リバーブ集中講座3 曲を演出するロングリバーブとショートリバーブ複合技 [難しさ:ふつう vol.054] リバーブの使い方

※ 当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

リバーブ集中講座の第3回。前回の記事ではショートリバーブを学びました。リバーブ=お風呂場だと思っていた人にとってはリバーブの価値観が変わる衝撃があったのではないでしょうか。

今回はショートリバーブと対になる使い方であるロングリバーブ。いわゆるお風呂場的なリバーブです。

ロングリバーブと、複数のリバーブを組み合わせて使う技について学んでいきます。

動画版はこちら↓

前回の記事↓

シリーズ記事

ショートリバーブを維持しつつロングリバーブを作ってみる

まずは前回のおさらいとして、[Empty Room]プリセットを用いてショートリバーブを作ってみましょう。

ショートリバーブを作る

ボーカルのトラックからセンドリターン方式でリバーブ(Old Skool Verb)に信号を送ります

Old Skool Verbでは[Empty Room]プリセットを選択。[DRY MUTE]をオンに(WET音のみにする)して、リバーブタイムだけ少し伸ばして調整(275ms)しました。

最後にリバーブ前段にコンプレッサーを入れて、リバーブへの入力音を均一化し、かかりを一定にします。コンプレッサーの設定は以下の内容を参考に。リバーブ前段のコンプレッサーはキツめの設定にするのがコツです。参考用にパラメーターを記載しますが、音にあわせて調整してください。

  • RATIO(レシオ):8:1→スレッショルド以上の音をかなり圧縮する設定
  • ATTACK(アタックタイム):0.1ms→アタック音を通過させない設定=アタック音が弱くなる
  • RELEASE(リリースタイム):AR(=Auto Release)→とりあえずオートでOK
  • MAKE UP(出力音量):6.0dB→これは音にあわせて調整。小さい音にもリバーブがかかるように。

ロングリバーブを作る

続いて、今回の主題であるロングリバーブを作ります

ショートリバーブが作れた人には朝飯前でしょう!(こっちの方が簡単なのです)

まずは先程作ったショートリバーブをミュートします。最初から両方オンにするとどちらのリバーブ音かわからなくなってしまいます。

続いてセンドリターン形式で新しいリバーブを作ります。ショートリバーブの他にもう1台リバーブを用意するのです。

ロングリバーブ用のOld Skool Verbでは[Grand Hall]というプリセットを選択し、ショートリバーブと同様に[DRY MUTE]をオンにしてください。

最後に、こちらもショートリバーブ同様にリバーブ前段にコンプレッサーを用意しましょう。設定は同じでOKです。

いかがでしょうか?

すっごいリバーブですね(笑)。

それもそのはず、[Grand Hall]プリセットのリバーブタイムは[6000ms(=6秒)]とかなり長い設定なのです。曲にあわせて短く設定しましょう。この記事では[1900ms]に設定しました。

設定のコツは、リバーブのパラメーターを設定する時はリバーブを深くして(リバーブの音量を大きくして)決定し、決めたらリバーブ音量を下げるということです。

ロングリバーブの量を調整する

ロングリバーブはいかがでしょうか?

曲を演出する上品な響きがロングリバーブの魅力。

近年はドライなサウンドが人気であるためリバーブが薄い(少ない)音源が多いのですが、「リバーブをかけない」のではなく、「リバーブを薄くする」のがお勧めです。ゼロではなく、一見リバーブが聞こえないくらいに調整するとリッチなサウンドになります。

リバーブの多い設定と少ない設定を試してみましょう。

そこで気になるのがどこでリバーブの量を調整するか?ということです。

現段階では主に2箇所でリバーブ音量が調整できることにお気づきでしょうか。

  • ボーカルトラックのセンド量
  • 各リバーブのチャンネルフェーダー

結論的にはどちらでも良いのですが、慣れないうちのお勧めは各リバーブのチャンネルフェーダーを使って調整する方法です。

特に今回の内容では、リバーブ前段にコンプレッサーを挿入しているため、センド量を変化させる場合は都度コンプレッサーの設定を変更する必要があります。また、センド量を下げて調整するとメーター類も低く表示されるため視認性が悪くなります。

ということで、まずはリバーブのフェーダーを使ってリバーブの量を調整してみてください。

リバーブの種類

今回は[Grand Hall]というプリセットを使っています。これはホールリバーブと呼ばれる種類のリバーブで、コンサートホール等の響きを模したものです。

一方でボーカルにはプレートリバーブというタイプのリバーブがよく使われると言われています。

しかし筆者のお勧めはホールリバーブです。

1種類で良いです。気に入ったホールリバーブをひとつ選んで、リバーブタイムだけ調整して使ってみてください。筆者はOld Skool Verbでは[Grand Hall]が扱いやすく感じました。

一応プレートリバーブの音も聞いてみましょう。Old Skool Verbでは[Wide Plate]というプリセットがあります。[DRY MUTE]を忘れずに。

お聞きいただくとわかりますが、プレートリバーブの方がわかりやすい音です。高域がパキッとして金属的な音。鉄板(=プレート)を使っているのでそういう音なのです。特徴として初期反射音が大きい、目立つという特徴があります。

しかひ、リバーブの扱いにおいては初期反射音の扱いこそが難しいのです。

これに対しホールリバーブの多くは初期反射音より残響が目立つものが多いので、リバーブタイムだけ操作すれば比較的簡単にイメージどおりのリバーブが得られます。

初期反射音がイメージできるようになり、リバーブの扱いに慣れてきたらプレートリバーブも使ってみてください。

ちなみに筆者はホールリバーブの方が好きで、使用率も圧倒的にホールリバーブの方が高いです。

ショートリバーブとのバランスを調整する

ロングリバーブが出来上がったところで、ショートリバーブと混ぜて使ってみましょう

ロングリバーブはそのままに、ショートリバーブを足してみます。この時ショートリバーブもセンド量0dB付近として、ロングリバーブと同じようにリバーブのチャンネルフェーダーで音量を調整できるようにしてください。

