蛭ヶ岳最難関コース[寄〜鍋割峠〜熊木沢〜蛭ヶ岳〜臼ヶ岳〜ユーシンロッジ〜雨山峠/周回] 丹沢紀行 vol.1 

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これまでに登ってきた登山コースを自由気ままに紹介していくコーナー。記念すべき第1回は丹沢山地が誇る神奈川県最高峰蛭ヶ岳」の中でも最難関コースといわれるバリエーションルート、蛭ヶ岳南陵を含む周回コースを紹介します。

※本記事はヤマレコに投稿した山行記録を再編集したものです。
※記載されている情報は2021年1月1日現在のものです。

コース概要

丹沢を深く歩き、丹沢の深淵に触れたい上級者向けのバリエーションルート(VR)。

ルートマップ

■コース
1日目:寄大橋〜コシバ沢出合〜鍋割峠〜旧鍋割峠〜尊仏ノ土平〜熊木沢出合〜廃車広場〜蛭ヶ岳〜蛭ヶ岳山荘(泊)
2日目:蛭ヶ岳山荘〜臼ヶ岳〜水晶平〜ユーシンロッジ〜雨山橋〜雨山峠〜コシバ沢出合〜寄大橋

!VRは滑落の危険が高い箇所や案内が皆無で道迷いしやすいポイントなど、危険地帯を含みます。実際に行かれる際はご自身の責任でよく判断の上、山歩きをお楽しみください。!

本来はユーシン渓谷から入りたいところですが通行止めが続いているので寄大橋よりスタート。コシバ沢よりバリエーションルートとなり、鍋割峠を越えて丹沢の最奥地へ。熊木沢を遡行し伝説の赤い廃車に挨拶。蛭ヶ岳名物の堰堤群を横目に、尾根というよりは壁を登って蛭ヶ岳に登頂します。

二日目は蛭ヶ岳一般ルートでは最も険しい西陵を下って臼ヶ岳へ。臼ヶ岳山頂で一般ルートから分岐し、バリエーションルートに入ります。比較的緩やかな尾根を下り水晶平といくつかのピークを経てユーシンロッジへ。最後は黒部・下ノ廊下のような渓谷を遡行し雨山峠を経て寄大橋へ戻ります。

熊木沢から眺める蛭ヶ岳はどの方角からも見ることができない唯一無二の絶景で、威風堂々とした神奈川最高峰にふさわしい貫禄を見せてくれます。丹沢を知り尽くした人にとっては、丹沢らしい魅力が詰まった垂涎のコースといえる一方で、丹沢が極めて厳しい自然を内包した険しい山々であることを改めて知ることができるコースでもあります。

エリア:丹沢山地 中央部
コースタイプ:周回
コース長:22km(11km/11km)
日程:1泊2日

難易度・危険度:★★★★☆(3点支持による登攀、RF、読図能力などが必要)
初心者お勧め度:★☆☆☆☆(初心者はやめたほうがいい)
アクセス:★★★☆☆(自家用車があれば難なし)

登山口とアクセス

車でのアクセスがお薦めです。電車・バスの場合は、小田急新松田駅からバスで寄まで移動し、そこから徒歩で寄大橋を目指すことになります。

車の場合は寄大橋に6台程度の駐車スペースがあります。(無料、ただし駐車場という訳ではないので保証もなし)
このコースの登山者以外は使わない登山口なので混雑はしないと思われます。

登山口と言えど整備されているわけではないのでトイレ等はありません。

詳細ログ(ヤマレコ)

コースの見どころ

2021年現在、一般登山道では到達できない秘境であるがゆえに見どころは非常に多いコースです。

熊木沢から眺める蛭ヶ岳

蛭ヶ岳は色々な方角から眺めることができますが、この角度から見ることができるのはこのルートのみでしょう。荒廃した秘境感溢れる熊木沢の奥にそびえる蛭ヶ岳。威風堂々、標高だけではなく風格も丹沢の盟主たる所以を感じることができます。

熊木沢から眺める蛭ヶ岳

廃道、遺構、廃墟めぐり

ユーシン渓谷の林道が崩落で通行止めになって以降、荒廃が進んでいます。そもそも通行止め以前においても、熊木ダムより上流は車が通行できる状態ではなく荒廃が進んでいました。かつての姿を想像しながら廃道を歩く楽しみがあります。朽ち果てた道路標識、崩壊橋、閉鎖されたユーシンロッジ、荒廃した林道など、好きな人には堪らないコースでしょう。

赤い廃車

廃墟の締めは蛭ヶ岳南陵取り付きにある赤い廃車。林道がまだ使えた昔に蛭ヶ岳山荘の荷揚げに使われたのではないかという説が有力ですが、真相は定かでは有りません。廃車の中には当時の飲料や食料などがそのまま残され、時間が止まっています。不思議なオーラが漂い、海外ドラマ「LOST」のフォルクスワーゲンのバンを思い出させます。丹沢の守り神のようです。

蛭ヶ岳南陵取り付きの赤い廃車

蛭ヶ岳からの絶景

蛭ヶ岳は神奈川最高峰であり、東京から西に向かうと最初の山岳地帯でもあります。故に眺望は抜群で、遠くは筑波山なども見ることができます。もちろん富士山に始まり南アルプス、奥多摩、伊豆方面、江ノ島なども見ることができます。丹沢より東方は都市部となり山が無いため、市街地の夜景も見逃せない絶景です。

