コンデンサーマイク、いい音で歌を録る3つのコツ [vol.019 難しさ:やさしい] 歌ってみた・マイクの使い方

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歌ってみた制作を中心に自宅でボーカル録音をする方は多くいると思います。コンデンサーマイクを使えば音が良くなる!と思いきやそうでもありません。音を良くするにはマイクの使い方、録音方法が重要なのです。特に重要な3つのコツについてこの記事でお伝えしています。

近年はノイズ除去プラグインが発達した関係で、適当に録音して後でノイズを除去するという思考回路になりがちです。

が!

もともといい音には絶対にかないません。ノイズ除去テクノロジーは、頑張って録ったけど仕方なく入ってしまったノイズを消すために使うものだと考えましょう。

さらには、ピッチ編集・タイミング編集などを行う場合、音の耐久性が問われます。録音の質が悪いとピッチ・タイミング編集に耐えられず、音質がどんどん劣化します。いい音で録れた場合は編集に耐えるので、編集による音質劣化にはあまり気づかないものです。

ということで。

録音の質を高めることはすべてに良い効果をもたらします。自宅録音でもできる3つのコツに絞ってみましたので、チャレンジしてみてください!

以下の動画と連動した内容になっています。動画では実際のノイズなども聞くことができますので、ぜひご覧ください。

https://youtu.be/-LNWRRLC5N8

その1 ノイズを減らそう

質問箱でこのような質問を頂きました。

ノイズは奥が深いのですが、その楽曲に不要な音はすべてノイズだと思えば良いでしょう。

注意すべきノイズとその対策を挙げてみます。

※質問は質問箱で受付中!https://peing.net/ja/koita_swk

エアコンなどの空調ノイズ

エアコンを稼働させると恒常的にノイズが混入します。ノイズの中でもかなり音量が大きな部類です。換気扇のノイズも同類。普段の生活では当たり前の音なので、見落としやすいノイズですね。

対策は簡単です。録音中はスイッチをOFFにしましょう。

暑い?

我慢です(笑)。

空調機器のノイズを皆無にするためには、家やスタジオを建てる設計段階から対策する必要があり、事実上難しいでしょう。録音中に空調を切るのは自宅環境だけかと思いきや、そんなこともありません。小規模なスタジオだと空調ノイズが大きいので、レコーディングスタジオなのに空調を切って歌を録音することがあります。

※体調と相談しながら自己責任にて行ってください。特に夏は熱中症に気をつけてください。

電源ノイズ

電気製品が恒常的なノイズを出していることがあります。例えば電気製品から出る「ブーン」とか、「ジー」とかいう音です。録音する場所で耳を澄まして聞いてみましょう。冷蔵庫は大きなノイズが出やすいので、小さな冷蔵庫を置いている人は要注意です。

対策は離れるか、電源をOFFにすることです。

生活音や外野のノイズ

筆者のスタジオは1階で、2階直上にはキッチンがあります。ですから、お料理中は水の流れる音包丁で刻む音がします。お料理を作っていただけているので、こういう時は録音しません。家の構造によって自分以外の人の音がどのように入ってくるのかを把握しておきましょう。

また、外の音も入ってきます。有名なのは救急車犬の鳴き声でしょうか。また、雨が強い時は雨の音も入ってきます。

これらの生活音系は、家などの構造物に対策をするか、録音するタイミングに気をつけるほかありません。ノイズにシビアな耳を身につけるのが1番の対策でしょう。

ポップノイズ

ポップノイズは「ぱぴぷぺぽ」などの発音をする時に出る空気の流れによるノイズ。マイクに風が当たって「バフっ」とか「ボフっ」という音が出ます。風がマイクにあたってノイズが出る現象を吹かれと言います。

