エレキベースが小さくても目立つ音になる!?埋もれない音にする技 ベース・ドライブ[難しさ:やさしい vol.089]

ベースというのは楽曲において非常に重要で、きっちり聞こえていることで楽曲全体が安定して聞こえてきます。ベースによるどっしり感の有無はミキシングのクオリティに大きく関わってくるものです。

一方で低音を出しすぎるとバランスが崩れて目立たない音になり、ベースラインが聞こえなくなることがあります。シンセベースでは音源の段階で調整できますが、エレキベースでは調整しにくいので苦労したことがある人も多いでしょう。

本記事ではエレキベースの音に歪みを加えることで、音量を上げずにベースラインが聞こえやすくなる技「ベース・ドライブ」を紹介します

音量を上げずに済むようになるので全体のサウンドの容積にも余裕ができて他の音が作りやすくなる他、ベースの低域をブーストしてもベースラインが埋もれにくくなり、エレキベースでも安定した音を作ることができます。

動画版はこちら

使用している音源

動画で使用しているデータは以下で販売しています。ご購入いただくとアーティストにも分配されますので、ぜひご活用下さい。

題材曲
Re:GO / キニナルコ
※ミキシングさせていただいております

ベース・ドライブの手順

基本的な方法

ざっくり言えばベースを歪ませるだけと非常に簡単なのですが、手順を紹介していきましょう。

まずはベースのトラックにアンプシミュレーターまたは歪み系のエフェクトを挿入します。筆者がよく使うのはAvid SamsAmp PSA-1というもので、実際のベースでもよく使うエフェクトです。(このPSA-1プラグインはAvidからしか発売されていないので、ProTools以外では使えません)

ProTools以外で使用する場合は、NEMBRINI AUDIOのPSA1000 JRを使うと良いでしょう。

PSA-1でなくても良いので、歪ませることができるプラグインをベーストラックに挿入しましょう。対象のベーストラックはアンプ前段(ライン)の音でも、アンプ後のマイク録りの音でも構いません。

続いては、ベースの音を歪ませていきます。

アンプシミュレーターの中で、「DRIVE」等の歪みを作ることができるパラメーターを再生しながら上げていきましょう。音量が上がってしまう場合は、出力レベルを抑えてエフェクトOFFの時と同じくらいにメーターが振れるように調整しましょう。

この時、ベースだけで再生せずに、他の音も再生しながら歪みを上げていくことがコツです。

いかがでしょうか?

不思議なことに、歪み成分を加えるだけでベースラインが聞こえやすくなってくるのです。歪むことによって太った低域が引き締められ、同時にベースの弦のアタック音や鉄っぽい響きの部分が強調され、ベースラインが聞こえやすくなってきます。

ライン録音されたベースの方が大きな効果が得られます。しかしアンプ録りの音に対して使用しても不思議と効果があります。加えて、歪んでいるベースに使っても効果があります。おそらくエレキベースという楽器の音が、構造的に歪みと相性が良いのではないかと考えています。

歪みの量について

歪みの量は、「全体で再生している時に歪みを感じない程度」を目指してください

歪みを感じるほどまでドライブさせてしまうと、プレイヤーやアレンジャーの意図した音から離れてしまう場合があり、好ましくありません。あくまでも隠し味として、元の音と同じに聞こえる範囲で歪ませるのです。

全体で再生して程よい歪みになったら、ソロで聞いてみましょう。驚くほど歪んでいることに気づきます。しかし全体で聞くと歪みが目立たなくなります。歪み成分がベースの輪郭を形成するために消費されるようなイメージで考えてみてください。

さらに良い音にするための音作り

今回は便宜上最初に歪みを作りましたが、通常はイコライザーやコンプレッサー等の他のエフェクトと合わせてベースの音作りをしていきます。

この時にポイントとなるのは、アンプシミュレーター(歪みエフェクト)に入る音を可能な限り良い音にしておくということです。ここで言う良い音とは、余計な響きや音溜まりがなく、ある程度音量が均一化されている状態を指します。

実際に動画で使用しているセッティングを紹介しておきましょう。

Waves Bass Rider(音量均一化)

Waves F6-TA(周波数特性を整える、音溜まりを抑制する)

Waves CLA-76(音質を変化させる、音量を均一化する)

PSA-1(歪みエフェクト)

