耳に痛いボーカルの軽減/部屋鳴り除去の方法 Waves F6で始めるダイナミックEQ その2 具体的活用例 [難しさ:ふつう vol.065] 

筆者おすすめのダイナミックEQ Waves F6を使ってダイナミック・イコライザーの使い方を覚えるシリーズの第2回。

今回は3つの実用的な使い方を学びます。これらの内容が理解できれば、どのような時にダイナミック・イコライザーを使えば良いかわかってくると思います。

前回の記事を読んでいない方は前回の記事もご覧ください。

動画版はこちら。音があるのでわかりやすいと思います(^o^)

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記事・動画で使用している音源

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Re:GO / キニナルコ(カラオケ/マルチトラック音源)
ミキシング練習素材 アコースティックギター録音データ

大音量時だけ耳に痛いボーカルを下げる

耳に痛いと感じる理由

活用例その1はボーカルです。ミキシングしているとよくある事例が「サビだけ痛い」という現象です。

耳に痛い音というのは言い換えれば音が大きすぎる時に起こる現象であり、等ラウドネス曲線(等ラウドネスレベル曲線)というものが大きく関わっています。

https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/press_release/pr2003/pr20031022/fig1.png

等ラウドネスレベル曲線とは、様々な周波数の音が感覚的に同じ大きさ(ラウドネス)に聞こえる音圧レベル(等ラウドネスレベル)を結んで作られる周波数特性である。これはいわば聴覚の基本的な周波数感度特性を示す等感曲線ともいえ、聴覚における最も基礎的な特性の一つである。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 Webサイトより引用

例えば100Hzの音と1kHzの音は、同じ音量で出力しても同じ音圧レベルには聞こえないということです。中でも3〜4kHz付近は最も低い音量で「音が大きい」と感じる帯域です。つまり、同じ音量で出していくと4kHz付近が最も早く「耳につく」ようになります

まとめると、「耳が痛い」というのは音量が大きすぎるということであり、「全体の音量は耐えられるのに4kHz付近が耳の許容範囲を超えそう」という時に「痛い」と感じてしまうのです。

つまり、音が大きい時に4kHz付近を押さえ込めば耳に痛い状態を軽減することが可能です。

ダイナミック・イコライザーは「〜の時に〜だけカット・ブースト」できるイコライザーでしたので、この条件に合致しますね。やってみましょう。

ダイナミックEQで耳に痛い音を軽減する方法

まずは帯域を[FREQ.(周波数)]と[Q]を使って設定しましょう。

等ラウドネス曲線を参考に考えれば良いので、3-4kHz付近を中心として、広いQ(1.0程度を目安)で帯域設定をしてみましょう。設定したら[SOLO]にしてモニター音量を上げて聞いてみてください。耳に痛い感じのする音だけ集まっているのがわかるでしょう。

続いては「大きい時だけ下げる」という設定をします。イコライザーで下げてしまうと常時下がってしまうため、ダイナミック・イコライザーを使用します。

前回の記事・動画と同様、まずは[RANGE]を-10dB程度に、[ATTACK]を最速の0.5msに設定します。

続いては再生しながら音が大きい場所でダイナミック・イコライザーが作動するように[THRESHOLD]を下げていきます。大音量時だけ耳に痛い音が緩和されていくのがわかると思います。

最後に[RANGE][ATTACK]を調整しましょう。ダイナミック・イコライザーを使用する場合、カット方向は大胆にカットしてほしいケースが多いため、[RANGE]はそのままで、まずは[ATTACK]を調整してみましょう。

音の迫力、ダイナミクスが失われたと感じる場合は[ATTACK]を長くしていきます。0.5msでは音の立ち上がりも抑え込まれますが、7ms〜20ms程度にすることで立ち上がりの音は通過するため、ややダイナミクスや迫力が戻ってきます。

こもり気味に感じたら[RANGE]を戻してみてください。逆にまだ痛いという時は[RANGE]を下げるか、[THRESHOLD]を下げてみましょう。

パラメーターの設定目安を書いておきますので、参考にして調整してみてください。

  • 動作タイミングの調整:THRESHOLD
  • 動作した後のカット量の調整:RANGE
  • 音の立ち上がり・ダイナミクス感の調整:ATTACK
  • 違和感の調整:RELEASE(まずはARC ONでOK)

マスタートラックでの活用

なお、耳の痛さ改善は単体トラック以外にマスタートラックでも全く同じ技が使えます。良いバランスになっているのに大音量時だけ耳に痛い場合は、マスタートラックへのダイナミック・イコライザーを使うことで、バランスを崩さずに緩和することができます。

マキシマイザーの手前など、マスタートラックの上流側にインサートして使ってみましょう。

部屋鳴りを除去する(影響を緩和する)

部屋鳴りとは

ボーカルを自宅等で録音した場合に悩みの種となるのが「部屋鳴り」です。歌い手さんは気づかないことが多いので、ミキシングする人が部屋鳴りの存在に気づくことが多いでしょう。

