歌い手にピッタリのちょっといいオーディオインターフェース!Apogee Duet3レビュー&使い方

メディア・インテグレーションさんが輸入している米国の老舗音響機器メーカーApogee(アポジー)。ハイエンドなオーディオインターフェースEnsemble等が有名ですが、比較的手頃なデスクトップ型オーディオインターフェースもリリースしています。その中でも最新機種であり洗練されたデザインが魅力のDuet3を使ってみましたので、レビューしてみます。

結論だけ先に言うと、歌い手さんにはすごく適したオーディオインターフェースだと思います。

次いでMIX師やエンジニア等の持ち運び可能なサブ環境に最適です。1台持ってて損はなし!

歌ってみた録音やMIXに最適な入出力仕様とスタイリッシュなデザイン

かんたんに紹介すると、USB接続の2入力4出力のオーディオインターフェースです。マイクが2本接続できて、スピーカーが左右一組(2本)、ヘッドホンが1台接続できます。出力4というのはスピーカー出力2とヘッドホン出力1(左右セットなので2と数えます)という意味です。

オーディオインターフェースって?という方は以下の記事をご覧ください。

オーディオインターフェースって何してるの?仕組みと役割解説!

2入力はマイク用のXLRメス端子とギター等のハイインピーダンス接続用の1/4″フォンジャックの2種類が用意されていますので、ダイナミックマイクやコンデンサーマイクなどのマイクまたは楽器類を直接接続することができます。同時にマイクの音を受けて機器で扱うためにちょうど良い音量に引き上げるマイクプリアンプも2基搭載されています。

マイクプリについてはこちらの記事をご参照ください。
マイクプリって何?マイクプリって必要?〜マイクプリの役割やスペック解説 EINとは?〜

出力側は1/4″TRSフォン端子になっており、スピーカーへの出力信号をノイズの少ないバランス伝送で接続できます。TRS端子はアンバランス接続のTS端子も兼用できるので、バランス接続に対応していない機器も接続が可能です。

ヘッドホン端子は前面にステレオミニプラグ端子が用意されています。近年は業務用ヘッドホンでも変換プラグがついているので、ほとんどすべてのイヤホンやヘッドホンに対応できるでしょう。

何より特徴的なのは、これらのケーブルはすべてブレイクアウトケーブルによって接続されます。ブレイクアウトケーブルというのは、本体には1本のケーブルのみ接続し、末端で様々な機器と接続する方式を指します。ブレイクアウトケーブル方式を用いたことで、本体側の端子が少なくなり、見て分かる通りの超薄型・スタイリッシュなデザインを実現しています。

机の上には本体だけ。ケーブルはブレイクアウトケーブルの先に接続するので、机の下などに転がしておけばOK。ケーブルが卓上に出ないので綺麗なデスクトップを実現できます。カッコいい部屋を作りたい人には最高のデザインです。

パソコンとはUSBを経由して接続します。付属のケーブルはUSB-CまたはUSB-Aの両対応なので、ほとんどのPCに接続できるでしょう。WindowsでもMacでも使用することができます。

優れたマイクプリアンプとDAコンバージョン

音質については、入力側と出力側に分けて考える必要があります。

入力側の音質

入力側はマイクの音がどういう音になって録音されるか、ということです。マイクの音を増幅するマイクプリアンプと、増幅されたアナログ信号をデジタル変換するADC(Analog to Digital Converter)の品質が影響します

ADCのスペックは以下のように書かれています。

ADコンバージョン
・最大入力レベル: +18dBu
・最大入力レベル: +6dBV
・入力インピーダンス: 4K Ω
・周波数特性: 10 Hz -20Khz: > +/-0.2dB (@44.1Khz)
・THD + N: -103dB
・ダイナミック レンジ: 119dB (A-weighted)
・ADC :TI TLV320ADC6140

メディア・インテグレーションWebサイトより抜粋

特筆すべきはダイナミックレンジ119dBでしょう。簡単に言えばノイズが少なく、大きい音に耐えられるとダイナミックレンジは大きくなります。ノイズに埋まらない、実際に使える範囲の大きさを示すことになります。実質的には機器の持つノイズが少ないことでダイナミックレンジが大きくなるのですが、119dBはかなり大きい数値で、相当にノイズの少ない機器と言えます。