波形でみてみましょう。こちらが通常の「ポ」。

ぽ の音の波形

以下がポップノイズ入りの「ポ」です(吹かれた ポ)。

口から出る風によってこのような不自然な波形になり、修正は困難です

吹かれの含まれた波形

ポップガードというグッズをマイクの前に設置することで軽減できます。

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▼FIRST TAKE等で使われる鉄タイプもお勧めです。(匂いに強いので複数の人が使うスタジオのような場所で好まれます)

ポップガード
Stedmanのポップガード

リップノイズ

リップノイズは口を開く時、舌が動く時に出ます。口の中が粘っている時、水分が少ない時に出やすくなります。若年よりも中年〜年配の方が出やすい傾向にあります。

口の中の潤いと関係しているため、水で口を潤すことで軽減できます。コーヒーなど成分が口にとどまる飲み物は逆効果です。ポップガードでも若干軽減できますが、ノイズの大小や頻度は人によります。完全に除去するのは難しいノイズの1種です。

その2 反射音(間接音)を減らそう

マイクに入る音は、音源から直線的に来る直接音と、壁などで反射して来る反射音(間接音)があります。

直接音と間接音のイメージ図

自宅など響きが良くない場所でのレコーディングにおいて、必要なのは直接音のみだと思ってください。したがって、間接音を抑えれば抑えるほどクリアな音で録音できます

対策をいくつか挙げてみます。

※部屋の音響対策などを行うと、ある程度間接音が入る方が良い音になるケースが出てきます。

壁の反射を減らす

反射してくる音が減れば良いので、壁で音が反射しないように壁を柔らかくすれば良いのです。これを吸音と呼び、具体的には壁に吸音材を貼るなどの方法で対策します。昔は卵パックが紙だったので、卵パックを貼る人が多くいました。簡単な方法では壁にカーテンをかけるのも効果的です。筆者のスタジオでは以下の吸音材を壁に貼り付けています。

反射しにくい向きで歌う

部屋の中での向きによっても反射は変わります。

壁に向かって歌うと垂直に当たって垂直に返ってきますが、音が斜めに当たると斜めに反射しますから、反射音が変わります。根本的な対策ではありませんが、反射音の音質が変わるので効果が出ることがあります。

向きを変えると反射が変わる

壁に向かって垂直に出た音が並行な壁の間で反射し続ける状況(音)をフラッターエコーと呼びます。フラッターエコーは鳴き龍現象とも呼ばれ、録音には最悪の現象であり、避ける必要があります。並行する壁面が多い場合にフラッターエコーが出てきます。

反射音がマイクに入らないようにする

現代において最も簡単で効果的な対策がこの方法でしょう。

リフレクションフィルターという直接音以外がマイクに入らないようにするグッズが手に入りますので、活用すると見違えるようにクリアな音になるはずです。

リフレクションフィルターとLEWITT LCT840マイク

様々なタイプがありますが、小さいものはセッティングの自由度が低く、効果も薄いので大きいものの方がいいです。広げた状態で400mm以上のものが良いでしょう。材質によって多少効果に違いはありますが、無いよりある方が良いので、安価なもので良いのでまずは購入することをお勧めします。

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その3 歪まない範囲で音を大きくしよう(適切なレベル設定をしよう)

その3が最も重要です。音量が大きすぎて音が破壊されてしまう歪みを避けましょう

音が歪んでいる場合は、目立たなくすることはできますが、除去することは極めて困難です。

適切なレベル設定での録音はレコーディング・エンジニアの腕の見せどころでもあります。レベルが大きすぎて歪んでしまうのはNGですが、レベルが低すぎるのもまた良いことではありません。

ざっくり説明すると、「歪まない範囲で最大限のレベル設定」が望まれます。

レベル設定のコツを見ていきましょう。目指す設定は「腹八分目」です。

まずは、オーディオインターフェースの信号レベル(音量)を確認するランプ(LED)に注視しましょう。歪みが出るギリギリ手前で赤く点灯します。つまり、赤く点灯したら大きすぎです。レベルを上げていき、1番大きな声を出した時に赤く歪まないようにギリギリの大きさで設定しましょう。同時にDAWなど録音ソフト側のメーターも確認しましょう。

