コンプのリリースタイム、どうする? 仕組み・動作と設定方法の目安 [難しさ:ふつう vol.077] コンプレッサー/ 使い方 / リリースタイムとは?

コンプのアタックタイムについて考える 音の立ち上がりはどうなっている?

の記事で説明しご好評いただきました、アタックタイムの解説。本記事では、コンプレッサーを理解する上でもうひとつの難関とされているリリースタイムについて解説しています。リリースタイムも奥が深く、多くの技があります。本記事では理解することに重点をおき、仕組みと動作について複雑な理念などは抜きにして解説しています。最後に、迷った時の設定目安を2種類紹介しています。

前述のアタックタイムの記事をご覧いただいた後で対の記事としてお読みいただくと理解が深まると思いますので、ぜひアタックタイム→リリースタイムの順番で読んでみて下さい。

動画はこちら。

リリースタイムとは?

アタックタイムの記事では、アタックタイムとはコンプレッサーの寝起きと準備の早さと説明しました。

その後色々考えていたところ、もっと理解しやすいたとえがあることに気が付きましたので、改めてアタックとリリースをセットで例えてみます。

徒競走で考えてみましょう。

  • アタックタイムとは・・・スタートの合図が鳴ってから実際に走り出し、最高速に達するまでの時間です。
  • リリースタイムとは・・・ゴールのテープを切ってから止まるまでの時間です。

いかがでしょうか?かなりイメージしやすいと思います。この例えを踏まえ、コンプレッサーの動作を考えてみましょう。

音が入力され、音が大きくなり、スレッショルドを超えるとコンプレッサーが動作します。設定したレシオに達するまでのタイムラグがアタックタイムです。

では入力された音が小さくなるとどうでしょう。

スレッショルドを下回るとコンプレッサーは動作を停止します(=圧縮を止める)が、すぐに止めるわけではなく、終了後もタイムラグがあります。このタイムラグがリリースタイムです。

それでは、アタックタイムの実験同様にサイン波(信号音)で実験してみましたので、波形を見て理解を深めましょう。

今回は、音が大きくなって、ある部分から音量が下がる波形です。徒競走で言えば、スレッショルドを超えた地点がスタート、スレッショルドを下回った地点がゴールだと考えて下さい。

拡大すると以下のようになっています。実験のため、ゴール地点で即時に音量が下がるようにしています

このサイン波に、3種類のリリースタイム設定でコンプレッサーをかけました。効果がわかりやすいように、レシオは超強めの50:1で設定しています。

下の画像をご覧ください。上から元の音、リリース5ms、リリース50ms、リリース300msです。波形を見れば一目瞭然、おわかりでしょうか。

赤い枠の部分は、スレッショルドを下回る音量であるにもかかわらず、元の音量よりも小さい音量に圧縮されているのです。コンプレッサーはゴールラインを過ぎてからも走り続けている=圧縮を続けているのです。

リリースタイムが長ければ長いほど走り続けます。入力音はスレッショルドを下回っているにも関わらず、リリースタイムの長さに応じて圧縮を継続するのです。

コンプレッサーをかける目的が「大きな音を抑え込む」であれば、余計な圧縮をしていると捉えることもできます。

先程の例ではサイン波の音量が超短時間で小さくなっていましたが、実際の音はもっと緩やかに変化・減少します。実在する音をイメージするために、2つ目の例を用意しました。0.2秒=200msの時間をかけて音量が下がるというサンプルです。

同様に、上から元の音、リリース5ms、リリース50ms、リリース300msです。

まずは赤い枠の部分の波形の形に注目してください。

元の波形は直線(=時間に沿って同じ割合で音量が減少)であったのに対し、リリースタイム50ms/300msのサンプルは曲線になっているのがおわかりいただけるでしょうか。曲線になっているということは、減衰中も元の音よりも小さく圧縮されている、元の音と異なる音量変化になっているということです。

リリースタイム50msのサンプルでは曲線区間が短く、後半は直線に戻っています。もともとの音は200msかかって減衰したので、途中で元の音に戻ったのです。しかし300ms設定では元の音は減衰完了してもまだ圧縮を続けているため、元の音よりも小さい部分が発生しています。


