NEUMANN NDH 20 スタジオモニターヘッドホン レビュー 〜音が作れるモニター・ヘッドホン〜
マイクメーカーとして不動の地位を誇るNEUMANN(ノイマン)がリリースしたヘッドホン、NEUMANN NDH 20のレビューです。
目次
まるでスピーカー。音が作れるモニター・ヘッドホン。
NEUMANNがリリースするスタジオモニターヘッドホン。
この1行だけでどのような音がするか想像でき、期待を膨らませてしまいます。以前展示会で聞いたことはあり、その時の印象はもちろん良かったのですが、モニター機器というのは実際の制作作業で使って、その作品がリリースされ、時を経て始めてその評価ができると考えています。NDH 20で作った作品がリリースされはじめまして、大丈夫そうなので(笑)レビューを作ってみることにしました。
このヘッドホンは、一言で表現すると「音が作れるヘッドホン」です。
ヘッドホンは売る側にいたこともありますので星の数ほど聞いてきました。それこそ数千円の普及機からジュラルミンケースに入った10万円超のヘッドホンもたくさん聞きました。大別するとオーディオ的なものとモニター的なものに分かれます。オーディオ的なものは必ずしも原音忠実ではなく、聞いていて気持ち良い、浸れる、ということが重要なものです。モニター的ヘッドホンはオーディオとは逆に位置すると考えていて、音がはっきりくっきり、悪い部分はそのまま悪いものとして再生するタイプです。
さらにモニター的なものの中で音を判断できるものと、音が作れるものの2つに分けられます。
このNDH 20はモニター的なヘッドホンであり、かつ、音が作れるヘッドホンです。音が作れるヘッドホンは、少ないです。
どのヘッドホンでも音は作れるのですが(苦笑)、最終的判断はスピーカーに委ねざるをえないものがほとんど。僕がずっと愛用してきたbeyerdynamic DT250/80ですら音を作り込むのには向いておらず、音がどうなっているかをDT250/80で確認し、スピーカーで作り込むというフローを採ります。
対してNDH 20。
ヘッドホンだけで音が作れます。NDH 20で音を作ってスピーカーに切り替えても違和感がないのです。まるでスピーカーで聞いているかのようなヘッドホンなのです。
音の特徴はベニヤ板。ワイドレンジでブレないモニターサウンド。
音の特徴は下から上までビタ!っとした圧力のある元気のいい音です。いい意味でベニヤ板のように耳に迫ってきます(笑)。
ベニヤ板の意図するところは周波数特性に特段ピークやディップがないこと。フラット、という単語はもう少し大人しい印象を与えるので適切ではなく、フラットでありながらもう少し主張のある音です。しかし誇張を感じるようなものではありません。
スペック的な部分では5Hz〜30kHzとスーパーワイドな特性を誇り、そのとおりの音がします。ま、僕の耳がそこまでワイドレンジではありませんが、、、(笑)。特に低音の奥深さと中高域の正確性は特筆すべきでしょう。
先述のbeyerdynamic DT250/80も低域は優秀で、低域判断のために使うことが多かったのですが、使い方としては「低域がどのくらい出ているか」を確認するイメージでした。対してNDH 20は「低域がどうなっているか」を判断することができます。
ワイドレンジゆえ低域よりも高域に耳がいきがちですが、しっかりと鳴っています。大型のユニットが功を奏しているのかもしれません。
中高域については、耳に痛い音になっている時は、特に顕著に「耳に痛い部分」を聞かせてくれます。スピーカーの場合は耳の痛さを見るためには相応の音量が必要になることが多いのですが、NDH 20は比較的小音量でも確認することが可能です。
これらの音が、いつ聞いても同じ音なのです。しっかりと芯があってブレない。僕の印象はベニヤ板です(笑)。
ミキシング用途において唯一無二の存在に。
以上のように非常に優秀なヘッドホンですが、用途としてはレコーディングよりはミキシングに適している印象です。というのも、やや大型で重厚なヘッドホンなので、装着感は独特のものがあります。ヘッドホンを意識したくない場合はちょっと大きいので、初対面のミュージシャンにレコーディングブースでつけてもらうようなものではない気がします。歌録りくらいなら大丈夫だと思いますが、体の動きを伴う楽器録音の場合はちょっと大きいかなと感じます。
同様にPAでもやや取り回しが厳しい気がします。PA現場ではどうしても扱いが雑になりがちなので、壊した時の精神的ダメージを考慮するとPAには向いていないかなと感じました。大切に扱いますが、それでも何かが起こるのです、PAという現場は、、、苦笑。
ミキシングのお供に、「NEUMANNの」ヘッドホン。
これが最適な用途だと思います。昔からヘッドホンの1万円はスピーカーの10万円だと思っています。と考えると、コストパフォーマンスは優秀です。至高のモニターヘッドホンと言って過言ではないでしょう。
使用にあたっての注意
1.エージングすべし
エージングした方が良さそうです。(ま、どれ買ってもエージングはするんですが、特に、という意味で。)
買ったばかりの場合はややベニヤ板の圧力が強いのですが(笑)、使っているとかなり落ち着きます。エージングで特性が落ち着くタイプのヘッドホンと思われます。
2.適度に休憩すべし
長時間つけていると少々疲れるかもしれません。しかし、あまりに心地よい音がするのでついつい長時間つけて作業をしてしまいます。濃密な音なのであまりに長時間つけていると耳が疲れてきますので、適度に休憩をしながら使うのが良さそうです。と言っても、MDR-CD900STよりは耳が痛くないです。(僕は耳が痛くて900STを使わなくなりました)
3.右出しにつき機材配置に注意
珍しい点としてはコードが右出しです。僕の知らない間に世の中が右出しになったのかもしれませんが、珍しいなと感じました。コードはカールコードが付属するため不便はありません。着脱式になっているので、コードを変えたい(リケーブルしたい)人は好みのケーブルに交換して楽しむこともできそうです。
4.ちょっと重くて大きい
先述の通り大型、重厚なヘッドホンです。取り回しはもちろんですが、ヘッドホンハンガーにも注意。両面テープタイプのハンガーは剥がれる可能性がありますので、締付けタイプのハンガーを用意するほうが良いでしょう。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。
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