叩いてみたの作り方 生ドラムの音作りその2 イコライザーとコンプレッサー 埋もれない生ドラム [難しさ:やさしい vol.061] GarageBand/ガレバン/叩いてみた

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生ドラムの音作りをミキシング初心者〜中級者向けに解説していくシリーズの第2回。第2回では少し音をカッコよくするテクニックをお伝えします。

第1回を読んでいない人はぜひ第1回からお読みください。

今回の記事と連動した動画もあります。

動画で使っているドラムカラオケはアルファノートさんから発売されている森谷先生の教則本「動画でドラムひとり遊び! ドラマーが夢中で叩きたくなる人気曲レシピ【改訂版】」に収録されています。この本に収録されているドラムカラオケはYouTubeの叩いてみたにそのまま使える音源なので、ぜひ手に入れてみてください。

なお、全曲筆者がドラムレコーディング、ミキシングをさせていただきました。

また、動画のドラム音源は森谷先生のドラムスクール主催の公開レコーディングセミナーで収録されたものです。筆者が講師を努め、レコーディングさせていただきました。

収録したドラム音源は権利の関係で配布ができませんので、ご自身で収録されたドラム音源を使って挑戦してみてください。

イコライザーでクリアな音にしてみよう

市販の音源でよく聞くドラムの音はとてもクリアな音に感じることが多いでしょう。前回不要な音をカットしてみましたが、今回は一歩進んで、イコライザーをブーストする方向に使ってクリアな音を作る方法を学んでみましょう。

トップのトラックをきらびやかにする

音を操作する、音作りをする場合はまずトップのトラックから操作してみましょう。トップのトラックにはすべての音が含まれているため、すべてのパーツの音に影響を与えます。まずはトップ、足りなければ個別のトラックを操作してみてください。

トップのトラックを選択し、[スマートコントロール(左上のつまみ)>トラック>EQ]と選択し、紫のポイントを掴んで上げてみましょう(ブーストする)。周波数は下の[Frequency]で確認できますが、5000Hz以上でブーストしてみましょう。画像では5800Hz=5.8kHzとなっています。

ブーストする量は、シンバルなどがきらびやかに聞こえると感じるところまで上げてみます。画像では+8.0dBとなっています。この数値は録れている音によって大きく異なりますので、聞こえている感覚を大事に操作してみてください。

音の変化がわかりにくければ、上記画像のようにトップのトラックだけソロ([ヘッドホンマーク]をクリック)にして聞いてみましょう。

スネアの抜けを良くする

続いて同様にスネアの高域をブーストしてみましょう。スネアがよく聞こえることを「抜けが良い」と表現します。

トップのマイクと同様にイコライザーで調整しますが、トップよりも低めの周波数で設定してみましょう。画像では2800Hz=2.8kHzに設定しています。

スネアの場合は、音の輪郭やアタック音がシンバル等よりも低めの高さに存在していますので、トップのマイクよりも低い周波数に設定しました。

スネアの輪郭がくっきりすると感じるところまでブーストしてみましょう。

また、イコライザー左下の[Analyzer]というボタンを押すと、イコライザーの背景に音の分布が表示されます。これはどの高さにどのくらい音があるかを示すもので、スペクトラム・アナライザーと呼ばれています。スペクトラム・アナライザーについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

バスドラムのアタック音を聞こえるようにする

最後に、バスドラムのアタック音をイコライザーで目立たせてみましょう。

方法はトップ、スネア同様にイコライザーで調整します。

ご覧頂けるように、スネアのイコライザーと同じ設定にしてみました。この帯域をブーストすることでドラム類の皮(ヘッド)の輪郭が際立ってきます。

トップ、スネア、バスドラムの3つの高域を調整したら、全体で再生しながらそれぞれのブースト量を調整しましょう。輪郭がはっきり聞こえないようならさらにブースト、目立ちすぎて不自然に感じたら下げましょう。

なお、上記で使用した「選択した周波数から高い音をすべてブーストするイコライザー」をシェルビング・イコライザーと呼びます。今回使用したものは高い音だけ操作するのでハイ・シェルビング・イコライザー。低域用のものはロー・シェルビング・イコライザーと呼びます。

イコライザーについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

音の太さをコントロールする

続いて、スネアとバスドラムの太さをコントロールして迫力を出してみましょう。同様にイコライザーを使用しますが、シェルビング・イコライザーではなく、ピーキング・イコライザーというタイプを使用します。

バスドラムの鳴りを大きくする

バスドラムの音の成分は「胴鳴り」と「アタック」の2つに分けて考えることができます。先程ブーストしたのはアタック。次は胴鳴りをブーストしてみましょう。

同様にイコライザーを表示させ、黄色のポイントを掴んでブーストします。シェルビング・イコライザーと異なり、ポイントの周囲のみがブーストされます。これがピーキング・イコライザーです。ピーキングはPeakingと綴ります。イコライザーの形がPeakの形ということです。ちなみに、シェルビングはShelving、棚(Shelf)という意味です。

周波数を決めるのが難しいと思いますが、[Analyzer]をクリックしてスペクトラム・アナライザーを表示し、山が大きくなっている部分(赤枠)をブーストしてみてください。バスドラムの「ボウッ」という鳴りの部分がよく聞こえるようになってきます。

ここでは62Hzという周波数になっています。このくらいの低域は小さなスピーカーでは聞こえにくい場合があるので、ヘッドホンを使って確認すると良いでしょう。

スネアの鳴りをブーストする

続いて同様にスネアの鳴りをブーストしましょう。バスドラムと同じように調整します。

方法はバスドラムと全く同じです。ここでは170Hzという周波数に設定しました。

続いて、ピーキング・イコライザーの調整幅を変更してみましょう。

イコライザー右下の[Q]というセクションをクリックしたまま上下に動かしてみてください。イコライザーの表示が変わり、ポイントの周囲をどの程度の幅で調整するかを変更できます。この設定値を[Q]と呼び、Qが広い・Qが狭いなどと表現します。