まとめると、リリースタイムはゴールライン後にどこまで走るか。つまり、どこまで余計に走る=余計に圧縮を続けるかということなのです。

普通に考えれば余計な圧縮をしない方が良いように思いますが、、、、実際のところはリリースタイムが早すぎるとかえって不自然な音になってしまうのが難しいところなのです。動画にあるギターのサンプル音源を聞いてみて下さい。5msだとバサバサとした不自然な音になっています。コンプレッサーによって動作が異なるため不自然さには差がありますが、短くすれば良いものではない、ということを覚えておいて下さい。

では、実際にどのような設定にすれば良いか、2つの設定を紹介します。

リリースタイムの設定目安

その1 どんな音にもマッチする王道:50ms

1つ目は50msです。この設定は不思議とどんな音にもマッチします。不自然さが無い、余計な圧縮感が無い自然な音になるのがメリット。迷ったら50ms前後に設定すれば良いと思います。筆者も実際のところARC(オート)または50ms設定で使用することがほとんどなのです。

50msで設定し、不自然さを感じる場合は50msから少しずつ長くして、50〜100msの間くらいで設定してみましょう。

50msという設定、実はみんな大好き1176コンプレッサーの最速設定です。

1176は具体的な数値で書かれていませんが、RELEASEつまみ右にまわしきり=7の設定がリリース最速で、約50msだと言われています。1176は端的に言えば誰が使っても不自然な音になりにくく、結構いい音になるコンプレッサーです。MAXの設定でも破綻しない数値に設計されていることが理由のひとつなのかもしれません。

50msという設定は、みんなが愛し、知識なしでもそこそこいい感じの音になる1176を模倣した万能セッティングなのです。

その2 リズムの波を作り出す:テンポ・マッチング・リリースタイム

その2は少し難しいのですが、その2が実践できればリリースタイムの活用が色々と見えてくる、コンプ活用の分岐点となる設定です。その1で飽き足らない方は試してみましょう。

その2はテンポ・マッチング・リリースタイムと呼んでいて、設定は楽曲のテンポに合わせて計算で求めます。(※僕がそう呼んでいるだけですw)

簡単に言えば、当該楽曲の4分音符の長さに設定するのです。

例えば、テンポ120の曲の場合は以下のように求めます。

1分=60秒なので、1分 = 1秒(1,000ms)x 60秒 = 60,000msとなります。
テンポ120とは1分間に120カウント(120拍)なので、60,000ms / 120(テンポ) =1拍の長さ = 500msです。

ということで、テンポ120の曲ではリリースタイムを500msにしてみてください。

動画のサンプル曲はテンポが約114なので、60,000ms / 114 = 約526msに設定しています。

テンポ・マッチング・リリースタイムを使うと、コンプレッサーの圧縮によって音の波ができます。やや不自然とも言えますが、テンポにマッチさせることで曲に合ったリズムの波が生まれ、もともとの音よりもノリが良く聞こえることがあります。元の音よりも乗れる感じがすれば成功です。

不自然に聞こえる場合は、4分音符ではなく8分音符の長さにしてみて下さい。半分の長さです。

それでも駄目なら合っていないのでやめましょう。その1の50msにしておくか、ARC(オートリリースコントロール)をつかって下さい。

この設定が作れるようになれば、リリースタイムの活用が色々と見えてきます。テンポを基準値として考えて、様々な設定を試してみて下さい。

テンポ・マッチング・リリースタイムの注意点は、使いすぎないことです。楽曲の中で複数の音に対して使用すると、それぞれの波が喧嘩する場合があります。リズムの肝になっているパートに対して使用すると良いでしょう。


さて、いかがだったでしょうか。

もちろん記事1枚で全部説明できるほど浅いパラメーターではありません。しかし、この記事の内容が理解できればリリースタイムの設定に怖さがなくなると思います。

まとめると、不自然さを出さない設定が第1歩。そのためには50msか、ARCを使いましょう。

その上で不自然さをコントロールして曲に合わせることができれば、コンプレッサーで「ノリ」を作れます。ぜひチャレンジしてみてください。

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