dBって何?マイクのスペックの読み方 超初心者向け解説 [難しさ:やさしい vol.090] 音響機器・音楽制作で必須の知識 デジベルとは?

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DAW、プラグイン、マイク、ミキサーなどなど。音楽に関わっていると必ず目にするのが「dB」です。そもそも読み方すらわからない方も多いと思いますが、基礎知識だけでも身につけておくと音響機器を扱うのが楽しくなりますし、スペックから機器の特徴を読み取れるので購入時に適切な判断をしやすくなります。

完全理解しようとすると非常に難しい話で、数学が苦手な人にはかなり厳しい内容です。本記事では、完全理解ではなく「dB」や音響機器のスペックの概要を理解できることを目指し、簡略化して説明しています。初心者の方向けの内容となりますので、識者の方はご容赦ください。

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そもそdBって何?読み方は?

dB」は色々なところで見ます。読み方がわからないと記事を読むのが大変でしょうから、まずは読み方。「dB」は、「デシベル」と読みます。

Waves H-Comp。THRESHOLD(スレッショルド)の設定に「dB」表記がある

「d(デシ)」は小学校の時に習ったであろう「1dL=1デシリットル」と同じ「d」で、1/10という意味があります。また、「B(ベル)」は単位の名称で、語源は電話を発明したグラハム・ベルです。dとBなので、表記はdが小文字、Bが大文字となります。まれにdbと書いている人を見かけますが、dBが正しい表記です。

ここで「B(ベル)」の正確な定義を話していくと、理解が相当に難しくなります。この記事ではdBのことがだいたい理解でき、音響機器を扱うのが面白くなることをゴールとして考えていますので、以後、難しい話は全部飛ばしてざっくり説明で進めていきます。

ものすごく簡単に説明すると、音の世界におけるdBは、音の大きさを表す単位です。DAWの画面やミキサーで言うのであれば、フェーダーの位置を表す単位と捉えれば良いでしょう。ただし絶対値ではなく、相対値であることがポイントです。真面目に言えば常用対数というものになります。

以下はProToolsのミキサー画面ですが、フェーダーの左(赤)とメーターの左(緑)にそれぞれ数字が書いてあります。これらがdB表記された音の大きさです。それぞれゼロの位置が異なることに注目してください。

dBは、ある位置を「ゼロ」として定め、「ゼロ」を基準に大きいか小さいかを表す相対値なのです。

0dB=設定した基準値

したがって、+10dBなら「基準値から10dBだけ大きい」という意味であり、-20dBなら「基準値から20dBだけ小さい」ということです。フェーダーをよく見ると、かならず8分目くらいの位置にゼロがあります。フェーダーは下に下がりきった位置がゼロではないのです。ゼロから下がっていくと、-10dB、-20dBと数値が小さくなっていきます。

身近な例で似たようなものは、学力の偏差値です。

偏差値はテストが何点という数値ではなく、全体でどのくらいに位置しているか(偏差)を示すもので、偏差値を見てもその人のテストの点数はわかりません。(計算すればわかりますがすぐにはわかりません)もちろん偏差という考え方はdB(常用対数)とは全く異なるので一緒にはできませんが、絶対値ではなく相対値であるめ、ゼロの位置は使い方によって変化するという知識を頭の片隅に置いておいてください。

dBVとdBuの概念図。同じ0dBでも示している電圧の値が異なる

なぜdBを使うのか

すごく簡単な理由なのですが、dBで表記した方が扱いやすいからです。

音は音響機器上では「電気」として扱われ、電圧などの数値は機器の中で大きく変化します。

マイクから出た信号はマイクプリアンプで増幅され、コンプレッサーで増幅され、フェーダーで増幅され、アンプで増幅され、、、、と最初のか弱い信号は見る影もないほど変化します。この時に、絶対値で扱っているとものすごい桁数になってしまうのです。例えば「信号を100,000倍」ということは普通によくあるケースですが、100,000倍というと数が多すぎてイメージがつきにくくなります。また、100,000倍は100倍の1,000倍なのですが、これも数字が苦手だともはや計算不能になります(苦笑)。

dB表記ならば「音量を100,000倍」は「音量を100dB上げる」と、たった3桁の表記ですんでしまうのです。

また、100倍の1,000倍(=100×1,000)も掛け算ではなく足し算で表せるようになります

40dB(100倍) + 60dB(1,000倍) = 60dB(100,000倍)

