マイクには向きがある! 指向性の解説とその活用法 [vol.105 難しさ:やさしい]歌ってみたレコーディング/コンデンサーマイク

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歌ってみたレコーディング、アコースティックギターのレコーディング、ドラムのレコーディング。生の音を録音するにあたって欠かすことのできない音響機器がマイク(マイクロホン:Microphone)です。

カラオケに行くと、なぜか教えてもらったことはないのに正しい向きでマイクを持つことができます。しかし、レコーディングで使うマイクは向きがよくわからないものも多く存在します。向きを間違えて使うと、高いマイクでも特性通りの高音質を得ることができません。

このコンテンツでは、マイクの持つ向きに関する基礎知識活用方法をお伝えしています。

動画版はこちら

マイクの得意な向きを覚えよう 〜指向性と集音できる方向〜

最初に覚えるべきは、マイクには向きがあるということです。

特にコンデンサーマイクにおいて、以下の写真のように向きを間違えて使用している写真をちらほら見かけます。マイクは向きを間違えると本来のの音が得られません。

NEUMANN TLM 102(この写真は向きが逆です!)

ご自身のマイクの向き=正面と、どのような方向の音を大きく集音するのかを、正確に把握しましょう。

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マイクの正面はどっち?

マイクは空気の振動を電気信号に変換する機器であり、実際に変換するパーツがダイアフラム(振動板)です。ダイアフラムが取り付けられた部分はマイクユニットと呼ばれ、マイクユニットがどのような角度でマイクの筐体(ボディ)に取り付けられているかによって、マイクの正面が決定します

主に以下の2種類があります。

エンドアドレス型

カラオケマイクに代表されるハンドマイクタイプがエンドアドレス型マイクの軸と同じ方向が正面となります。

SENHEISER e 965(エンドアドレス型)

ハンドマイク以外でもエンドアドレス型はあります。以下は筆者の所有するAKG C 480B ULS61というマイクですが、エンドアドレス型なので、軸方向が正面になります。

AKG C480B ULS61(エンドアドレス型)

サイドアドレス型

レコーディング用マイクの多くが採用するのがサイドアドレス型です。広告等で向きを間違えている画像をよく目にします(苦笑)。サイドアドレス型の場合は、マイクの軸に対し垂直方向が正面になります。

SENNHEISER MK 4(サイドアドレス型)

中身を見ると、丸い円盤が見えることがあります。これがマイクユニット及びダイヤフラム本体ですが、ダイヤフラムは縁ではなく、面で音を受けます。よって、ダイヤフラムの面に音が垂直に当たるように設置するのが正しい向きということになります。

金色の部分がダイアフラム(振動板)

また、正面がどちらかわかりにくいサイドアドレス型もあります。一般的にはブランドロゴがある面が正面とされていますが、以下のLEWITT LCT840のように、ブランドロゴ面が後ろとなるマイクもあります。

LCT840 左が裏、右が表

得意な方向はどっち?

マイクが良い音で録音できる方向に関する特性を指向性と呼びます。大きく分けて3種類あります。

  • 単一指向性(Cardioid:カーディオイド)
  • 全指向性(Omnidirectional:無指向性)
  • 双指向性(Figure eight)

使用頻度が高いのは単一指向性で、マイク正面の音を中心に集音します。次いで全指向性。全指向性は部屋の響きが優れる場合に部屋全体の自然な響きを録音する用途で使用します。双指向性は音楽のレコーディングではほぼ使用しないと考えて良いでしょう。

なお、自宅録音では単一指向性があれば事足ります。迷う場合は単一指向性を選択しましょう。

それぞれの音を聞いてみて下さい。この音は、ほぼ同条件とするために、スピーカーから出た音をマイクで集音したものです。

  • 0度:全指向性>単一指向性>双指向性
  • 90度(横):全指向性>単一指向性>双指向性
  • 180度(後ろ):全指向性>単一指向性>双指向性

0度の場合は、音そのものはほぼ同じですが、部屋の響きの量が異なるのがわかります。90度と180度は音そのものに変化があることがわかるでしょう。

マイクの指向性は、マイクに付属するポーラーパターン(Polar pattern)という資料やスペック表で確認することができます。

以下は筆者が愛用するNEUMANN TLM 107というコンデンサーマイクのポーラーパターンです。TLM 107では指向性を5段階に切り替えることができるため、5つのポーラーパターンが掲載されています。

