Neumann MT 48 レビュー 歌い手・楽器演奏者向けインターフェースの決定版!?

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U 87 Aiなどのマイク、筆者も使用するモニタースピーカーKH 80 DSP等で有名な音響機器ブランド、Neumann(ノイマン)。Neumannはいわゆるアナログハードウェアを中心とした製品展開でレコーダー等のデジタルハードウェアはラインナップにありませんでした。しかし2022年、Neumannが属するSennheiserグループPyramixで有名なMerging Technologiesが入り、その流れからオーディオインターフェースMT 48がリリースされました。

Neumannのオーディオインターフェースということで、エンジニア等をターゲットにした製品と思われますが、使ってみるとそうでもなく、(価格は高いものの)宅録ユーザーにとってある意味最強のオーディオインターフェースになりそうな製品でした。この記事では歌い手アコースティックギター管弦楽器等、アコースティック楽器を自宅で録音するプレイヤーの方向けにMT 48の紹介をしていきたいと思います。

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歌い手・アコースティック楽器演奏者に向いているその理由は?〜オールインワン・パッケージかつNeumannクオリティ〜

まずはMT 48の概要を紹介しつつ、誰に向いているかを紹介していきましょう。

MT 48は2基のマイクプリアンプ、音質調整用のDSPミキサー、スピーカーやヘッドホンへの出力音量調整などを行うモニターコントローラーなど、複数の機能がひとつの筐体に収められたオーディオインターフェースです。入出力数は数字の上では32in/16outとなっており多入出力に見えますが、これはADAT/AES67というデジタル接続を使用して最大限に拡張した場合のスペック。本体のみでは4入力/4スピーカー出力(2stereo=2ペア)/2ヘッドホン出力という仕様です。

背面にXLR/TRSコンボ入力を2系統、XLRとTRS出力を2ステレオ備える。

特徴はMerging Technologiesクオリティのマイクプリアンプと高品位なADC/DACによる高音質、そしてタッチパネルディスプレイと重量感のあるガッチリとしたボディでしょう。プロ向け機器にあるラックマウントタイプではなく、デスクトップ型であることも大きな特徴となります。価格は2023年11月現在で約33万円と決して安くはなく、むしろ最も高額なカテゴリに属します。

ボディはフルメタルでかなり重さがあり、低価格モデルとは一線を画した仕上がりとなっている

プロ向け、Neumann、AES67という特徴からプロエンジニア向けを連想してしまいますが、デスクトップ型という点からもわかるように「持ち運べるNeumannクオリティのスタジオ」のようなコンセプトの製品ではないかと思います。つまりプロに限らずオーディオインターフェース1台で完結するような制作環境を欲している人に最適な製品だと感じました。

プロの場合はすでに所有している機器との接続性を考慮する必要が出るので、スタジオの中枢に据えるというよりも持ち運び用という使い方になるでしょう。

例えばマイクプリを多数持っている場合はアナログ入力が不足しますし、DACワードクロックジェネレーターなどのデジタル機器を所有する場合も同様に接続するために工夫が必要です。AD/DAの回路設計や電源部の設計の面においても内部空間に余裕のあるラックマウント機に分があるでしょう。

つまり、既存のスタジオ機器と比較するような機器ではなく、何もないところにMT 48を置けばNeumannクオリティでレコーディングやミキシングができるということがゴールだと考えられます。入出力数はラックマウントの競合機と比較すれば少ないのですが、もともとそういう機材ではないということです。

このようなコンセプトから、エンジニアほど音響機材を多く持たないがシンプルな構成で高音質録音をしたい人、、、つまり、ボーカリスト楽器演奏者にとって優れた選択肢になると思います。

ただし多機能であるため初心者には少々扱いが難しいので、最初のオーディオインターフェースというよりは、2台目、3台目として考えると良いでしょう。

高音質マイクプリアンプ 〜誰にでも扱いやすい癖のないクリアな音質〜

ボーカルや楽器録音において重要になるのはマイクプリアンプマイク入力の音質です。

高額なマイクプリアンプは音に特徴がある一方で、使いにくいものも多くあります。音の癖が強い、マイクとの相性が激しい、ユーザーインターフェースが難解などなど、初心者には難しいものが多いです。加えて実はノイズが多い、というパターンもあり、レコーディングのワークフローをよく理解し、多くの知識を持たねば使いこなせません。