あら不思議、同じ結果になるのです。

また、人間の耳の感性が直線的ではないことも要因のひとつでしょう。イメージ的に0dBから3dBさげた時の感覚と、-40dBを-60dBにした時の感覚はさほど差が無いと思いますが、電圧で考えれば-3dB=1/1.4なので、1V→0.708V。-40dBは0.010V、-60dBは0.001Vなので、「0.010V→0.001V」と、電圧ではかなり異なることがわかります。フェーダーを同じ速度で下げていっても、電圧の変化は直線的ではないのです。このあたりのニュアンスが、人間の耳とマッチしていたのではないかと思います。

まとめると、「電気が苦手な人」でも、音量の大小を直感的に言葉として表せるのがdB表記最大のメリットではないかと思います。

つまり、完全に理解していなくても使えるということです。興味がある人は深堀りして覚えてみてください。

「フェーダー6dB下げて!」

となったら、音量を1/2にするという意味なのですが、そんなことは理解していなくても目盛りに沿ってフェーダーを下げれば良いのです。だんだん理解すれば良いので難しく考えないでください。

しかし世の中は難しいもので、プロデューサーに「音量半分にして」と言われた時に6dB下げたからと言ってOKを貰えるかはわかりません。このプロデューサーの「半分」は電気的な意味ではなく感覚的な意味でしょうから、6dB下げても半分に聞こえなかったらOKをもらえないでしょう。「え?6dB下げたんで半分ですよ?」などと反論してはいけません(苦笑)。

dBの説明として覚えておくと便利なことを最後に記述します。これだけ覚えていれば色々な場面に対応できますよ(^o^)

  • 0dBはスタート地点。変化なし!
  • +6dBは2倍!-6dBは1/2。「6dB下げる」は半分にするという意味です。
  • +20dBは10倍、-20dBは1/10。
  • +40dBは100倍、-40dBは1/100。
  • +60dBは1,000倍、-60dBは1/1,000。
  • 20dBごとに10倍 or 1/10の関係で変化します。(=10の乗数が変わるということです)

なお、仕事で音響に携わりたい人、特にPA/SR系に進みたい人は詳細に理解する必要がありますので、ちゃんと勉強しましょう

※音響機器においてはほとんどの場合20log^10(電圧用途)での使用となるため、この記事では20log^10を基準に記述しています。

色々なdBがある!

dBは音響機器専用と思いきや、世界の色々なところで使われています。また、音響機器の世界の中でもいろいろなdBがあるのです。

いろいろなdBがあるということは、基準値が色々あるということです。

dBが違えば基準値が異なりますから、示す値も変わってきます。どの種類のdBなのかは、dBの後ろについている文字で知ることができます。音の世界でよく見るものを挙げてみましょう。

  • dBu
  • dBV
  • dBSPL
  • dBFS
  • dBv
  • dBm

などなど、、、実際はもっとあります。dBvとdBVが違うとか間違い探しレベルですよね(苦笑)。

機器上の表記や、DAW内部、プラグインエフェクトの中では「dB」とだけ表記されていることがほとんどです。実際のところ、書いてある「dB」が「dB何?」かわからなくても実用上問題は出てきません。使っているだけならdBの後ろが何なのかを気にする必要は、無いのです。

この段階では、dBはたくさんあってそれぞれ基準値が異なることだけ覚えておいてください。

マイクで覚えるdB

手始めにマイクのスペックで覚えてみましょう。これができるとマイクを買う前にマイクの素性を知ることができます。以下はNEUMANN TLM 103のスペックから、dBが出てくるスペックのみ抜粋しました。

