SoundWorksKミキシング講座 はじめに 〜コンセプトと開設の想い〜
これからの時代のサウンドメイキング 〜AIは音楽制作にどんな時代をもたらすか〜
こんな講座を2021年になっていまさら始めた背景には、音作りへのAIの進出、自動化の台頭があります。
音楽制作、特にサウンドメイキング分野へのAI進出または自動化はすごい勢いで進んでいます。今後も加速するでしょう。これについては様々な考え方があると思います。
僕の考えは、プロにおいては作業の高速化・効率化に有効な手法として重宝されることになると考えています。一方で、アマチュアやプライベーターのレベルでは「サウンドメイキングの基礎的な技術」というもの自体がなくなっていくでしょう。ミキシングは人間でなくてAIの仕事になり、AIがないと音が作れない人が多くを占めるようになるでしょう。
なぜならば、「そこそこ聞ける音」を作ることは論理的でルーティンワークであり、アーティスティックな要素が少ないからです。一定のクオリティを出すためにAIは非常に有効です。一定のクオリティとはノイズが無い、声がよく聞こえる、歪まない、などなど。一般リスナーが心地よく聞ける境界線を指します。一定のクオリティを出すことは表現ではなく作業というニュアンスが強いため、作業はAI化されていくでしょう。
それはそれで時代なので対応するしか無いのですが、危惧することはクリエイターから音への意識と音への責任感が失われることです。
現在成熟期にあるクリエイターさんの多くは、一定のクオリティを得るために試行錯誤を行い、その過程でたくさん音を聞きました。人に音を届けるにあたって音に責任を持つことは必要で、責任を持つためには音を聴き込む必要がありますが、音を自力で作る過程で自然と音を聞き込むことができました。
しかし、この試行錯誤が今後はなくなるということです。AIが全部やってくれることになるでしょう。「1時間かけて聞きまくって作っていた音」が、「聞かなくても5秒でAIが作ってくれる音」になるだろうと。
AIも自動化もウェルカムです。そうして人間も文化も進化してきたし、何より自動でやってくれることで音楽にチャレンジする人が増えるでしょうから、AIや自動化が推進されること自体は歓迎です。
しかし、なぜその作業をするのか、どうやってやっているのか。一定以上のレベルに達したクリエイターさんは、作業の意味と仕組みを理解しておくことが必要だと考えています。
「細かいところは聞いてないしなんかよくわからんけどAIがやってくれた音」に責任を持てるでしょうか。
持てませんよね。
やっぱり人に何かを届ける時に、責任は持ちたいものです。これから自動化されると、この「責任を持つ」ということが曖昧になるでしょう。言われたら直すから言われるまで適当でいい。それでもいいのかもしれませんが、クリエイターとして、人として、それでいいのかなぁと。個人の感想です。苦笑
Ozzy OsbourneさんはSuicide Solutionというタイトルの歌を作った責任から逃げることは決して無いだろうと思うわけです。
自分も自分の作り物には責任を持ちたいですから、AI任せで5秒で完パケではなく、作り込んで自分の意思を込めることをやめないでしょう。その方が時間はかかります。でもやめないでしょう。それが楽しくて生きてきたという側面もありますが、やっぱりやめないでしょう。
AIと共存すべきだろうと。AIが何をしているのかを感覚的でも良いので理解しておくこと。共存するには理解が重要なのではないかと考えています。
「あ、聞いてないからわかんないけど間違えてるかも。でも俺のせいじゃなくてAIが悪い」で、いいのかなーということ、それだけです。
ということで、仕組みや考え方を将来に伝える媒体があってもいいんじゃないかなと思った次第です。使い方よりも仕組みや考え方を伝えることに重点をおいてコンテンツを作っていきたいと思います。
(だからマネタイズできないんですけどね。笑)
きちんとした作り物を気軽に
長くなりましたが、お気軽にご覧頂きたいですし、音楽制作自体気軽にやってもらいたいと思っています。気軽にやるけどちょっとだけ知っていると楽しくなるのはどの世界でも同じ。ちょっと知っていることでより音楽制作が楽しくなるような内容をお届けしていきたいと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。
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ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。