下の写真では、中段の3/4に注目。4は大きすぎで赤く点灯していますので下げる必要があります。このオーディオインターフェースではレベルが低い時は緑が点灯しますが、音の大きさはわかりません。まずは赤くなるまでつまみを回し、下げていくことで適切なレベルに設定できます

オーディオインターフェースの入力音量表示

歌っていると声が大きくなっていきます。盛り上がってきたところで歪んでしまったら最悪。歪むくらいなら音が小さい方が良いので、絶対に歪ませないためのマージンを確保しましょう。

ギリギリの設定から2割くらい下げることでマージンを確保できます。録音ソフト側のメーターを見ながら調整すると良いでしょう。

また、録音開始後にレベルを下げることもありますが、複数回録音していいところをつなぐ場合は注意が必要です。異なるテイクをつなぐ時にレベル差が出ることがあります。

なぜノイズが少ない方が良いのか

ノイズというのは録音している時には気づかないもので、後でミキシングしているとにき気づくことが多いです。なぜでしょうか?

理由はミキシングでどんどん音を大きくしていくからです。

ボーカルトラックは出力までに3〜4回程度コンプレッサーがかかることになります。コンプレッサーでは大きい音を抑え、小さい音が上がります。この時に隠れていたノイズが一緒に上がってきてしまうのです。声の大きさを2倍にしたら、ノイズも2倍になります。ノイズと声はセットで録音されるので、声だけ音量を上げるということはできないのです。

後でノイズが大きくなってしまう仕組み

ノイズが目立ってくると、それ以上は音量を上げられません。

ミキシングに耐える音で録れるか。

ノイズが少ない音がミキシングで重視される理由はここにあります。ノイズの多い音はミキシングに耐えられないのです。

ノイズをノイズだと思えるセンス

そもそもノイズとは何なのでしょう。

直訳では雑音。これまた難しいですね。雑とは難しい言葉です。ちなみに筆者は雑草という言葉が嫌いです。雑な草など無いと思います。

さておき、音楽におけるノイズとは冒頭にも書きましたが「その楽曲に不要な音」と捉えることができます。

こちらの曲を聞いてください。

筆者の大好きな矢井田瞳さんの「モノクロレター」という曲なんですが、冒頭の「ジー」という音に注目(注耳?笑)してください。

ギターアンプのノイズなんですが、通常は消したほうが良い「ノイズ」として扱われます。しかしこの曲では曲の内容からノスタルジーを感じさせる演出として「わざと」ノイズが入っているのです(たぶん。僕が作ったわけではないのでw)。この場合は「ノイズ」であって「ノイズ」ではありません。この楽曲には必要な音です。

他にもアコースティックギターのフレットノイズという演奏ノイズがありますが、これも場合によってはわざと入れることがあります。気にして聞いてみると色々な曲で「ノイズ」ではない「ノイズ」を聞くことができるでしょう。

これも挙げておきましょう。曲の最後の最後、ギャーンという音を聞いてください。

これはギターアンプ内蔵のスプリングリバーブを蹴っ飛ばした音だと言われています(笑)。演奏して盛り上がっちゃって最後にアンプ蹴ったということでしょう。しかし、曲の最後を締めくくるカッコいい「ノイズ」です。筆者も真似して蹴ったことがありますが、ビビって思いっきり蹴れなかったので弱々しい音でした(笑)。

曲の中でこの音を出したら怒られますが、この場所、このタイミングだったからこそカッコいいのです。

「モノクロレター」でギターアンプのノイズを入れるかどうか、「Highway Star」でアンプを蹴った音を残すかどうかはセンス次第。音楽的感性だと言えるでょう。ノイズだからと言ってなんでもかんでも消せば良いものではないということがご理解いただけたでしょうか。

