歌ってみたMIX・ボーカルミックスに最適なWavesバンドルが登場!Waves Smart Vocal Collection HAYABUSA/ARTEMIS
筆者自身も愛用する老舗プラグインブランド Wavesから、日本専用のボーカルミキシング用プラグインバンドル、その名もHAYABUSAとARTEMISが登場しました。日本特有の市場として歌ってみた需要がありますが、ついにWaves本社が日本のボーカルMIX需要の大きさを認めてくれたビッグニュースでもあります。この記事では、これらのバンドルに含まれるプラグインを簡単に紹介していきます。

バンドル概要
今回リリースされた2つのバンドルは、Smart Vocal Collection(スマート・ボーカル・コレクション)と名付けられており、ボーカルミキシング、特に自宅録音音源のミキシングに便利なプラグインが収録されています。
ミキシング初心者や歌い手にはHAYABUSAがお勧めです。厳選された自動化プラグイン3種が含まれており、ミキシングがよくわからなくても良い感じのボーカルサウンドに近づけることができるでしょう。
MIX師やミキシングを頻繁に行うようなユーザーの場合はARTEMISを強くお勧めします。筆者愛用するF6-RTAやSibilance、Smack Attackが含まれるうえに、最新のテクノロジーを取り入れた自動化プラグインが含まれており、ボーカルミックスの高速化に役立つはずです。
HAYABUSA
HAYABUSAはSmart Vocal Collectionのエントリーグレードと言える内容で、価格が安いことが特徴。以下3つの最新テクノロジーを採用した自動化プラグインが含まれています。イコライジングを自動化して手軽に最適なサウンドが得られるため、ミキシングに詳しくない歌い手やミキシング初心者に最適と言える内容です。
名称に使われる「隼」は、時速300kmにも届く高い速度で急降下して獲物を捉える姿から「速さ」を特徴とする製品の愛称として親しまれる猛禽類。つまりボーカルミックスに速さを与えるプラグインバンドルだと言えます。筆者はバイクを思い出しますが、近年では小惑星イトカワを探査した宇宙探査機、そしてその後継としてリュウグウへの着陸を実現したはやぶさ2のイメージが強いでしょうか。筆者の自宅は相模原市なので愛着のある名前でもあります。
- IDX Intelligent Dynamics
- Silk Vocal
- Curves AQ
「難しいツマミを覚えるより先に、この想いを形にしたい」。その願いを、最新のインテリジェンスプラグインが全力でサポートします。設定に悩んで夜を明かす必要はありません。カップ麺の待ち時間で、あなたのボーカルは飛躍的にアップデートされます。
公式サイトより
ARTEMIS
ARTEMISはSmart Vocal Collectionのプロフェッショナルグレードといえる充実の内容です。筆者が愛用するプラグインがいくつか含まれており、これらのプラグインをこれから購入しようとしていたMIX師や歌い手には最適なバンドル。最新のテクノロジーを用いたプラグインだけでなく、F6-RTAやSibilanceなどの長く愛されているプラグインがバンドルされていることは特筆すべきでしょう。筆者が特に愛用しているプラグインを赤字でマーキングしました。また、各シグネイチャー・シリーズからボーカル向けのプラグインがピックアップされています。
今、ARTEMIS – アルテミス – と言えば、あのNASAの月面探査計画でしょう。その様子はインターネット経由で詳細まで届けられ、とてもワクワクしました。WavesのARTEMISも最新のテクノロジーを用いてボーカルミキシングをさらに楽しいものにしてくれるバンドルと言えそうです。
- Greg Wells VoiceCentric
- Silk Vocal
- JJP Vocals
- CLA Vocals
- Smack Attack
- IDX Intelligent Dynamics
- F6 Floating-Band Dynamic EQ
- Sibilance
- CLA-3A Compressor / Limiter
- Curves AQ
- Manny Marroquin Reverb
- Waves Tune Real-Time
HAYABUSAのスマートさに加え、日本のヒットチャートを彩る「ボーカル神器」をさらに9個ドッキング。
「あの曲の、あの質感」。憧れていた透明感も、突き抜けるパワーも、あなたのDAWにプロスタジオのツールを降らせます。
公式サイトより引用
収録プラグイン解説
以下では収録されているプラグインを、ボーカルミキシングでの用途に絞って簡単に解説しています。
IDX Intelligent Dynamics

IDX Intelligent Dynamicsは、トラックのエネルギーを最適化し、パンチとフォーカスを強めることが可能です。平坦で退屈なミックスにノブ1つで活力を与えます。
公式サイトより
何をしているのかは具体的に説明されていませんが、筆者の感覚では、全自動・ダイナミック・イコライザーだと思います。不要な帯域を抑え、音がタイトに・クリアになるように必要な帯域がブーストされます。カット・ブーストは常時されるものではなく、動的に行われていると推測できるので、ダイナミックEQ的動作といえるでしょう。
ミキシングが難しいと感じている人やスピードアップしたい人に有効なプラグインです。とりあえずトラックの最初にインサートして中央のThreshold Controlダイヤルを回して強さを決めれば、それなりにタイトなサウンドが出来上がります。ボーカルトラックはもちろん、インストのトラックにも有効でしょう。SPEEDとPriority band tiltダイヤルで音質を微調整することも可能です。
Silk Vocal