つまり、エンジニアがいないとポテンシャルを発揮できないことも多いのです。

マイクプリの解説は別記事にて↓
マイクプリって何?マイクプリって必要?〜マイクプリの役割やスペック解説 EINとは?〜

MT 48のマイクプリアンプは癖がなく低ノイズ。入力された音をそのまま出してくれる印象です。ビンテージ機器のように入力音に激しく色付けをするようなタイプではありません。筆者は同社V 402マイクプリアンプも所有していますが、V 402とも異なる音です。

わかりやすく言えば、誰にでも扱いやすいマイクプリアンプだと言えます。ローカットフィルターは40/60/80Hzの3段階を装備し、PAD-12/-24dBの2段階。メーターもデジタル表示で見やすいので、ピーク(レベルオーバー)だけ気をつければ誰でもクリアな音で録音できるでしょう。

LCFとPAD、入力レベルはタッチパネルディスプレイから操作できる

録音対象もマイクも選びませんが、強いて言うなれば低ノイズ型のマイクと相性が良さそうです。MT 48自体がEIN(入力換算雑音)-128dBuという数値を示しており、超低ノイズの機器です。これは言い換えるとマイクや入力機器のノイズが目立つということでもあります。真空管系のマイクなどノイズフロアの高い(ノイズの大きい)マイクは気になるかもしれません。また、超低価格マイクなどもノイズや粗が目立つので、使用は適さないでしょう。

適正で言えば同社TLM 102/TLM 103/TLM 107などに代表されるトランスレス系のマイクや、LEWITTなどの近代テクノロジー系のマイクと組み合わせると良さそうです。

TLM 103は相性抜群
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また、ゲインレンジは最大で+78dBまでありますので、コンデンサーマイクに限らず出力の小さいダイナミックマイクでも使用可能です。65dB以上のゲインが要求されるSHURE SM7Bも使用可能です。

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マイクのスペックの解説はこちら↓
dBって何?マイクのスペックの読み方 超初心者向け解説

高音質ヘッドホンアンプ 〜MT 48だけで正しい音が手に入る〜

MT 48の中でも特筆すべきは良質のヘッドホンアンプです。一般的なオーディオインターフェースにおいて、スピーカー用のライン出力の音が良くてもヘッドホンアンプが良くないというケースは多く存在します。仕組みとしてはデジタル信号をアナログ化するDAC(DAコンバーター)を経てさらにヘッドホンアンプを通り、出力されます。簡単に言えばヘッドホンアンプのパーツをケチった、ということです。

オーディオインターフェースの概念図
オーディオインターフェースの概念図

これに対しMT 48のヘッドホンアンプは全く手を抜いておらず、むしろヘッドホンアンプ単体機として使えるほどのヘッドホン出力品質を誇ります。低域から高域までレンジが広く、精細な音質です。

例えばボーカルレコーディングにおいては音の消え際やタ行やカ行の立ち上がり(トランジェント)などの具合が手に取るようにわかります。オーディオ機器ほどの色付けは感じられず、あくまで音楽制作用のモニター音質です。したがって完成音源の再生チェックにも最適で、音を正確に素早く判断できる音質だと感じました。

ヘッドホンは2台接続できる

自宅に大きなモニタースピーカーと優れたルームアコースティック(良い響きの部屋)を用意することは非常に大変ですが、MT 48と良いヘッドホンがあれば、信頼できる再生環境をコンパクトに構築できます。加えて、その環境を持ち運ぶこともできます。

実はヘッドホン出力に関しては仕様があまり開示されておらず、出力すらわかりません。しかし抵抗値が120Ωと比較的高めの同社NDH 20を楽々ドライブするパワーがあります。ボーカルレコーディングでもヘッドホン音量に不足は感じませんでした。

加えて、ヘッドホン出力が2つあり、それぞれを個別にミュートすることができます。また、それぞれのヘッドホンに送る音のバランスを変えることも可能です。2人同時に録音する場合や2人同時にヘッドホンチェックを行う場合に活躍するでしょう。

ヘッドホンミュートボタンの設定はそれぞれのヘッドホン出力で独立

レコーディングを快適にするDSPミキサー

さて最後にDSPミキサーを紹介しましょう。

筆者の場合、単体マイクプリアンプを持っているためオーディオインターフェースに搭載されているDSPミキサーを使用して音作りをすることはほとんどありません。所有しているGrace Design m103などをよく使用しますが、m103にはイコライザーもコンプレッサーもありますから、マイクプリ側で音作りをしてしまいます。機材を多く所有する場合は同じようにDSPミキサーの有用性は少ないでしょう。