最上段が全指向性、中3つは単一指向性、下段が双指向性に分類されます。

TLM 107のポーラーパターン

TLM 107は背面のスイッチで指向性を切り替えることができます。

<TLM 107背面>

TLM 107の場合はWebページの仕様欄「Directional Pattern」に指向性が掲載されるほか、マニュアルに指向性が掲載されています。使用する前に、所有するマイクの指向性を確認しましょう。

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LCT840の場合は以下のようになっています。

LCT840のポーラーパターン1
LCT840のポーラーパターン2

LCT840も指向性を5段階に切り替えできるため、上記のように5種類のポーラーパターンがあります。なお、横に2つのポーラーパターンがあるのは、周波数ごとに指向性が異なるためです。(後述)

<LCT840の切り替え>

単一指向性は派生型が多数存在します。上記では、2番めはワイド・カーディオイド、4番目はスーパー・カーディオイド(狭指向性)等の名前が与えられています。この他にもハイパー・カーディオイド超指向性など、音を拾う幅にあわせて様々なタイプがあります。

単一指向性の選択基準は、部屋です。部屋の響きが不要であれば、指向性が狭い方が扱いやすくなります。自宅などの音響に優れない環境では、スーパーカーディオイド等が使いやすいでしょう。

一方で、指向性が狭くなると自然な音からは遠ざかっていきます。マイクとして最も自然な特性は全指向性であり、狭くなるに従って不自然な音になるとも言えます。

上記を踏まえ、環境にあわせて選択すると良いでしょう。

マイクを正しく設置しましょう

以上の「得意な向き=指向性」と「正面がどちらか」という情報を踏まえてマイクを設置しましょう。

TLM 107とLCT840にポーラーパターンを重ねてみましょう。この2機種を比較するだけでもかなり異なっているのがわかりますね。

TLM 107
LCT 840

また、「高さ」という要素があります。エンドアドレス型ではあまり問題にならないのですが、サイドアドレス型の場合はマイクユニット(ダイアフラム)と高さがずれると、ポーラーパターン通りの特性が得られません

AKG C 214 高さをダイアフラムにあわせる

マイクを逆さまにしても高さがあっていればOKです。

逆さでも高さがあっていればOK

指向性の活用

指向性を知ることで使える小技を紹介しましょう。

全指向性と言えど向きはある

TLM 107の全指向性のポーラーパターンをよく見てみると、8つの異なる周波数の特性が描かれているのがわかります。左右も異なる内容で、左側は125/250/500/1,000Hzの特性、右側は2/4/8/16kHzの特性です。

TLM 107 全指向性のポーラーパターン

注目すべきは右側、特に8/16kHzの特性です。8kHzでは0度=正面よりも特性がよく、また、16kHzでは極端に90度=真横の特性が悪くなっていることがわかります。

重要なポイントは、全指向性と言えどすべての向きで同じ特性ではないこと、また、音の高さによって特性が変化するということです。覚えておきましょう。

マイクをひねる

音の高さによって特性が変わるのは単一指向性でも同じです。TLM 107の単一指向性のポーラーパターンを見てみましょう。

TLM 107の単一指向性のポーラーパターン

45度マイクを傾ける(ひねる)場合は、315/45度の部分の特性を見ていきます。低い周波数では数dB程度の落ち込みであり、正面とさほど差がないことがわかります。

一方16kHzでは特性が大きく下がり、-8dB程度は落ち込んでいるようです。TLM 107の場合は8kHz付近が膨らむ特性なので8kHzが最も大きな音量になりますが、8kHzから16kHzまでは特性が落ちていくと想定できます

つまり、音源に対してマイクをひねることで、高域がおとなしい音が得られます。ボーカルの音がギラギラする場合や、アコースティックギターの音がキラキラしすぎる時に有効な技です。マイクスタンドの位置は変えずに、マイクホルダーのネジを緩めて角度を変更してみましょう。

マイクをひねると音が柔らかくなる

この技は効果の差はありますが、どのマイクでも使えます。30度〜60度くらいで調整すると面白いでしょう。


以上のように、所有しているマイクの指向性を把握しておくと、音作りに活用することができるのです。逆に把握していないと、そのマイクのポテンシャルを発揮できていない可能性も考えられます。指向性、向きはとても重要なのです。

ミキシングの段階で音作りをすることも重要ですが、それ以上に良い音で録音しておくことが重要です。良い音で録音し、ミキシングで何もしないという選択もまたミキシング。むしろその方が良い結果になります。録音の段階で音作りをするために指向性を活用することができます。

ご自身のマイクの特性を今一度確認し、活用してみましょう。


以下の回も参考になると思いますので、読んでみてください。