ショートリバーブとロングリバーブのバランスを色々と変えてみてください。

イメージ的には、初期反射音と残響音の音量をそれぞれ操作しているような感覚がおわかりいただけると思います。ショートリバーブが初期反射音、ロングリバーブが残響です。

このように、2台使ってリバーブを組んでみることでリバーブの仕組みが少しおわかりいただけたのではないかと思います。お気づきかもしれませんが、1台のリバーブで初期反射音と残響をきちんと作ることで、同じことができます。

もちろんショートリバーブにも残響が含まれますし、ロングリバーブにも初期反射音が含まれます。しかし今回選んだプリセットはショートリバーブ(Empty Stage)が初期反射音重視、ロングリバーブ(Grand Hall)が残響重視の音なので、2台のバランスによってリバーブの中身を自由に組み立てることができるのです。

近年の楽曲は初期反射音重視のバランスが多くなっていますので、ロングリバーブ側を下げると最近っぽい音になります。EDMなどシャープな音楽にはショートリバーブ重視の方が向いているでしょう。対してロングリバーブを多くすると雰囲気重視。重厚な曲やスローバラードによく合います。

リバーブのバランスを変えることで演出を変えていく方法がおわかりいただけたことと思います。

リバーブの響きを綺麗にする方法

最後により綺麗に響く方法をお伝えしましょう。

ここまでに説明したように、リバーブ前段へのコンプレッサーによる均一化、リバーブ後段へのイコライザーは有効な「対症療法」といえます。

対症療法に対し原因療法となる方法をお伝えします。

ずばり、リバーブを綺麗に響かせる原因療法とは、ボーカルトラックそのものの音を整えることなのです。ちゃんと音を作るということです。

ボーカルトラックの音作り

ボーカルトラックの音を整えて聞いてみましょう。まずはイコライザーで低域と不要帯域を抑え、高域の伸びをよくしてみます。参考までにパラメーターを記述しますが、当然ボーカルの音質が違えば異なりますのでご注意ください。

なお、ここではコンプレッサーの前にイコライザーをかけたかったため、Cubaseのチャンネルストリップではなく、Cubase標準搭載のStudio EQというイコライザーを使用しています。

  • LCF(フィルター):170Hz→不要な低域をカット
  • LMF(ピーキング):-9dB, 534Hz, Q3.0→録音した部屋の鳴りを抑える
  • HMF(ピーキング):-3.9dB, 3.857kHz, Q1.0→声を張り上げた時に痛いので抑える
  • HI(シェルビング):2.0dB, 7kHz, Q1.0→輪郭をくっきりさせて前に出す

※LMF/HMFはダイナミックEQがあればダイナミックEQの方が適していますね

続いてコンプレッサーで音量を整え、ボーカルにパンチを出します。Cubase純正のVinatage Compressorを使用しました。

最後にディエッサーで歯擦音を削りましょう。こちらもCubase純正のDeEssorです。

3つのプラグインは以下のような順番で並んでいます。音が綺麗になってからコンプレッサー、小さい音が持ち上がってからディエッサーと考えるとこのような順番になります。

さてリバーブをオンにして聞いてみてください。

いかがでしょうか?

驚くほどリバーブの響きが綺麗になっていることに気づくでしょう。

リバーブを綺麗に響かせるためには、もともとの音がとても重要なのです。ついでに言えば、もともとの音のピッチも重要です。ピッチがずれている音は、ずれたピッチに響きが付きます。つまり音痴な音が増えます。結果、周りの楽器と綺麗な響きになりません。もともとの音を良くすることがとても重要なのです。

リバーブへのイコライジング

最後の仕上げにリバーブのイコライザーを見直しましょう

ショートリバーブのイコライザーは以下の通りになりました。低域は音がぼやけるのでカット。高域はそのままだとボーカルにかぶってきてしまうため、少しおとなしくなるようにシェルビングでカットしました。

続いてロングリバーブのイコライジングは以下の通り。低域は同じですが、高域は綺麗な響きを強調するためにブーストしています。このように、ショートとロングで異なる処理ができるのも複数台で組み立てる手法のメリットといえます。

リバーブの出来具合をチェックする方法

作ってきたリバーブの設定が良いのかどうかチェックする方法を最後にお伝えしましょう。

簡単です。

リバーブの音量をかなり上げて聞いてみてください。

リバーブを上げた状態でも気持ちよく聞ければ、良いセッティングです。ここから音量を落として曲に合わせ込めばかなり綺麗な響きになるでしょう。

大きくした時に不快な場合はまだセッティングを詰める必要があると考えましょう。


いかがだったでしょうか。無料のリバーブでもかなり綺麗な響きが作れることがおわかりいただけたと思います。

リバーブの仕組みを理解すること。そして原因療法と対症療法を知ること。あとは適切な技を繰り出せば良いのです。たくさんミキシングして、色々なパターンを試してみましょう。

次回は最終回となります。今後のための参考資料として、筆者が気に入って使っているリバーブを紹介していきます。

シリーズ記事

リバーブ集中講座1 種類と基本的なパラメーター
リバーブ集中講座2 臨場感を作るショートリバーブとリバーブ活用の裏技
リバーブ集中講座3 曲を演出するロングリバーブとショートリバーブ複合技