Qが広い方が自然な音になりますので、特にブースト時はやや広めのQ(Qが1.0以下)に設定しておくと良いでしょう。

最後に全体で聞いてみて、ブースト量を調整しましょう。

不要音のカットにも使える

ピーキング・イコライザーは不要な音のカットにも使うことができます。

今回の素材音源は音が良すぎてカットする場所が無いのですが(苦笑)、特にスネアにおいて不快な響きが含まれてしまう場合があります。このような場合は、ピーキング・イコライザーをカットする方向に使ってみてください。

Qを狭くした状態でブーストし、周波数を上下に動かして不快な響きが集まっている場所を探します。

不快に感じる周波数を特定できたら、一気にカットしましょう。ピンポイントでのカットを行う場合、Qは狭いままでOKです。

イコライジングで重要なこと

このように、イコライザーで特定の帯域をコントロールする、調整することをイコライジングと呼びます。

イコライジングにおいて重要なことは、目的を持ったイコライジングを行うことです。

  • バスドラムの鳴りを聞こえるように
  • スネアの輪郭をよく聞こえるように
  • 不快な響きを目立たないように

など、それぞれの操作に目的をもたせましょう。難しい話をすれば、イコライザーはたくさんかければかけるほど音質が劣化していきます。最低限のイコライジングで目的を果たすことが大事なので、無闇矢鱈でイコライジングするのはよくありません。

〜を〜したい

という目的を持ってイコライジングしてみましょう。

コンプレッサーを使ってみる

最後に、ミキシングで誰もが躓くコンプレッサーというものを使ってみましょう。

コンプレッサーは音の大小の幅(=ダイナミックレンジと言います)を圧縮するエフェクターなのですが、音を圧縮することで締まりのある、パンチのある音にすることができます。原理を簡単に説明してみます。

コンプレッサーは何をしているのか

コンプレッサーは、設定値(スレッショルド)より大きい音が入力された際に、自動的に音を小さくします。

その後全体の音量を上げることで、大きい音から小さい音の幅が小さくなり、結果的には密度の高い音が得られます。ドラムにおいては押し出し感が強い、埋もれにくい音になります。POPS楽曲のドラムにおいては必須のエフェクトといっても過言ではないでしょう。

コンプレッサーの基本動作
コンプレッサーの基本動作

様々なパラメーターがあり動作が難しいため一朝一夕に理解できるものではありません。今回は、GarageBandの機能を使ってコンプレッサーの効果を体感してみましょう。

アルミ箔を丸めて叩いていくとアルミ球になるのですが、同じようなものかもしれません。アルミ箔とアルミ球、どちらもアルミですが異なるものになりますよね。圧縮していくことで強くなり、時には異なる音に変わっていくのです。

バスドラムにコンプレッサーをかける

バスドラムのトラックを選択し、[スマートコントロール>トラック>Controls]と選択します。続いてプラグインスロットの空いている場所(赤枠)をクリックしましょう。

続いて表示されるエフェクト群の中から、[Dynamics>Compressor]を選択します。

以下のような画面になります。

コンプレッサーというエフェクトを起動したのですが、操作画面がふたつ表れており、緑枠の方が本体で、赤枠の方がかんたん表示、のようなものです。相互に連動しています。

個々のパラメーターは難しいので、プリセットを使ってみましょう。プリセットはメーカー側で用途にあわせた設定を記憶してあるものです。緑枠のコンプレッサー本体の方で、[デフォルト」と書かれた場所をクリックしてプルダウンメニューを表示し、[01 Drums>Rock Kick]を選んでください。

選択すると各パラメーターが自動的にバスドラムに適した設定になります。続いて下側(赤枠)の[COMPRESSOR THRS]というつまみを動かしてみましょう。

つまみを左に回すとコンプレッサーが強くかかるようになります。動かしてみて、バスドラムの音が適度に締まった感じになる場所を探してください。

なお、[COMPRESSOR THRS]のつまみは、本体側の[Compressor Threshold]というパラメーターと連動しています。

設定できたら全体で聞いてみましょう。バスドラムの音が埋もれにくくなっているのがわかると思います。

スネアのコンプレッサーをかける

続いてはスネアにもかけてみましょう。バスドラムと同じ手順で使っていきますが、プリセットでは[01 Drums>Rock Snare Top]を選んでください。

バスドラムとスネアドラムはドラムサウンドの肝になるパーツですので、コンプレッサーによって埋もれにくくなることで、曲全体がタイトになります。難しいエフェクトですが、使いこなせることでサウンドメイキングの幅が大きく広がります。

詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

各トラックのボリュームを調整する

イコライザー、コンプレッサーでの調整が終わったら、改めて各トラックのボリュームを調整しましょう。イコライザーやコンプレッサーを使うことで聞こえ方が変わってくるため、以前よりも小さな音量でもドラムがしっかり聞こえるようになっているはずです。マスターの出力メーターに注視しながら整えましょう。

音量調整をしたら書き出しを行い、前回の音源と比べてみてください。


ミキシングでは音作りが進むにつれて音の聞こえ方がどんどん変わってきます。何度も音量を調整して、「良い意味で妥協できるバランス」を見つけましょう。スピーカー、スマホ、パソコン、すべての端末で完全に納得できる音というのはそもそも難しいのです。しかし音作りを行うことで、何で聞いても「良い意味で妥協できる」範囲に収まるようになってきます。

次回はタムのトラックなどを追加して仕上げを行います。次の記事もぜひご覧ください。

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