また、[ADC :TI TLV320ADC6140]と記載されているのも注目です。これは、ADCに使っているチップ(パーツ)の名称です。名称やスペックが記述されているというのは自信の現れであり、メーカーが自慢したいポイントということです。

このTI TLV320ADC6140というのはテキサス・インストゥルメンツという著名ブランドのADCです。TIのADCは比較的高額な音響機器で使われています。簡単に言うと高性能パーツを搭載しているということです。

実際に録音してみると、癖のない綺麗な音です。Neve等のマイクプリに代表される色付けは無く、無色透明という単語がふさわしい音色といえます。マイクがよければ良い音に、マイクが悪ければ悪い音に。録音状態がそのまま音に現れます。良いマイクを購入した人にはうってつけのオーディオインターフェースといえるでしょう。

やはりノイズは少なく、ヘッドホンでモニターしていてもノイズは感じません。録音後の音をミキシングしていく段階で音量はどんどん大きくなりますが、ミキシング最終工程まで進んでも入力回路のノイズは気になりませんでした。

DTMステーションさんの記事で実際に録音した音を公開していますので、聞いてみてください。

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低価格帯オーディオインターフェースとの最大の違いは音の耐久性です。これはマイクでも同じことが言えますが、低価格製品はぱっと聞いた感じは音がよく録れます。ノイズも少なく聞こえます。(最初からノイズが聞こえる機器は論外として、、、苦笑)

しかしミキシングが進むにつれて音量は大きくされ、EQやピッチ編集、タイミング編集で加工され、音質が変化していきます。最終工程まで来るとかなり大きな音に調整されることになり、ノイズが目立ってきてしまうのです。録音の時は良くても、最後にノイズが見えてくるのです。

マイクもオーディオインターフェースも、そこそこの価格帯以上の製品は最終工程でも耐えられる音をしているのです。

Duet3も耐えられる音でした。エフェクトをかけても編集をしても音の印象が崩れないので安心して使うことができそうです。

なお、スペックについては「ADコンバージョン」と記載されている通り、入力回路すべての仕様を反映したものではなく、入力回路の中でもADC部分に特化した内容なのでその点は留意する必要があります。

出力側の音質

出力側も入力側同様に優秀で、無色透明解像度の高い音が特徴です。何をしているか、何をすべきかがわかりやすい音なので、レコーディングにおいては音の良し悪しを素早く判断することができます。ミキシングにおいてはエフェクトの操作がダイレクトに反映される印象です。判断が早くなることで、結果的に作業効率の向上につながると感じました。

現場としては、自宅スタジオの他、Amazon Music Studio TOKYOでのミキシング作業で使用しました。このスタジオはちょっと特殊で、リラックスした雰囲気でのレコーディングやリハーサル等に特化しているため、常設されている機器はミキシング向けではありません。したがって機器を持ち込む必要があり、コンパクトで高音質なDuet3を持ち込んでミニマム・ProTools環境を構築しました。

スピーカーはご覧の通りHEDD TYPE07 MK2です。あまり見ないスピーカーですが、音の粒度が細かく、見た目よりも堅実な低域を再生します。中域〜高域の繋がりの良さは秀逸で、なめらかに、無段階的に音がつながり、2WAYではありますが、ウーハーがいつのまにかツイーターになったような印象を受けます。

Duet3との相性も良かったようで、写真のように決して良い環境でもなかったのですが、なかなか良い音を鳴らしてくれました。さすがに部屋の影響も大きく低域は調整が必要でしたが、中域〜高域はとてもフラットで、アルミ箔のようなリアクションが良いもののパリッとしたキレのある音で、ミキシング作業が捗りました。

ヘッドホンはSENNHEISER HD 400 PROと組み合わせています。こちらも自宅とさほど変わらない音でモニタリングできるので、特に違和感なく作業ができました。

