サンプル盤が届きました^_^ 〜HGFライブCD収録舞台裏〜 ミキシングとマスタリング〜 (ライブレコーディング/システム紹介)
今年の6月に行われた、かれこれ10年以上携わっている日本最大級のゴスペルクワイアネットワークHallelujah Gospel Familyの合同コンサートの様子を収録したライブ音源のサンプル盤が届きました。サンプル盤到着を記念?して、制作の様子や収録当日のPAの舞台裏など綴ってみます。
サンプル盤到着!やっぱりCDはCDの良さがあります。
CDでリリースされる音源の制作をした場合は、多くの場合発売前にサンプル盤を送っていただけます。CDなどのハードウェアを作らない制作案件が増えましたが、やっぱりハードウェアは「出来たー!無事に終わったー!」という感覚がはっきりと得られるので、個人的には好きです。ハードウェア化すると後戻りできないので緊張もしますが、その見返りとして得るものも大きいなと思います。サンプル盤は大事に保管してあります。
こんな感じで名前が印刷されるのですが、印刷されているっていうのは嬉しいものです^ – ^
届きましたー!だけだと寂しいので、当時の制作時のお話などを少々。
スタジオはいつも通り千葉のHope Chapel Studioでミキシング、マスタリングしました。8月くらいの話ですね。教会に併設のスタジオで、郊外ならではの広々とした空間でまったりと制作することができます。
システムはProTools。自宅スタジオで予め準備(ファイル、トラック整理)をした上で、ミキシング作業以降はプロデューサーのKenさんとLAのSoundFoundationを率いるボーカリストRayさん立ち会いのもと進めます。
これはマスタリング完了した時の写真。ライブ盤、実は曲順を変えることが多いです。当日と違う曲順に並べ替えて、音量や曲間を調整し、メーター見ながら最終チェックします。ソフトはwavelabです。マスタリングはこのソフトが個人的には1番使いやすい。昔はCD Architectが好きでしたが、なくなりましたね。(・・;)
画面の通りで、曲による音量差が結構ありますが、無理矢理音量感合わせたりはしていません。聞くときにボリューム変えずに済むレベルで。小さい曲は小さく。当日の雰囲気を重視してます。
完成後に撮影した記念写真。僕はだいぶ疲れてますね。笑
そもそも当日はどんな感じだったの?ということで振り返ってみました。実はこの仕事は、PAとレコーディング・エンジニア兼任という仕事です。
コンサート当日の様子
隣にレコーダーが見えますが、PAシステム、ステージモニターシステムが全部ROLAND REACシステムでまとめられているので、レコーダーもROLAND R-1000というモデルを使用しています。48TR録音できる!(生産完了のようですね^^;)
本質的にはトラブル対応時に何もできないので別のオペレーターがいたほうが良いのですが、予算など大人の事情で兼任ということも世の中にはしばしばあるわけです(苦笑)。
ステージにREACマルチボックス(音の入力用の箱)を2台転がしているので、ステージからの回線数は16×2=32ch。コンソールにもインプットが8chあるので、ワイヤレスマイク5本をこのインプットに入力。ということで、コンソール側からも8回線、合計で40chを録音可能という構成になっています。スピーカーへの送り(出力回線)もマルチボックスからの出力なので、メインL/Rとモニターに2回線。まぁ多少慣れが無いとこの辺で頭がこんがらがってくると思います。そして僕もこのコンソールを使う回数が年に数回なので、毎回1時間くらいは格闘します。もちろん格闘の時間もスケジュールに折込済ですw
今回スピーカーは運搬車両の関係で持ち込むのが難しく、会場の備品をお借りしました。そう、これらのコンソールやレコーディング機材は全部HGFさんも持ち物で、持ち込みなのです。それを使いこなすという仕事です。
▼当日のワイヤリングプランです
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1eCeZ-55RHIqD88tpVmgygYOaV6d-OzWmZLSMR-w-WJo/edit#gid=0
環境や機材は問わないようにしています。もちろん希望はしますし、希望はありますが、希望の機材が全部揃うというのはあまり無いです。むしろ環境に限りがあるという理由で僕に頼んでくれる人が多いような気がします。。苦笑
その日その場所で最高のパフォーマンス。
これをモットーにしています。
このHGFコンサートももう何回やったか覚えていませんw 最初の頃はアナログ卓で、モニターシステム(ステージのミュージシャンがお互いの音を聞くための機器類)としてAVIOMを導入していました。ROLANDさんのモニターシステムが素晴らしいということでREACが導入され、同時にコンソールがROLAND M-400、REAC経由でのWindowsマシンでのレコーディングを経て現在のR-1000システムにたどり着いています。
マイクはメインボーカリスト用がLINE6 XD-V75デジタルワイヤレスを5本。クワイアはAKG C3000を4本並べています。これもHGFさんの備品w
XD-V75は2.4GHz帯を使うデジタルワイヤレスで、従来のアナログワイヤレスに比べて音は格段に良いです。このサイズのホールだとアンテナが欲しいですね。本体アンテナだとたまにダイバシティのどちらかが不安定になります。音より何よりコンソール側で電池残量がわかるのが最高です。C3000Bは当然モニターの音をガッツリ拾うので、マイキングで頑張って調整しています。
マイクやステージモニター(ステージ上のスピーカー類)関係も試行錯誤の末現在の構成に。なにせステージに400人乗るので、あまり細かいことをすると逆効果ということも多いです。モニターも最初は4系統くらい返して(送って)いましたが、現在はボーカリスト用とクワイア用の2系統に減らしています。この方が作業も早いしステージ上の音もすっきりします。
ちなみに到着してすぐはこの状態。↓ここからHGFさんのステージスタッフさんが雛壇を作り、会場の照明さんが仕込みをしますが、その間に機材の使い方を思い出します。
一通りサウンドチェック、バンドリハーサルが終わるとステージにあがるクワイアメンバーのリハーサルが始まります。これはステージ上ではなく、客席を使って行われます。クワイアのメンバーもバンドと合わせるのは当日が最初で最後。練習用音源とも違うので、バンド演奏に慣れる、最後の練習というニュアンスが強いです。
僕の位置から見たリハーサル風景はこんな感じです。メインディレクターのKenさんが指揮をしています。
本番前になるとずらっと並ぶハンディレコーダー
リハーサルも終わり本番前になると、PA席の前にはハンディレコーダーがズラっと並びますw
ハンディレコーダーはいい感じのステレオマイクを搭載した録音機で、ボタン押すだけで臨場感溢れる音が録音できます。僕のレコーダーは真ん中のやつ(TASCAM DR-100MK3)で、他のはバンドメンバーやビデオ担当の方のレコーダーです。
僕のはコレ、TASCAM DR-100MK3です。製品企画にも参加した思い出深いレコーダー。音も最高です。HGFは24bit/48kHz録音なので、デュアルADCモードをオンにして使っています。この音もCDでは混ぜて使ってます。
この日はTASCAMのレコーダーが何故か多くて、個人的にはかなり嬉しかったです。こちらはTASCAM DR-1。最初のハンディレコーダーですね。まだ動いてて愛用してもらっているようで、嬉しいです。
詳しいコンサートの様子などはHGFのfacebookやサイトをご覧頂ければと思います。とにかくみなさんにとっては1年、いや、数年に一度の大事な日なんですよね。とにかく楽しく歌っている感じがとても幸せな空間です。PAやるよりクワイアで参加したいと思ったことも一度や二度ではありません。笑
参加してみたいと思った方はぜひHGFさんに聞いてみてください。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。