ProToolsでインポートするとステレオファイルがモノ2本になる問題 (BWFファイル iXMLチャンク)
ProToolsでステレオのオーディオファイルをインポートする際に、ステレオファイルがA1/A2というモノファイル2本でインポートされてしまう問題の対処法です。
目次
原因
この問題のほとんどはCubaseで書き出した(エクスポートした)ファイルをProToolsで読み込む(インポートする)場合に発生します。
Cubaseで書き出す場合に[iXMLチャンクを挿入]というチェックボックスがオンになっている場合に発生します。Cubase(書き出し側)でWAVファイル(Broadcast WAVEファイル:BWFファイル)の拡張領域であるiXMLチャンクにデータを加えた場合に、ProTools側でうまく対応できずにモノファイルが2本になってしまいます。
iXMLが規格化されているもののあまり使用されていないために双方のDAWでiXMLの扱いの違いが出ていることによる問題と言えます。
対策
書き出し側で対策する(Cubase)
書き出し側で対応できる場合は書き出し側で対応する方が良いでしょう。Cubaseの書き出しポップアップウインドウで[iXMLチャンクを挿入]のチェックを外した状態で書き出しを行います。
ついでに[Broadcast Waveチャンクを挿入]をチェックが外れているか確認しましょう。チャンクにデータを格納して良かった思い出はほぼありません。特に異なるDAW/ソフトウェア/環境でデータをやり取りする場合、チャンクにデータがあると読み込み側で問題が発生する場合がありますので、誰かにデータを受け渡す場合、保存用のデータを作る場合は必ずチャンクを外しましょう。
読み込み側で対策する(ProTools)
ProTools側でシステム的に対応する方法は今の所見つかっていません。
現実的には手動で対応するか、モノファイル2本のまま扱うことになります。
モノ2本になったファイルの近くにステレオのオーディオトラックを作ります。モノ2本になってしまったファイルを両方選択(Shiftを押しながらクリック)し、新設したステレオのオーディオトラックにドラッグアンドドロップします。
2本のファイルがひとつのステレオトラックにまとまりました。任意でトラック名を変更し、空になった2つのトラックを削除して完了です。
波形編集ソフト等で対策する(WaveLab)
波形編集ソフトでiXMLチャンク情報を削除して上書きすればProToolsでも読み込むことができます。
WaveLabでは読み込むとステレオファイルとして読み込まれます。[メタデータ]タブからメタデータを参照します。表示されていない場合は[上部メインメニュー>ツールウインドウ>メタデータ]で呼び出します。
メタデータウインドウから[iXML]を選択するとファイルのiXMLチャンクに書かれている情報を見ることができます。この情報をすべて選択して[削除>OK]し、ファイルを上書き保存することでiXML情報が削除されます。削除されればProToolsで読み込んでもステレオトラックで読み込まれます。
その他
Cubaseで読み込む場合
Cubaseで読み込む場合は、インポート時のポップアップで[チャンネルを分割]チェックボックスにてファイルの扱いを変更できます。チェックを入れればステレオファイルは「分割」され、モノ2本の状態でインポートされます。チェックを外すとステレオトラックでインポートされます。
iXMLチャンクとは
WAV(BWF)に定義された、オーディオファイル以外の情報を書き込む場所です。この保存場所はiXML以外にも様々な規格で使われており、TASCAMのXRIなども同様にWAVファイルの拡張データ領域に情報を書き込んでいます。
以下のサイトに詳細が掲載されていますので、興味のある人は読んでみてください。
参考:TASCAM XRI仕様書
https://tascam.jp/downloads/products/tascam/xri/J_XRI_Spec_vB.pdf
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。