Black Fridayで買ってしまったもの iZotope Ozone 8
ご存知の方も多いかと思いますが、OzoneというプラグインはOzone9が出ているので今更Ozone8の事を書くのかという気もしますが、気にせず行きますw
飛ぶ鳥を落とす勢いのiZotope。有名になってしばらく経ちますが、まともに導入したのは今年に入ってからのことでした。Ozone 8 Elementが恐ろしく安い値段で売っていることを知ったので、これをとりあえず使ってみようかということで導入しました。
しばらく使ってみて思ったのは、これは確かに「使える」。ということでStandardにアップグレードしようと思っていたのですが、今年のBlack FridayでなんとOzone 8 Standardが出てきました。
ご存知の通りOzone 9がすでにリリースされているのですが、Ozone 8 Elementsでクオリティとしては使えるということはわかっていたので、驚きの値段になっていたOzone 8 Standardを買いました。
やめてほしいなーBlack Friday。笑
絶対なんか買ってしまう。音楽制作界隈のBlack Fridayは海外メーカーの本家Black Fridayなので、すごいんです。最近日本の音響系ではない一般の小売店もBlack Fridayって言い始めましたけど、ショッピングモールのBlack Fridayとか全然安く感じない。笑
Elementsの構成としてはざっくり言うとEQ/Stereo Imager/マキシマイザという構成になっています。唯一Elementsで僕のミキシング上足りなかったものは、マルチバンドコンプレッサー。僕はミキシングの際にマルチバンドコンプレッサーが欲しい人なので、これがあれば完璧だなと思っていました。マルチバンドコンプはStandard以上にしないとついてこないのです。
ということで、Standard導入!ざっくり使ってみたのでその感想など。参考になるかわかりませんし、まだOzone 8 Standardをそこまで勉強していないので役に立つかわかりませんが。
▶iZotope Ozone 9(本記事の内容はOzone 8ですが、リンク先は現行のOzone 9販売サイトです)
目次
Master Assistant、なかなかやり手。
Ozoneの特徴的な機能としては[Master Assistant]というのがあります。ポチっとすると音を解析し良い感じにエフェクトを設定してくれるという機能です。僕も結構使ってまして、Master Assistantで作られた設定をベースに追い込んでいくので、作業が早くなります。
ということで、まずはOzone 8 StandardでもこのMaster Assistantを使ってみました。結果がこちら。
あれ、全然EQ切ってくれないww
まぁこれはOzoneがイコライザーをあまりかけなくて良いと判断してくれたということなので、ミキシングとしては良いバランスにまとまっているんでしょう。嬉しい。笑
と思ったら、Ozone 8 StandardにはElementsにはなかったDynamic EQというのがあります。こちら。
おおーなるほど。ピーキング(部分的に調整するイコライザー)でカットする帯域は、こちらのDynamic EQでカットしてくれた感じのようです。
ちなみにElementsの時に僕が切ったイコライジング(イコライザーをどうかけたか)はこちら。
いやーMaster Assistant、なかなかすごい。そこそこ同じにEQ切って(=調整した、EQは調整することをEQを切ると表現します)くれます。
ローエンドとハイエンドの処理は僕の音の趣味が出ているのでさておき、真ん中の2ポイントはほぼ同じ場所を調整してくれました。僕のEQ/Master Assistantで202Hz/222Hz、668Hz/685Hzの2箇所はほぼ同じポイントをカットしてくれてます。すごいなこのプログラム。仕事なくなる。笑
ま、でも結局ここからの追い込みだったり、Ozoneだけで音作るわけでもなかったりするので全然仕事を奪われる不安はありませんが、とにかくいい勘してますMaster Assistant。
実はOzone 8 Elementsで最も優秀だなと感じていたのは、イコライザーなんです。何より位相がいいんです。
どういうことかざっくり説明すると、イコライザーは帯域ごとに音量を調整して音を作るエフェクトですが、かけると少なからず位相に影響が出ます。言葉でざっくり表現すると、「気持ちよくなくなる」感じです。音が引っ込む、なんとなくもわっとする、そんなニュアンス。
イコライザーをかけていくと、散々EQを切った後に客観的に聞くと、「かけない方が音良かったな」ということがしばしばあります。これが多くの場合位相の問題で、単体楽器だとわかりにくいのですが、マスタートラックや位相の崩れがわかりやすい楽器ではこの問題が出てきます。ピアノとか。EQの種類によってこの崩れ度合いが異なるので、なんとなく「位相崩れにくいEQランキング」みたいなものを把握しています。(あくまで感覚値ですがw)
で、Ozone はこの位相が崩れにくいので、気にせずアグレッシブにEQを切れるという印象を持っています。(位相が崩れないEQが優秀に聞こえますが、それはその時求める音質によるので一概に位相の良し悪しだけでは判断できません)ピアノにかけてもそんなに気になりません。
期待のマルチバンドコンプは如何に
次は期待のマルチバンドコンプ。これもMaster Assistantの結果では2バンドのみになっていました。あまりかける必要ないという結果に嬉しさを覚えつつ、自分でかけてみました。
マスターにかける時は4バンドくらいに分けることが多いのですが、十分に対応できます。また、それぞれのバンドにコンプレッサーとリミッターがあるので、使い分けできますね。ただし個人的にはどっちかだけでいい時も多そうなので、リミッターをオフにする方法を探したいところです。