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Neumann
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感度(1 kHz/1 kΩ)23 mV/Pa = –32.5 dBV ± 1 dB
等価ノイズレベル(A-weighted)7 dB-A
最大耐入力(THD 0.5%)138 dB SPL
S/N比(A-weighted, 基準値:94 dB SPL)87 dB
最大出力レベル13 dBu
NEUMANN TLM 103のスペック

これだけでも相当混乱しますね(苦笑)

ひとつずつ見てみましょう。先にスペックの関係性を図にしておきますので、見ながら読み進めてみてください。

dB SPL/dBV/mV/Pa/ダイナミックレンジ/SN比/等価ノイズ マイクのスペックの関係性

感度(Sensitivity)

感度というのはマイクから出てくる信号の大きさを示した数値で、同じ音を入力した時に大きい数値のマイクの方が大きい信号として出力されます。大きい方が良いというものでもないのですが、実際は音が大きい方が扱いやすいことが多いです。SHURE SM7B等は音が小さいので使えるマイクプリが限定されます。

TLM 103は「-32.5dBV」と表記されていて、先述の通りdBなので相対値です。dBVというのは、「電圧が1Vの時を0dBとする」というルールなので、1Vの1/100である0.01Vは-40dBと表記されます。一方で「23mV/Pa」というのは感度を表す絶対値。mV/Paというのは1パスカルの圧力で音を入れた時の出力電圧を示す単位です。

※1Paの圧力で〜というのはマイクの計測の基本なので、色々なところで出てきます

イコールで結ばれている通り、23 mV/Pa と –32.5 dBV は同じ意味なのです。

等価ノイズレベル(Equivalent Noise Level)

難しい言い方をしていますが、ノイズの量です。少ない方がノイズが少なく、15dB-A以下なら超優秀と考えて良いでしょう。「-A」というのはA-weighted(A特性)という意味で、計測時のフィルター特性のことです。つまり「dB何?」は別の話題です。

等価ノイズでは人間が聞き取れるもっとも小さい音である20μPa(マイクロパスカル)を基準(=0dB SPL)に対して、機器のノイズがどの程度かということを数値化しています。TLM 103では、人間が聞き取れる最も小さい音に対して7dB大きい音量のノイズがある、ということです。従って、等価ノイズの単位はdB SPLであると考えて差し支えないでしょう。

最大耐入力(Maximum Input Level)

どの程度大きな音量に耐えられるかを示す値が最大耐入力。ここは書かれている通りdB SPLという単位が使われています。TLM 103では、人間が聞き取れる最も小さい音に対して138dB大きい音量まで耐えられる、ということです。

※正確には、THD(Total Harmonic Distortion=全高調波歪み)という歪が0.5%に達するのが138dB SPLという意味で、138dBの時に歪みが無いという意味ではありません。

S/N比(S/N Ratio)

S/N比は正確にはSound Noise比と書きます。つまり、扱える音と機器のノイズの音量差を示しており、数値が大きい方がノイズが少なくなります。ノイズを基準とした時に基準の音がノイズの何倍かをdBで表しています。S/N比60dBなら、基準信号はノイズの1,000倍の音量ということです。

お気づきになった方もいると思いますが、先程の等価ノイズレベルと同じように、ノイズの少なさを示す指標なのです。昔はS/N比で示されていましたが、近年になって等価ノイズレベルを表記することが多くなったように思います。マイク計測の基準値(1Pa=94dB SPL)に対して、ノイズが7dB SPL。基準値(Sound)から等価ノイズ(Noise)を引けばS/N比が算出されます。

94dB SPL(Sound) – 7 dB SPL(Noise)=87dB(S/N Ratio)

SNを向上させるには感度を上げる(94dB SPLの時の出力電圧を大きくする)か、等価ノイズレベルを下げることが必要になります。ここで計算したように、単純な足し算・引き算で計算できるのがdBを使った時の利点です。

最大出力レベル(Maximun Output Level)

また新しい単位が出てきました。dBuです。dBuは音響機器において最もよく使われる単位で、dBuにおける0dBは0.775Vです。

あれ?似たようなものがさっきありましたね。dBVです。

dBuは別の書き方でdBvと書き、ディービースモールブイと読みます。dBVはディービーラージブイ。どう見ても混同するので(笑)、最近はdBvと表記せずdBuと書くことが多くなりました

