LEWITT LCT840 レビュー 〜管楽器に最適なファットな真空管サウンド〜
指向性切り替えありの真空管コンデンサーマイク、LEWITT LCT840のレビューです。
目次
他のマイクと被らない、唯一無二の真空管マイクサウンド。管楽器やウッドベースに。
LEWITTはオーストリアのマイクメーカーで、比較的新しいメーカーです。7,8年前にNAMM Showで見かけたのが僕のLEWITTの出会いだと思います。メーカー自体は新進気鋭ですが、某有名なマイクメーカーの方がスピンオフして作ったメーカーです。国内ではMeida Integrationさんが代理店をしています。マイク導入にあたり色々お世話になりました。
そのLEWITTの中でもほぼフラッグシップのモデルがこのLCT840です。
最上位機種(フラッグシップモデル)はLCT940というモデルですが、違いは真空管/FETの切り替えがあるかどうか、です。
詳細な仕様は上記メーカーサイトに掲載されていますのでご参照ください。
色々と使ってみましたが、向いているなと感じたのは管楽器。真空管ならではのファットな質感が中低域〜中域に表れます。周波数特性にも表れており、300-400Hz付近にゆるいピークを持っていて、また、高域側にも顕著がピークがあります。フラットという感じではないです。中低域のファットさは歪みっぽいとは異なりますし、ウォームともちょっと異なります。ザラザラが近いかもしれません。ただ、悪い意味のザラザラではなく、なんといいますか、哀愁を感じさせるザラザラ感です(笑)。
WEBで確認したら12AX7管でした。ですよね、この音。真空管変えたら質感変えられるかもしれませんが、12AX7の良さが出ている感じです。
普通のコンデンサーマイクにはちょっと出せない音でしょう。例えばマイクの代表格NEUMANN U 87 Aiは音の解像度が高く、粒が細かく、良いマイクであることは疑う余地がありません。が、U 87 Aiでこの音は録れないでしょう。
ザラザラとファットな音質は前述の通りソロトランペット等の管楽器に適している印象です。セクションブラスを録るのであれば普通のコンデンサーの方がいいかもしれません。ソロ向きです。他のマイクに無い音なので、音が勝手に際立ちます。実際に筆者がレコーディング、ミキシングした音源を聞いてもらうのが早いでしょう。
▼市原ひかり+石田衛+宮川純「Just Fade Away」―Days of Delight Atelier Concert― vol.25 市原ひかりさんのトランペットにLCT840を使用しています
中域以下のファット感はウッドベースにも良いです。胴の鳴りの部分に真空管のファットさが活きてきます。これもレコーディング、ミキシングした音源がありますのでどうぞ。動画の通り、LCT840以外にもマイクを使っていますが、メインはLCT840です。通常のコンデンサーマイクだとクリアすぎてウッドベースの迫力みたいなものが薄くなりますが、迫力の部分が見事に出てきました。
▼伊藤勇司「Isfahan」―Days of Delight Atelier Concert― vol.30
ボーカルに使うならロック系男性ボーカル。基本品質は高いマイクです。
ボーカルにももちろん良いのですが、普通に録るなら普通にU 87 Aiとか普通のコンデンサーマイクで録った方が無難でしょう。あえてLCT840をボーカルに使うのであればロック系男性ボーカルだと思います。
もちろん音の品質と耐久性は問題なく、編集やミキシングに耐える音です。安価なマイクは録り音は良くても編集に耐えきれないものが多いのですが、LCT840はLEWITT上位機種だけあって音の基本品質は高いです。指向性切り替えもありますので、このマイクしかなくても一通りの仕事はこなせるマイクです。
<https://youtu.be/xtOHOkDihlA>
完璧なハードケース他、しっかりした付属品
付属品は豪華です。ハードケースがセットになっていて、持ち運びで困ることはありません。むしろハードケースがしっかりしすぎていて場所を食うのが悩みです。機材車に余裕があれば問題ないでしょう。僕の機材車はMR2なので(笑)。
ハードケースにはマイク、パワーユニット、サスペンション、ウインドスクリーン、専用ケーブルが収納できます。
パワーユニットは3極電源ケーブルが使用可能で、比較的コンパクトです。いつもレコーダーの上に置いて使っています。
パワーユニットで指向性とLCFの切り替えが可能です。
電源は100-120V/230Vの切り替えに対応しています。今の所230Vでは使っていません。
指向性:全指向性、単一指向性、双指向性(全5段切り替え)
LCF:OFF/40Hz/300Hz
PAD:0dB/-10dB/-20dB
唯一不便な点がサスペンション。サスペンションの中でマイクの向きを変えられず、前しか向きません。サスペンションの中でマイクを回してマイキングすることはできませんのでご注意ください。筆者は結構使う技なのです、、、^^;
また、マイクブランドロゴが前というのが定番ですが、このマイクは逆で、真空管が見えるガラスパネルが前です。ご注意ください。
ウインドスクリーンは比較的厚めのスポンジタイプです。お好みに合わせてポップガードを使うほうが良いでしょう。
ということで、損はしませんが使い所は選びますので最初の1本というマイクではないでしょう。よくあるマイクに飽きたらピッタリです。この音は一度聞いたら他で代用ができません。ソロの管楽器は全部これ使おうと思っています。
さらに上位機種のLCT940だとFET/真空管切り替えも可能ですのでさらに汎用性が高くなります。筆者もテストはLCT940で実施しました。真空管の印象が良かったのでLCT840にしましたが、LCT940でも良かったなとは思っています(苦笑)。
そこそこの予算があり、ファットな音、かつ、メンテナンスが容易な現行品をお望みの方には適したマイクでしょう(*^^*)
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。
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