しかし、機材を持っていない人になれば話は別です。マイクプリを持ってい人の場合はMT 48に搭載されたDSPミキサーがレコーディングにおいて大いに役立ちます

2つのマイク入力と2つのライン入力にはそれぞれ独立したEQコンプレッサーが装備されています。ホーム画面から各チャンネルを選択するとメニューが表示され、ここで[EQ]を選択することでEQセクションに移動します。

タッチパネルで各セクションを設定する

EQは4バンドで、LCF/Low Shelf/Peak/High Shelf/HCFの5種類から動作タイプを選択して使用します。例えば高域をシェルビングで伸ばし、中低域を軽くブーストするような使い方ができます。特にダイナミックマイクの場合は高域がブーストできることは大きな助けになるでしょう。

4バンドのEQを装備

同様にコンプレッサーセクションもホーム画面から[DYNAMICS]を選択することで移動できます。ダイナミクスセクションとなっていることからもわかるように、コンプレッサー以外にゲートリミッターも装備しており、コンプ・ゲート・リミッターは別々に動作することができます。

コンプ・ゲート・リミッターを備える

ビンテージ系コンプレッサーのような音質変化はありませんから、純粋に音量を整えるためのコンプレッサーとなります。音質変化を狙うというより音量差を整えて歌いやすくするためのコンプレッサーと考えると良いでしょう。コンプレッサーで軽くコンプレッションをしておくことで、適切なダイナミクスに抑えることができ、聞きやすい音で歌う事ができるでしょう。

ただし、すべてのパラメーターは手動で設定する必要があり、ARC(オートリースコントロール)もありません。ある程度コンプレッサーを理解していないと設定は難しいでしょう。DAWに送られる音に影響するので、迷う場合は軽め(レシオ弱め)にしておくと良いでしょう。

コンプレッサーの設定例

最後にリバーブも紹介しておきましょう。本体にリバーブエフェクトが搭載されているため、レコーディング中はMT 48本体のリバーブを使い、響きのある状態で歌うことができます。ボーカルだけでなくアコギや管弦楽器の録音でも有効です。リバーブ自体は録音モニタリング専用といったシンプルな内容なので、迷うことなく使えると思います。

リバーブの設定例

リバーブへの送り量は、ホーム画面で設定します。ホーム画面にした状態で再度ホームボタンを押すと画面表示が変わり、[REV]つまみが現れます。[REV]つまみをあげていくだけでリバーブがかかります。

ホーム画面

なお、無料で配布されている専用ソフトウェアToolkitをインストールすれば、DSPミキサーは接続したPC上からも操作が可能。Webブラウザを介してMT 48をPCから操作できるので、操作しやすい方法で設定していくのが良いでしょう。

ToolKitはNeumannダウンロードページで「ToolKit」と検索することで見つけられます。


以上のように、MT 48は、MT 48だけでレコーディングを行うようなシチュエーションに向いている機器だと言えます。日本語表記もなく、コンプレッサー等の設定は少々難しいかもしれませんが、慣れてしまえば自分の環境で使う分には迷いなく使うことができるでしょう。心配な人はスナップショット機能を使って自分のセッティングを記憶させてしまえば便利です。

レコーディングにおいて無数の選択肢があり、選択肢を用意しすぎることで迷いが出てしまうことも多くあります。最適な選択肢を選ぶことは、エンジニアであれば難しくありませんが、ボーカリストや楽器演奏者にとっては難関のひとつです。MT 48はマイクプリ、ADコンバーター、DAコンバーター、ヘッドホンアンプが非常に高いレベルにあり、かつ、癖がないため、マイク選びとマイクのセッティング以外のことを考えなくても良いオーディオインターフェースです。エンジニア以外の方にとっては効率的に選択肢を狭めてくれるオーディオインターフェースと言うことができ、スムーズな録音、ひいては良いテイクを録音することに貢献してくれる1台でしょう。

注意すべき点があるとすれば、電源を必要とすることです。MacBook等のノートPCと組み合わせても電源の無い場所では使用できません。USB-C端子での給電ですが、マニュアルによれば付属の専用ACアダプターとケーブルの使用が推奨されており、モバイルバッテリー等の使用はできないようです。ただしAES67(Ethernet)端子経由のPoE(Power over Ethernet)には対応しているため、AES67経由で電源供給することはできそうです。

少々値段は張りますが、機材を多く持たないボーカリスト、アコースティック楽器演奏者の方のオーディオインターフェースとしては最良の選択肢のひとつになると思います。

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