山頂から望む夕暮れ
蛭ヶ岳は夜景も見逃せない

コースの難所

このコースはほとんどがバリエーションルートであるがゆえに多くの危険地帯を通過します。相応の技術力、体力、経験値が必要ですので危ういと感じる人はやめたほうが良いでしょう。

鍋割峠〜旧鍋割峠の崩壊地

鍋割峠から崩壊地を下り、崩壊地を登って旧鍋割峠に到達します。ルートは定まっていません。15m程度の崩壊地をロープで降ります。一般登山道ではないため足場も踏まれておらず不安定、各自ルートを見定める必要があります。滑落による怪我の危険性が非常に高いエリアです。安全のためにザイルを使用しての懸垂下降で通過しました。

実はこのエリアを通らずとも鍋割山山頂経由で旧鍋割峠に至ることができます。そちらの方が危険性は低いので、崩壊地通過が難しいと感じたら山頂経由で通過するほうが良いでしょう。

蛭ヶ岳南陵

昔は登山道として地図に記載があったようですが、地図から消されたルート、それが蛭ヶ岳南陵です。その道はもはや道ではなく壁です。もちろんアルパインクライミングのような壁よりは難易度が低くなりますが、登っていて怖いと感じる傾斜が長時間続きます。岩ではなく土と根、木の間を3点支持で登っていきます。根っこを掘り出し、掴みながらの登攀です。根っこなので抜けてしまうものもあり、信頼性を確かめながら登る必要があります。

雨山橋〜雨山峠 ”丹沢下ノ廊下”

このエリアは一般登山道とされていますが、ユーシン通行止め以降人が減っていることもあってかやや荒廃しており危険性が高くなっています。急峻で堰堤の多い沢を遡行するため、堰堤を高巻きするために高所に登山道が設けられており、かなりの高度感があります。下ノ廊下のようです。道が荒廃しているため落ち葉や土砂で高所の道が狭く滑りやすくなっており滑落の恐怖を感じます。加えて一部では流れ出る水が氷結し、登山道を塞いでいます。チェーンスパイク等滑り止めを携行する方が良いでしょう。

ルート解説

寄大橋に車を止め、鍵をかけたらスタート。しばらくは舗装された林道を進み、ほどなく林道終点へ。ここから登山道に入り、しばらくは寄沢を遡行します。看板の案内に沿って渡渉を繰り返し、鹿柵沿いに高度を上げて寄沢の支流を越えると休憩にちょうど良い釜湯ノ平に出ます。釜湯ノ平から尾根を回るとコシバ沢出合です。ここから一般登山道に別れを告げてバリエーションルートに入ります。

コシバ沢遡行は岩を頼りに登っていけばよく、傾斜はありますがさほど難しくありません。上流部でGPSとピンクテープを頼りに沢から離れ尾根に取り付きます。傾斜が厳しいので滑落には注意が必要です。傾斜が緩くなると眺望も開け、鍋割峠に至ります。峠を直進し崩壊地を越えますが、ここは前述の通り危険地帯となりますので十分に注意して通過します。旧鍋割峠からは傾斜が緩く美しい尾根を下り、尊仏ノ土平へ。尚、手前で左に降りるとオガラ沢出合にショートカットすることができます。尊仏ノ土平から熊木沢出合までは丹沢山を見ながら廃道散歩が楽しめます。

熊木沢には崩壊した橋がありますので、脚立に登って崩壊橋を越え、熊木沢左岸に入ります。廃道経由で第一堰堤を越え、第二堰堤は立て掛けてある木を踏み台に。その後は右岸にある廃道を探して歩きます。沢と並行しますが傾斜があるためじわじわと体力を奪われます。また、林道が崩壊している箇所もあり高巻きで越えます。熊木沢の奥に至ると道は左へ。沿って登ると廃車広場に至ります。廃車を愛でながら最後の休憩を取り、堰堤群を横目に最大の難所である南陵に取り付きましょう。厳しい傾斜が長い時間続きます。振り返って熊木沢を見下ろせるところまでくればあと少し。茨に気をつけて登ると蛭ヶ岳頂上に飛び出します。

明けて次の日。この日も長いので早く宿を発ちましょう。蛭ヶ岳西陵を下りますが、西陵も南陵に迫る傾斜を持つ難易度の高いルート。鎖場を越えてコルを越えるとミカゲ沢ノ頭。越えると臼ヶ岳に至ります。蛭ヶ岳をきれいに眺められるのはここが最後ですので休憩すると良いでしょう。臼ヶ岳からはバリエーションルートに入り、ルート案内は皆無となります。GPSと地図を頼りにRFしながら水晶平を目指しましょう。越えてコイタゾーリの頭を越えるとユーシンロッジへ至ります。臼ヶ岳以降登山道は明確でないため、RF能力は必須です。

ユーシンロッジで昼食をとったら林道歩きへ。通行止めになったのは近年ですが、すでにかなり荒廃しており自転車での走行も難しいでしょう。ユーシン渓谷を右手に見ながら下ると雨山橋に至ります。ここから雨山峠に向かいますが、前述の通り険しい登山道ですので気を抜かないように進みましょう。雨山峠を越えると今度は沢を下ります。こちらも登山道というよりは沢の中を進むルートで気を抜くことができません。沢から離れ高度感のある道が出てくると次第に沢から離れコシバ沢出合に至ります。ここから先は往路と同じですが、渡渉で道を見失いやすいので注意しましょう。赤い橋が見えてきたらゴールです、お疲れさまでした。

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