部屋鳴りが多く含まれると、特定の帯域の響きが不鮮明になりほわほわした音がずっと聞こえるような状態になります

仕組みとしては、録音した部屋のサイズ、材質、家具やモノの配置によって生み出される「その部屋でよく響いてしまう帯域」が録音されたものです。無音状態で発生している音ではなく、歌や喋りなど、部屋で発生した音にある程度比例して発生します。つまり、大きい声で歌うと部屋鳴りも大きくなります。

この音源を録音した場所もごく一般的なリハーサルスタジオだったので、レコーディングスタジオとは異なり、部屋鳴りが多く含まれていました。
(※マイクの設置場所は実際に録音した時と異なります。)

音が大きい時に部屋鳴りが集まった帯域を押さえ込めば部屋鳴りの影響を緩和することが可能。ダイナミック・イコライザーの出番という訳です。

ちなみに、普通のイコライザーで部屋鳴りの帯域をカットすることでも軽減できますが、部屋鳴りが大きくない時にも音に影響が出てしまいます。昔はイコライザーにオートメーションを書いて部屋鳴りを下げるといった対応をしていました。ダイナミック・イコライザーはイコライザーのオートメーションとも言うことができますね。

また、昨今ではiZotope RX等のノイズ除去ツールを使用することでかなり部屋鳴りを削減できます。しかし高性能ツールは高額であるのと、優秀な自動ツールに頼りすぎると、そのツールがないと部屋鳴りが除去できないようになってしまいます。ここでは仕組みを理解してダイナミック・イコライザーで部屋鳴りの除去・軽減に挑戦してみましょう。

ダイナミックEQで部屋鳴りを軽減する方法

まずは部屋鳴りが多く含まれる帯域を探します。この作業はスペクトラム・アナライザーの表示も参考になりますが、基本的には耳で探すことになります。

音に含まれる「ほわほわ」した不快な響きを耳で覚えて、その音が含まれる帯域を[FREQ.]で探しましょう。[SOLO]をONにすると探しやすいでしょう。また、ボーカルトラックをソロにして探した方がわかりやすいでしょう。

この使い方をする場合、余計な帯域をカットしないように[Q]はやや狭くすると良いでしょう。1.5〜2.0くらいで探してみてください。

参考情報としては、スペクトラム・アナライザーが大きく膨らんでいる場所は部屋鳴りが溜まっている可能性があります。しかし一方で、スペアナのピークをすべてカットすることはやってはいけません。例えばラの音を出したら基音は440Hzになりますから、440Hzの場所は必然的に大きくなるのです。音に従ってピークを示している場所はカットせず、恒常的に音が多く含まれている場所をカットするようにしましょう。

続いては他の使い方同様に[RANGE][ATTACK]を設定し、最後に[THRESHOLD]を下げていきましょう。画面上で指定した帯域が音量にあわせてカットされていることがわかります。

部屋鳴りをカットする場合は漏れなくカットされたほうがよいので、[ATTACK]は最速のままでも良いでしょう。

また、部屋鳴りの場合はダイナミック・イコライザーだけでなく、常時カットを行っても良い時があります。部屋鳴りは常時邪魔といえば邪魔なので、常時カットしても良いのです。通常のイコライザーでのカットを加えるために[GAIN]を下げてみましょう。

[GAIN]を下げて常時EQを作動させる場合は、上記のように[RANGE]を少し戻しても良いでしょう。音を聞いて寂しいと感じたらカットしすぎだと思ってください。

最後に全体でまぜて聞いてみるといかがでしょうか。ボーカルがかなりすっきり聞こえるようになっていると思います。また、リバーブの響きも綺麗になることがわかると思います。

アコースティックギターの響きを整える

最後に応用編です。

〜の時だけ〜の音をカット/ブーストする

という時に使えるのがダイナミック・イコライザーですから、アコースティックギターなどの生楽器においても大変有用です。

アコギの場合はよほど良いギターでない限り「フオンフオン」という不快な響きが含まれることが多いのですが、この不快な響きをダイナミック・イコライザーである程度カットすることができます。

方法は部屋鳴り除去と全く同じですので、ぜひチャレンジしてみてください。動画で使用している音源は以下のファイルを使用しています。

AG-rec_sample1_202109_MK 4 center_01.wav


どのような時にダイナミック・イコライザーが使えるか、おわかりいただけたと思います。

「〜の時だけ〜したい」という場面に直面したら、常時EQで行うよりも音質変化が少ないので、積極的にダイナミック・イコライザーを使ってみると良いでしょう。

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シリーズ記事

その1 ダイナミックEQの概要と使い方 & Waves F6レビュー
その2 歌ってみたボーカルMIX 痛い音軽減&部屋鳴りの除去 アコギの響き改善
その3 ボーカルが大きく聞こえる大技!ダイナミックEQ x サイドチェイン
その4 カラオケ(オフボ)のキックだけ上げる方法 ダイナミックEQをブースト側に使う

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