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スペック的には以下のようになっています。

D/Aコンバーション
・最大出力レベル(+4dBu リファレンス): +18dBu
・最大出力レベル (-10dBV リファレンス): +6dBV
・ライン出力インピーダンス: 50Ω
・周波数特性: 10Hz -20 Khz: > +/- 0.05dB (@44.1Khz)
・THD + N: -110dB
・ダイナミック レンジ: 124dB (A-weighted)
・ヘッドホン最大出力レベル: 300mW (30Ω), 63mW (600Ω)
・ヘッドホン THD+N: -109 dB, 600Ω ロード
・ヘッドフォンダイナミックレンジ: 124dB (A-weighted)
・DAC: ESS Sabre 9016

メディア・インテグレーションWebサイトより抜粋

出力側でもダイナミックレンジの大きさが際立っています。さらに特筆すべきは「ヘッドフォンダイナミックレンジ: 124dB (A-weighted)」です。よく見るとわかりますが、「ダイナミック レンジ: 124dB (A-weighted)」と似たようなことが2回書いてあります。これはおそらく、スピーカー出力とヘッドホン出力のダイナミックレンジが別々に書かれています

どういうことかというと、ダイナミックレンジに関してはスピーカー出力とヘッドホン出力が同等のパフォーマンスを持っているということです。

スピーカー出力とヘッドホン出力は同じと見せかけてオーディオ回路が異なることがほとんどです。ヘッドホン出力は内部のヘッドホンアンプを経由し、スピーカー出力とは異なる構成、異なるパフォーマンスになってしまいます。多くの場合はスピーカー等ライン出力に比べてパフォーマンスが劣ります。外部ヘッドホンアンプを導入すると音質が劇的に向上するのはこのためです。

ここであえて「ヘッドフォンダイナミックレンジ: 124dB (A-weighted)」と記載しているのは、自信の現れだと考えられます。ヘッドホンを使用する時間が多い宅録ユーザーには非常に有益な特徴となるでしょう。

有益なDSPエフェクト – ECSチャンネル・ストリップ

Duet3にはDSPエフェクトが搭載されており、かけ録りも可能です。DSPとはDigital Signal Processorのことで、簡単に言えば機器上に搭載された演算回路(DSP)の演算能力を用いて使う、オーディオインターフェース自前のエフェクターのことです。

しかしオーディオインターフェースのDSPエフェクトというのは、実際のところ使わない方が多いというのが実情。少なくとも僕はほとんど使いません。iPhone等iOSオーディオインターフェースとして使用する場合、iOS側にエフェクトが少ない事が多いのでDSPエフェクトを使う、くらいでしょうか。使わない理由はかけ録りのリスクを負うべきほどの音質、利便性が無いからでしょう。音はいいんです。が、使うほどでもないということがほとんどなのです。

しかし、Duet3のDSPエフェクトであるECS Channel Stripはなかなか使えます

使えると思ったきっかけは僕のミスでした(;・∀・)。

DSPエフェクトがONになっているのを見落としてレコーディングしてしまったのです。その音がなかなかパンチがあって良い音でした。Duet3、なかなか元気の良い音だなと思ったのですが、よく見たらエフェクトONだったという訳です。

EQ、コンプ、サチュレーター(DRIVE)とあって、特に気に入ったのはDRIVEつまみです。上げた状態で録音すると、程よくアナログ機器風味の音になります。オフであれば前述の通り無色透明なサウンドですが、DRIVEを使うことで一転、違うキャラクターの音が得られます。ロックっぽい音が欲しい場合に適度に上げると良い結果が得られるでしょう。

ただし、上げすぎるときっちり歪みますので要注意です(笑)。

コンプもなかなか使い勝手が良く、強くかけてもコンプ臭さが出てきません。程よく音量を整えられるので、音の印象がよくなります。

これは僕個人の意見ですが、ボーカリストが自宅でレコーディングを行う際は、エフェクトのかけ録りを推奨していません。というのは、使いこなせていない場合の方が多いためです。特にコンプはかけ方に問題がある場合が多いです。かけ録りされてしまうと戻せないため、泣く泣く使わないことを推奨してしまいます。

しかしECS Channel StripのコンプとDRIVEは歪むことだけ注意すれば誰でも使いこなせそうです。歌のレコーディングにはこの上なく便利かもしれません。


ということで紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

歌い手さんには最適なインターフェースだと思いますので、ぜひ活用してみてください。