Waves Bass Rider

Bass Riderは夢のようなエフェクトで、エレキベースの悩みである弦ごとの音量差を自動で整えることができます。似たような自動化エフェクトでVocal Riderというのがありますが、Vocal Riderと異なり先読みなので反応速度が速いことが特徴です。

音符ごとの音量差を整える目的で使用しています。音量が整うことで、後段の歪みにおける歪み具合が均一化されて音符ごとの効果の差が少なくなります。

実際のセッティング
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Waves F6-RTA

F6-RTAはダイナミックイコライザーです。筆者の場合はファーストコールプラグイン(最初に選ぶプラグイン)なので、特に深い理由はなく、イコライザーと言ったらF6を使っているという程度です。

イコライジングの内容は、不要な超低音及びノイズのカット、特定の帯域だけ大きくなっている音をダイナミックイコライザーで抑えています。ざっくり言えば低域掃除ということになりますね。ベースの低音を気持ちよく出す、コントロールできる状態で出すには、低域が掃除されていることが必須条件。不要に膨らんでいる帯域や、あってもなくても変わらないと感じる帯域をカットしておきましょう。

ベースだから低音をカットしてはいけないという先入観になりがちですが、実際は、低音を出すために低音をカットするイメージです。

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Waves CLA-76

CLA-76は全体的なさらなる音量均一化と、音質の変化を狙ったものです。ざっくり言えば、いい感じの音になることを狙っています。僕はベースに1176をかけるのが好きなのでCLA-76を用いていますが、お好みのビンテージ系コンプレッサーを使うと良いでしょう。

設定のポイントは、ややきつめのレシオでコンプレッションしているところです。大きすぎる音を圧縮できれば良いので、レシオを12:1としています。CLA-76の良いところは「MIX」コントロールがあり、コンプレッションされた音と元の音のバランスを簡単に変えられることです(パラレルコンプレッションが簡単にできる)。上記ではWET 70%としています。

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このように、音を整えてからアンプに入れることで、飛躍的に音が良くなります。これは実際のベースとベースアンプでも同じで、ベースアンプの前段で音を整えると、どのベースアンプでもけっこういい音が出てきます。さらにはギターとギターアンプでも同じです。

整えた音を歪ませたうえで、アンプシミュレーター(ここではPSA-1)で音のバランスを整えましょう。アンプシミュレーターのイコライザーで低域を少しブーストするととても安定してきます。前段で不要な音がカットされていることで、低域がすんなり持ち上がることがわかるはずです。

筆者がなぜPSA-1を愛用しているかというと、各パラメーターがベースの音作りに最適なのです。LOWの他、「BUZZ」「PUNCH」「HIGH」どれもベースの調整したい帯域にピッタリはまるので、ベースの周波数特性を整えるのに最適なエフェクターなのです。

Waves R-Bass

さらに低域に安定感がほしい場合は、最終段でサブハーモニックを付加するエフェクトを使うと良いでしょう。動画ではR-Bassを使用しています。R-Bassについては以下の記事で詳しく解説しています。

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最後に再度歪みの調整

全体で音を整えたら、改めて歪みの量を調整しましょう

ベースの聞こえ具合を調整する場合、音量を操作するより先に歪みを調整した方がコントロールしやすくなります。音量(フェーダー)を上げなくても聞こえるようになるため、フェーダーを少し下げてみると良いでしょう。

ステレオという箱の中でベースという低音楽器が占める体積は甚大ですから、ベースの音量を下げられるということはミキシングにおいてはとても有利に働きます。全体的に音が聞こえるようになり、ミキシングしやすくなることがおわかりいただけると思います。

SansAmp PSA-1とは?

PSA-1というのはそもそもハードウェアですので、実物を使うのもアリです。昔は実機PSA-1を持っていました。DAWに録音された音を一度出力してPSA-1を通しながら音作りをする手法(リアンプ)も非常に有効な手法になるでしょう。現在は絶版なので、オークション等で手に入れることになります。

TECh 21 Sansamp PSA-1

または、PSA-1の現行品となるSansamp PSA-2.0というモデルもあるようです。使ったことはないのですが、PSA-1がペダルタイプになった製品ということで人気があるようです。


以上のように、歪ませるだけというかんたんな技ですが、効果は絶大です。フェーダーを上げずに聞こえるようになるにはどうしたら良いかを考えながらミキシングしてみてください。今回のベースドライブはまさに合致するもので、フェーダーを上げなくてもベースが聞こえるようになってきます。

ぜひチャレンジしてみてください。