このように、dBVとdBu(dBv)はどちらも電圧を基準としたdB表記で、基準値が異なるのです。

  • dBV:0dBは1V
  • dBv:0dBは0.775V、近年はdBvではなくdBuと表記する

したがって、最大出力レベルはこのマイクから出力される最大の電圧が13 dBuということになります。0.775Vよりも13dB大きいということです。

最後に総まとめとして、13dBuを換算してみました。

13 dBu = 13dBv = 10.79 dBV = 3.46V

以上のように、dBは色々ありますが、どれもなにかの基準値に対しての大小を表しているということ覚えておいてください。

概要を覚えた上で、普段は気にせず、大小を表す単位として使っていけば良いでしょう。

dBとV(電圧)の換算は以下のサイトが便利です。

https://www.extron.co.jp/calculators/db-to-volts/?tab=tools

スペックが読めるようになったら、他のマイクのスペックも見てみましょう。面白いですよ。以下は筆者も愛用しているLEWITT LCT840のスペックです。

感度23 mV/Pa, -33 dBV/Pa
等価ノイズレベル9 dB (A)
最大耐音圧 SPL (0.5 % THD)139 dBSPL, 0 dB pre-attenuation
S/N比85 dB (A)
ダイナミック・レンジ130 dB (A)

LCT840における(A)は先述の「A-weightd(A特性)」のことです。

ダイナミックレンジ

また似たようなのが出てきました。ダイナミックレンジはざっくり言えばほぼS/N比と同じことを言っています。最も小さい音から最も大きい音までの音量差のことなのですが、事実上は機器のノイズ(=等価ノイズ)から最大耐音圧までの音量差です。S/N比の場合はノイズと基準音ですが、ダイナミックレンジの場合はノイズと最大耐音圧の差ということになります。

S/N比と同じように大きいほうが良いとされています。

139dB SPL(最大耐音圧) – 9dB(等価ノイズ)= 130dB (ダイナミックレンジ)

対象を基準信号(94dB SPL)にすればS/N比となります。

94dB SPL(マイク計測の基準値) – 9dB(等価ノイズ)= 85dB (S/N比)

dB FSって何?

最後に残ったのはdB FSです。dB FSのFSはFull Scaleのこと。この単位でいうフルスケールは、デジタル領域における最大値=0dBのことを指しています。したがって、デジタル機器における最大値を0dBとした単位です。

DAWを含むデジタル機器上でのdBはdB FSである、というくらいに覚えておけば良いでしょう。

実際のところはすごくややこしい話で、dB FSにおける基準値は何かということです。dB FSの基準値になるのは他のdBなのです。例えばアナログの出力端子の最大出力レベルが-18dBuのデジタル機器における0dB FSは-18dBuということになります。機器において扱うことができる最大音量が0dB FSだと思っておけば良いでしょう。

ちなみに、最大出力レベルは機器によって変わります。ややこしい、、、苦笑。


以上、dBについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。

結論的には、音の大きさを表す便利な単位くらいに捉えてもらえれば良いです。敬遠せずに「デシベル」を使ってみてください。使うこと、敬遠しないことが最も重要です。

おわかりの通り、dBを知っているからといっていい音が作れるようになるというものではありません。しかし、いざ思い通りに音が作れない時、大きな道標となってくれるでしょう。歪みは録音において避けるべきものですが、どこで何故歪んでいるのか、電気の知識があれば解決できる場合は多々存在します。

音は空気であり、電気、そして記憶です。電気の状態の音を理解するために電気の知識は切ってもきれないものですから、敬遠せずに少しでも良いので理解するように努めてみましょう。面白くなってきますよ(^O^)/

参考サイト

面白いので興味がある人はぜひ読んでみてください。

三研マイクロホン
https://sanken-mic.com/qanda/index.cfm/10.64

横浜マイクロホン マイクのS/N
https://note.com/yokohama_mic/n/n0a43cabb1cda

DPA
https://www.hibino-intersound.co.jp/dpa_microphones/5407.html