ボーカルのミキシングは難しく、歌い手それぞれにサウンドに対するプロセスは異なります。過度な共振や、ブーミーな特性、歯擦音など、ボーカルがミックスになじまない要素も多く、それらを取り除くには、時間と知識、正確なモニタリング環境が必要です。
公式サイトより
Silk Vocalはボーカルに特化したプラグインで、自動で不要な帯域を動的にカットしてくれます。不要な響きが多くなりがちな自宅録音ボーカルに有効です。一方で、かなり複雑な処理をしている印象があり、もともと綺麗に録音できているボーカルトラックに使うとやや聞きにくくなる印象があります。自宅録音ボーカルの最初にインサートして使うと良いと思います。
Curves AQ

Wavesは常に革新を追求しています。Clarity Vx、DeReverb、Silk Vocal、IDX、Curves Equator、Sync Vxなどの開発を通じて、新たなサウンド技術の限界を押し広げてきました。そして、ついにEQにも革命が起こります。
公式サイトより
Curves AQは一言で表現すれば最新の自動イコライザーです。自動イコライザー的なプラグインは従来からありますが、Curevs AQは入力音をLearn – 学習し、最適なカーブを5種類提案してきます。好みのカーブを選択したら、細かい調整を行っていくだけです。基本的な周波数設定が自動化されるため、周波数設定が難しいと感じるユーザーに最適でしょう。また、細かい設定も可能であるため、プロフェッショナルユーザーでも活用できる自動イコライザーです。
Greg Wells VoiceCentric

人の声は歴史上でもっともパワフルな楽器、と言って間違いではないでしょう。ほぼすべてのジャンルでボーカルは非常に重要な地位を占めています。ミックスで自然に馴染む、完璧なボーカル・サウンドをつくり上げるために、プロデューサーやエンジニアは多大な時間をスタジオで費やしています。そのボーカル・サウンドが瞬時に手に入るとしたら、どうでしょう。
グラミー賞ノミネートのプロデューサー/ミキシング・エンジニア、Greg Wells氏とのコラボレーションにより開発されたボーカル用マルチエフェクトプロセッサー。EQ、コンプレッサー、Delay、Doubler、Reverbが含まれていますが、それぞれの操作子はなく、中央のIntensityノブのみで強さを調整します。とにかくいい感じの音になって欲しいという初心者にとっては有効な選択肢でしょう。
JJP Vocals

Jack Joseph PuigによるJJP Vocalsについてのコメント: “ボーカルをミックスする時に気を付けているのは、直感と本能だ。どのディレイをとか、EQをどうするかとか、コンプレッサーの設定とか、そんな技術的な話ではないんだ。そのボーカルによって、人々の感情を揺り動かすことができるかどうか。 シンガーは皆それぞれ独特な個性を持っているし、すべての曲もそれぞれにユニークなものだからね。”
グラミー賞プロデューサー/エンジニア、Jack Joseph Puig氏とのコラボレーションにより開発されたボーカル用マルチエフェクトプロセッサー。EQ、コンプレッサー、Delay、Doubler、Reverb、さらにはディエッサー等も含まれ、それぞれのエフェクトがひとつのパラメーターで操作できます。
CLA Vocals

クリス・ロード・アルジによるCLA Vocalについてのコメント:“どんな曲であっても、一番重要なのはボーカルさ。CLA Vocalsプラグインはそのミキシングを完璧に楽しめるようにしてくれる。私は毎日の自分のミックスで使用する本当に最高の設定を選びだして、このチェインにまとめたんだ。”
ロック界のサウンドを牽引してきたミキシング・エンジニア、Chris Lord-Alg氏とのコラボレーションにより開発されたボーカル用マルチエフェクトプロセッサー。EQ、コンプレッサー、Delay、Doubler、Reverbが6つのスライダーに配置され、それぞれ3つのキャラクターから選択したうえでそのかかり具合をスライダーで調整できます。
Smack Attack

ドラム、ループ、シンセ・ヒット、パーカッションに重みのあるパンチ感と切れ味を加える。サウンドのアタック、サステインのトランジェントを音量、形状、長さから個別にデザインし、精密な調整から荒々しいエフェクティブな使い方までカバーします。
Smack Attackはトランジェントシェイパーと呼ばれるもので、音の成分の中で輪郭とも言える部分である「トランジェント」のみを調整することができ、音の前後感を容易に調整できます。Smack Attackはトランジェントに加えて、音のリリースも調整可能。不要な余韻を短くすることでタイトでスッキリとしたサウンドが簡単に作れます。筆者はボーカルにはあまり使用しないのですが、ドラム等のトラックで多用するエフェクトです。
F6 Floating-Band Dynamic EQ