マスタートラックでの全体の帯域増減調整はマルチバンドコンプでやることが多いです。どういうことかというと、EQでやるのは細かいポイントのカットだけで、広い範囲でブースト/カットして雰囲気を調整する時はマルチバンドコンプで帯域ごと増減してしまうことが多いです。なるべくイコライザーを切りたくないので、こういう方法を使ってます。
最後にマキシマイザ。これは全体の音量感を調整する、ほとんどの場合音量感を上げる(音圧を上げる)エフェクトでコンプレッサーの進化系というか、最終的な音圧調整に的を絞ったコンプレッサーですね。ガーっとかけるとガーっと音量が上がる感じです。笑
これもOzone 8のマキシマイザはなかなかマイルドにかかるので、あまり音の変化なく音量があがる感じで良いです。(あ、音は変わりますよ、わかりにくいというだけです)よくわかんねーけど音量上げたい人にはいいでしょうねw
波形表示でリダクションした(音量を下げた、コンプレッションした)場所だけわかるようになっているのが使いやすいです。最近はあまり音圧を上げろリクエストが来ないので、ピークだけ潰すくらいの使い方が多いです。
Elementsに対して充実しているのはMode切り替えですね。何が変わるってMode返ると音が変わるんですがすごく微妙な話ですw なんとなくしっくり来ないなーという時にModeを変えてみたりします。また、Learn Thresholdという機能があり、ターゲットの音量(ラウドネス値)を設定するとだいたい合わせてくれる機能もあります。僕はラウドネスメーター見ながら手動調整するのであまり使いませんが。
ちなみにStandardになるとディザ(ビットレートを落とすときに使う機能。いい感じにフォーマットを変換する機能というかアルゴリズム)も搭載してます。これまではWaves L3のディザを使っていましたが、Ozoneのディザが良ければL3をいよいよ使わなくて良さそう。そのうちちゃんと試してみます。
個人的にはImagerが結構使える度高し!
まぁこんな感じでとても便利なツール、「すげー使える!」というのが今現在のOzone 8の印象です。Ozone 9はきっともっと良いのでしょう。笑
ElementsではEQ/Imager/Maximizerの3種類で固定ですが、Standardでは必要なエフェクトを追加できます。Excitor(エキサイター)やVintage Limiter(ビンテージリミッター)なんかもありますね。そのうち勉強して使ってみます。
ちなみに個人的によく使うのはElementsでもついていたこちらのImager。
ざっくり言うとステレオ音源での左右の広がりをコントロールするエフェクトなんですが、僕はステレオの広がり感にこだわりがあるのでよく使います。
最近のミックスを聞くと、個人的には広げすぎのミックスがよくあるなと思います。おそらくソフトシンセが多用されるようになったことが影響しているのかなと思っています。シンセって最近はステレオ音源が多く、かつ、初期状態のパンニング(左右のパンの設定)がLR MAXになっていることが多い、というかほとんどそうです。アレンジャーさんからファイルを受け取ると複数の音源がLR MAXになっていることが多いです。この幅がうまく音を配置して雰囲気を出すのに重要だと思っています。ヘッドホン、イヤホンで聞くことが多いご時世なので尚更。左右MAXってヘッドホン、イヤホンだと外に行き過ぎなんですよね、個人的には。
ミキシングで各トラックの音を個別にコントロールしている時はせばめていくことが多くなります。で、最後にこのImagerで左右の広がり感を「楽曲全体で聞いて」調整すると良い感じになります。WavesでもS1 Stereo Imagerなど似たようなプラグインがありますが、Ozone搭載のImagerはそこまでエフェクティブではなく、あまり音を変えずに広がり感をコントロールできるので好きです。
リサージュ(右側の半円のやつ、音が左右にどういう感じで広がっているか、音の位相がどういう状態か見られるメーター)も見られるので好きです。オシロスコープ買わなくてよくなりましたw
(今でも1台持ってます。。。)
まだ機能あるのか、、、Reference機能、便利だこりゃ
最後にElementsになくてStandardにある機能で良いなと思ったのが、右下にあるReference機能。
これ、何かっていうと、リファレンス音源(制作時に参考のために聞く既存音源)を読み込んで再生するための機能なんですよ。読み込んで、再生すればリファレンス音源を簡単に聞けます。上の画像では他の音源を読み込んでありますが、勝手に背景を解析してセクション分けしてくれるので、音の大きいサビの部分だけ再生とか非常に簡単にできます。
この機能がないときはどうやっていたかというと、わざわざ別トラック作ってリファレンス音源をトラックにインポートして聞いてました。それか、モニターコントローラで入力切り替えてCD聞くか。別トラックだといちいちマスターのプラグインをオフにしなきゃいけないし、CDプレーヤーから聞くとそもそも別経路なのでDAが違うし、みたいな感じで純粋な比較をするのにはそこそこ手間がかかるんです、簡単そうに見えて。
で、この機能使うと純粋に同じ環境で比較できるので、とても良いです、便利。よく作業フローを調べて作ってあるなという感じがします。iZotopeすごいな。
とまぁちょっと遊んでみただけなのでまだまだ機能面や音がどうなるのか勉強は必要ですが、とても使えることがわかりました。損はしないことがわかった。笑
あ、マキシマイザで最後って言いながら全然最後じゃなかったですね。ご容赦くださいw
僕が買ったのはOzone 8ですが、お金のある方はぜひOzone 9を買ってみてくださいw僕もそのうち買うと思いますけど。見事にElementsの安さに負けて導入してみて、ハマりました。やられた。笑
Ozoneがなくても同じ音は作れると思いますが、最初からこのプラグイン使ってると、これがないと音作れないっていう人も出てくるんじゃないかろうかと。それくらいよくできてます。感動しました!
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。
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