今回の記事で紹介したノイズは、ほぼすべての場合において「不要」と判断される音です。しかし、ほぼすべて、です。

みなさんもノイズについて考えてみてはいかがでしょうか。結構面白いですよ。

機器にもノイズがあります

もちろん機器によるノイズもあります。近年は安価なマイクや機器が入手できるようになりましたが、安価な機器では機器そのもののノイズが多いことも多々あります。「一番安いもの」は特にノイズが多い傾向がありますから、初めての購入といえど一番安いものを避けるのが無難です。

以下の記事ではマイクを接続するためのオーディオインターフェースを紹介しています。

ノイズが入ってしまったら

どうしても入ってしまった場合は、録音後に消すための加工をしていくことになります。もちろんすべては消えませんが、以下で紹介しているようなノイズ除去プラグインなどを使用してみると良いでしょう。

今週の宿題

今週の宿題は、家の中にあるノイズを録音して聞いてみましょう。例えば以下のようなノイズを探して、録音してください。

  • エアコン
  • 冷蔵庫
  • 換気扇
  • お風呂
  • お料理
  • 蛍光灯
  • 音が出ている家電

録音方法はiPhoneのボイスメモでも良いですし、きちんとコンデンサーマイクで録音してもOK。わざわざノイズを録音して聞いてみることに意義があります。

ノイズが入らないようにするには、ノイズを取り除くためには、ノイズを知っていることが必要です。生活していてエアコンの音は気になりませんが、音楽録音という観点で耳を使うとノイズという扱いになります。エアコンの音を知っていて、エアコンの音が楽曲に不要だと判断するために「ノイズ」になります。

まずはノイズを知る、ノイズに対する感度を高める必要がありますが、ノイズ録音はノイズへの感度を高めるのに役立つでしょう。

今週の耳トレの解答

今週の解答は Dです!

ギターの前後、無音部分で識別できたと思います。特にBはノイズ音量が大きいので、ギターの音が出ている時も聞こえますね。ここまで大きいとせっかくのギター演奏が台無しになることも。録音する時に厳しくチェックしたいものです。

それぞれ見てみましょう。ノイズ源のプラグインと、ノイズの周波数特性を見てみます。Aはこちら。

Waves H-Delayというディレイプラグインのノイズでした。筆者このディレイは大好きでよく使うのですが、右下の[ANALOG]つまみをON(1-4に設定)するとノイズが出てきます。

続いてBはこちら。

こちらはWaves VEQ。名高いビンテージ機器Neve 1081をモデリングしたプラグインです。やはり[ANALOG]ボタンを押すとノイズが出てきます。またこれも筆者が大好きなプラグインなんですが、結構なノイズが出ます。H-Delayとはノイズの特性が異なっているのがわかります。

最後Cはこちら。

これまたWaves、H-COMPです。HはハイブリッドのHらしいですね。デジタルとアナログの融合ということでしょう。このコンプレッサーもPUNCHというつまみが便利で、普通のコンプレッサーでは物足りない時によく出動します。同様に[ANALOG]ONでノイズが出ます。

A/B/C/Dと聞いてみると、Dがとてもクリアに聞こえませんか?

これが「ノイズが無い」ということの効果なのです。ノイズは欲しかったら後から足せます。しかし取り除くにはひと手間かかりますし、何より楽器やボーカルの音も変わってしまいます。ノイズがある状態と無い状態を聞いたことがあれば、ノイズがある時に容易に気づくことができるでしょう。


さて、ボーカルの録り方とノイズについて綴ってきましたがいかがだったでしょうか。

とにかく、楽曲に不要な音が入らないようにすること。これに尽きます。特にコンデンサーマイクを買った!というみなさんは、マイクのパフォーマンスを引き出せるようにチャレンジしてみてください。いい音で録れるとその先の音がすべて変わります。録音が大切だということが体験できるでしょう。

頑張ってください!

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