F6 Floating-Band Dynamic EQは、フル・パラメトリック仕様の6つのフローティング・フィルター・バンドそれぞれにEQ/コンプレッション/エキスパンダーを統合した先進のダイナミックEQコントローラを備え、精密手術のような処理までも可能にします。さらに、MSプロセッシングをはじめとするいくつものオプションも搭載しました。
F6は筆者のファーストコールプラグインで、もしもプラグインがひとつしか使えなならば迷わずF6を選びます。6バンドのイコライザーですが、それぞれのバンドはダイナミックEQとしても使用可能。M/S動作やサイドチェイン動作も可能で、万能かつ非常に使いやすいイコライザーです。近年人気のAIや自動化機能は全くありませんが、F6を使っていると、これ以上何も必要ないような気すらしてきます。そのくらい使いやすいイコライザーです。
Sibilance

Wavesが新たに開発した革新的なOrganic ReSynthesisテクノロジーから、限りなく透明に近いボーカル・ディエッサーが誕生しました。耳ざわりな”S”サウンドを、ありえないほどの速さでかつ質感を損なわずに除去する。ボーカルの輝きを保ったまま、不要な雑味だけを取り除きます。
Sibilanceはサシスセソ等で目立ってしまう歯擦音をスムーズに減衰できる高性能ディエッサーです。通常のディエッサーよりもなめらかに減衰できることが特徴で、出力音が柔らかい印象です。筆者はディエッサーが必要な場合、ほぼすべてのケースでSibilance を使用します。ボーカルミックスに欠かせないプラグインのひとつです。
CLA-3A Compressor / Limiter

ユニークで非常に透明感のあるコンプレッションカーブを持つことで知られる70年代初期のソリッドステートユニットをベースに開発されたCLA-3Aは、実機同様に素早いレスポンスと繊細な倍音歪みを提供します。オリジナルと同様にベース、ギター、ボーカルに豊かな彩りを加え、ミックスにさらなる深みを与えてくれることでしょう。
ロック界のサウンドを牽引してきたミキシング・エンジニア、Chris Lord-Alg氏が所有するLA-3Aコンプレッサーをモデリングして作られたコンプレッサー・リミッターエフェクト。LA-3Aはボーカル用コンプとして名高い光学式コンプレッサーLA-2Aの後継機とされており、同じような構造とサウンドを持ちます。異なるのはアタック・リリースタイムの設定(音への反応速度)で、LA-3Aの方が速く反応します。ボーカルに対してはアタック・リリースが緩やかなLA-2Aが多用されますが、LA-3Aが使えないわけではありません。特に近年のテンポが早くてアタック感の強いボーカルサウンドには、LA-3A(CLA-3A)の方が向いているかもしれません。
Manny Marroquin Reverb

Manny Marroquin Reverbは、4度ものグラミー賞に輝いたミキシング・エンジニア、マニー・マロクィンが手がけるプラグインです。彼がミックスで実践するサイズ、タイプの異なる18種類ものリバーブを集め、さらに歪みやフェイザーなどミックス内でサウンドを際だたせるための、様々な機能も搭載しています。
Wavesが著名クリエイターとコラボして製品化するシグネイチャー・シリーズの中でもやや異色のシリーズ。Manny Marroquin氏とのコラボで生まれたリバーブで、実際にManny Marroquin氏が使用する6種類のリバーブがモデリングされています。プリセットが多すぎないので使いやすいリバーブです。リバーブだけでなく、ディストーションやフェイザーなども備えており、リバーブを汚すことでさらにボーカルを引き立たせる音作りも可能です。Manny Marroquinシリーズの空間系エフェクトは実用的で、筆者はManny Marroquin Delayを愛用しています。
Waves Tune Real-Time

パフォーマンスに自信と集中を持って取り組むために、ライブ、スタジオを問わず、リアルタイムにボーカル・ピッチの揺れを補正する夢のツールがあります。 Waves Tune Real-Timeは、ボーカリストからボイスが発せられた瞬間に、なめらかで自然なサウンドのボーカルピッチ補正を、文字通りリアルタイムかつ自動で行うプラグインです。
Waves TuneはWavesによるピッチ修正ソリューションですが、その中でもWaves Tune Real-Timeはその名前の通りリアルタイム使用することが前提。用途は概ねふたつで、そこそこピッチの良いボーカリストをさらに安定させる用途、そしてケロケロボイスの作成です。歌ってみたでは後者の用途で使用することが多くなるのではないでしょうか。以下の記事が参考になると思います。

まとめ
HAYABUSA/ARTEMISを駆け足で紹介しましたが、いかがだったでしょうか。何より、Waves本社が日本向けにボーカルミキシングバンドルをリリースしたということがビッグニュースなのではないでしょうか。歌ってみたに代表されるボーカルミックス需要はもはや日本の代表的な音楽制作スタイルのひとつとも言えます。また、近年の技術開発により、イコライジングなどがかなり自動化されてきたことも特筆すべきです。HAYABUSA/ARTEMISはこれらの技術を自身のボーカルミックスに簡単に取り入れることができますので、これからボーカルミックスに取り組んでいきたい人はこの機会にぜひ検討してみましょう。

ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。




