSB規格を経由して端末と接続します。
ヘッドホン端子がある
録音した音を聞くためのヘッドホンを接続する端子があることを確認しましょう。といっても、ヘッドホン端子についてはほぼすべての機種で搭載されていますので、心配する必要はないと思います。
(高解像度に対応している)
デジタル写真と同様にデジタル録音にも解像度というものがあります。
24bit/96kHzまたはそれ以上の形式(フォーマット)に対応しているモデルを選んでおくと良いでしょう。インターネットで販売されているよくわからないメーカーの安価なモデルは低解像度にしか対応していないモデルが多いので、注意が必要です。低解像度でも録音は可能ですが、良い音で楽しむためにはいずれ買い替えることになります。
フォーマットについて詳しく知りたい方は以下の記事を御覧ください。
必須ではない条件
オーディオインターフェースは各社様々な機能を有しており、先述の必須条件以外は付加価値と考えて差し支えありません。必須条件以外はなくても大丈夫ということです。
音質も機能のひとつと捉えることができ、モデルごとに音が違います。もちろん音質が良いものが適しているのですが、音質と価格はある程度比例するため、音が良ければ価格が高いということになります。
高いからといって諦めてしまうよりも、まずは安価なものでも良いので最初の一歩を踏み出していただくことをお勧めします。ただし、最安の価格帯では音質が悪くノイズが多いモデルが多いので、避けることをお勧めします。
必須条件に適合するものの中から、予算が許す限り高いモデルを選ぶと音質や機能を確保することができます。
音質については、マイクの音を受け取って増幅する「マイクプリアンプ(マイクプリ)」という部分の性能が大きく影響します。
実は重要な条件 -デザイン-
音響機器というのはクリエイティブなことをするためのものなので、デザインは重要です。
買ったら音楽を作りたくなる、操作したくなる、机に置いておきたくなる。
そして、音が良さそう。
そう思えるモデルを選びましょう。完全に好みで構いません。評判がいいけどデザインが気に入らないものを買っても、なんだか音が良くない気がしてモチベーションがあがらないものです。最初の1台を買う時は、迷ったら最後はデザインで決めても良いと思います。
選んでいくとわかりますが、事実上、近年では必須条件を満たさないモデルの方が少ないです。したがって、まずは予算を決めましょう。最低ラインは1万円弱の価格帯にしましょう。これ以下の場合は品質が極端に落ちるモデルが存在し、音質も悪く、ノイズが大きく、さらには壊れやすい、対応が悪いなど、後々後悔することになります。
お勧めオーディオインターフェース
信頼できるブランドの製品から、価格帯別に選定してみました。
予算10,000円
TASCAM US-1x2HR
この価格帯では特に音がいいです。Ultra-HDDAマイクプリアンプ搭載。オーディオ性能も同価格帯では最も詳細に開示されていて信頼性があります。
Steinberg UR12
この価格帯では定番といえるモデル。独自のプリアンプD-PREを搭載し、音質にも定評があります。
PRESONUS AudioBox GO
まさに必要最低限。価格も抑えられていますが、信頼性の高い著名なブランドの製品です。
予算 30,000円
MOTU M2
大人気。歌ってみたの定番機種と考えて良いでしょう。入出力ともに高音質で、必要な機能をバランスよく揃え、程よい価格に抑えた秀逸なモデルです。
ROLAND Rubix24
隠れた名機!必要な機能をバランスよく備えるほか、簡単に使えるコンプレッサーを搭載しているため音を整えて録音することも可能です。
歌ってみた向けの解説サイトも用意してくれていますので、安心して使うことができますよ(^o^)
AUDIENT / iD4mkII
音質に定評があり、オーディオ性能も良い数値を表しています。必要な機能に絞ってオーディオ性能を高めたコスパの良いモデルです。
Solid State Logic / SSL2
レコーディングスタジオでよく見るコンソール(音響調整卓)のブランドSSLがリリースしたオーディオインターフェース。昔のSSLを知っている人間からすると垂涎モノのモデルです。
UNIVERSAL AUDIO / VOLT 176
こちらも昔を知る人間からは垂涎モノのモデル。ビンテージプリアンプと著名なコンプレッサーエフェクター1176タイプのエフェクトを搭載。初心者でも使いやすいように作られていますので、音作りの楽しさが少しわかるモデルだと思います。
さらに予算が許すなら、、、
さらに予算が許す場合に筆者がお勧めするのは以下の機種です。
Apogee Duet3
随一のスタイリッシュなデザインをもち、コンパクトながらも非常に音質が優れているデスクトップ型のオーディオインターフェース。入出力は多くありませんが、歌ってみた録音には十分です。加えてDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を搭載し、音質を調整するエフェクトを完備。これがまた秀逸で、好みの音質への調整が可能です。
ちょっとむずかしいかもしれませんが、長く使えることは間違いなし。予算があって、歌ってみたに使うオーディオインターフェースとしては大変お勧めです。
以下の記事・動画でレビューしていますのでご覧ください。
さらに高いモデルも多々ありますが、高ければ良いかというとそうでもありません。高額モデルはプロ向けで多機能であることが多いため、音質はよくても使いこなせない可能性が高くなってしまうのです。気持ちよく歌うためには、高すぎなくて良いのでシンプルなモデルから始めることをお勧めします。
その他の気になる選択肢
USBマイク
オーディオインターフェースとマイクが一緒になったUSBマイクという製品もあります。接続が簡単ですが、マイクだけグレードアップする、オーディオインターフェースだけ買い換える等の小回りが効きません。とにかく気軽にやってみたい人には良い選択肢になりますが、個人的には歌ってみた用途にはあまりお勧めしていません。
一方、配信には向いていると思いますので、生配信用に導入するのはアリだと思います(^o^)
注意点は、USBマイクの多くは低解像度にしか対応していないということです。歌ってみたを高音質で楽しみたい場合は少なくとも24bit/48kHz以上のフォーマットに対応しているモデルをお勧めします。
SENNHEISER Profile USB
マイクの老舗ゼンハイザーがついにリリースしたUSBマイク。24bit/48kHzの解像度に対応するため、歌ってみた用途にも耐えます。ミュートスイッチとアームが秀逸。デザイン、音質も申し分なく、使いやすいマイクです。
Apogee MiC PLUS
USBマイクの中では珍しい24bit/96kHzの高解像度対応モデル。Apogeeは高音質で定評があります。コンパクトで気軽に使えるマイクです。USBマイクで歌ってみたをやるのであれば、お勧めのモデルです。
audio technica AT2020USB-X
マイクでは数少ない安心の国内メーカー。USBマイクの先駆者でありスタンダードとも言えるAT2020をグレードアップし、24bit/96kHzに対応したUSBマイクです。
色々とお伝えしてきましたがいかがだったでしょうか。
結論的には、迷ってしまったらデザインで選ぶのもアリです。良いデザインの開発というのはお金がかかるので、開発にこだわりの無いモデルはカッコ悪くなる傾向があります。また、オーディオインターフェースはデジタル機器であるため将来的には使えなくなることがほとんど。ずっと使うというよりは、3年使うイメージで選んでみると良いでしょう。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。