ディストーションギターの音作り ギターEQ3つのポイント [難しさ:やさしい vol.056] ダブリング/イコライジング/コンプレッサー/リアンプ

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今回はエレキギターのバッキングの音作りについて解説していきます。

エレキギターの音は数多のバリエーションがありますが、今回は激しいディストーションのかかったパワーコード的アプローチのエレキギター・バッキングサウンドについての解説です。

音作りに関しては高度、高価なプラグインは不要な手法ですので、Cubase等のDAW付属エフェクトはもちろんのこと、GarageBand等無料DAWでも参考になる内容だと思います。

動画版はこちら↓

記事で使用しているデータ

以下のサイトでマルチトラックデータを販売しています。データ内のギターカラオケとギタートラックのデータを用いて解説しています。

https://soundworksk.thebase.in/items/59372493

曲名:Re:GO
楽曲提供:キニナルコ(みとらぁさま @mitora0809 )
https://twitter.com/mitora

https://youtu.be/6JmWygFyu8o

https://www.e-onkyo.com/music/album/tcj859756546979/

ギターの音作り最大のコツ

音作りをせずにすむ音=いい音を作ってから録る

ミキシングにおけるギターの音作り、最大のコツはあまり音をいじらないということです。

つまりは、レコーディングの時にいい音を作って録音してしまうこと。これが重要です。

ギターはギターらしさが何より大事

最近は打ち込み音源のクオリティが上がってきたため、生演奏と打ち込みの区別がつきにくくなってきました。音の差が少なくなってくると、生演奏の良さは人間らしさ、ギターらしさに集約されます。

ライン録音で音作りせずに録音しDAW側でゆっくり録音するのも良いのですが、コンパクト・エフェクターやギターアンプを駆使して良い音を作ってから録音するように心がけましょう。

多くのギタリストはこの方がテンションが上がり、良い演奏ができるのではないかと思います。また、音作りをしてから録音した方が独自の音を生み出しやすく、ギターらしさが大きく表れると筆者は考えています。

保険をかける-リアンプ

とは言うものの、音作りを決めきれない場合は不安が残りますね。

不安な場合は、ダイレクトボックス等でギター信号を分岐し、エフェクトがかかる前のラインの音と、エフェクターやギターアンプを経由した音の2つを録音しておきましょう。ラインの音を残しておけば万が一後で音を変えたくなった場合に適切な音を作ることが可能になります。

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ラインの音を録音し、録音後にギターアンプに戻して音作りをすることをリアンプ(Re-amp)と呼びます。リアンプの際はオーディオインターフェースとギターアンプ間のインピーダンスマッチング(電気的な相性みたいなもの)を取る必要があり、リアンプボックスという専用の機器があると便利です。

ギターのリアンプ

かけない方が良いエフェクト-空間系

端的に言えば歪みなどのベーシックな音作りはコンパクト・エフェクターやアンプで作ってしまって録音すると良いでしょう。

一方でディレイやリバーブなどの空間系は録音する場合にかけない方が良いとされています。

アナログリバーブやアナログディレイ等特殊かつ独特の音がある空間系を除き、ギターの録音においては空間系エフェクトを外しておいたほうが良いです。空間系エフェクトはかかり具合を細かく調整する必要があること、楽曲全体の響きと合わせる必要があることが主な理由。後から調整できないと困るので、あとでかけましょうということです。


結論的にベストな録音方法は、ディストーションなどのベーシックな音作りはコンパクトエフェクターやアンプで行い、マイクで録音。保険としてラインの音を録音しておくということになります。経験則ですが、アンプで作った音は情報量が多く存在感があり、シミュレーターで作った音で同じ存在感、そしてギターらしさが出てきません。アンプシミュレーターは保険と考え、頑張ってアンプで音作りをしてみると一味違った作品が出来上がるでしょう。

ダブリング・ギターのパンニング

さて、良い音で録音できたらミキシングをしてみましょう。

まずは本記事の課題曲をインポートしましょう。販売しているミキシング講座用のマルチトラックデータの中から以下のトラックをDAWにインポートします。

  • ReGo_ギターカラオケ
  • ReGo_Gt1L
  • ReGo_Gt1R
  • ReGo_Gt2L
  • ReGo_Gt2R

ご自身のデータでチャレンジする場合は、同じ演奏が複数回録音された「ダブリング」状態の音源があると好ましいです。

インポートすると以下のようになります。ステレオのカラオケ(ギターカラオケ)とギターが4本です。

PANとボリュームで整える

まずはボリュームとパンだけでバランスをとってみましょう

カラオケは-6dB程度に、各ギターのトラックは一旦フェーダーを大きく下げて、2本ずつ調整します。

波形に表されている通り、緑は2本せ1セット、オレンジも2本で1セット。同じ演奏を2回録音したダブリング状態のギターです。真ん中から出力するとボーカルとぶつかって聞きにくくなりますので、Gt1/Gt2ともにLのトラックは左へ、Rのトラックは右へPANを振ってみましょう

また、音量(フェーダー位置)はカラオケ-6dBを基準にすると-16dB程度が適当です。

ダブリングにおいてはPANを左右に振り分けることで簡単に広がりのある音を作ることができます

PAN 100%以外を使いこなす

PANというのは100%にしなければならないわけではありません。むしろPAN100%以外の位置を使いこなせるかがミキシング上達の鍵でもあります。

以下のようにPANを調整してみましょう。

Gt1L:80%/Gt1R:80%
Gt2L:40%/Gt2R:40%

Gt1/Gt2のPANをずらすことで両方のギターが聞こえるようになってきます。ギターは本数が多くなることが多いので、PAN幅をうまく使い切って配置することがコツです。

また、サビではPAN100%に、サビ以外では60-70%程度など、曲の展開にあわせてPAN幅を調整することも大きな効果があります。課題曲ではGt1はサビ中心、Gt2はその他中心に分けられていますので、上記のパンニングをすると勝手に曲が盛り上がって聞こえてきます。

PAN 80%の意味

PANは100%が基本と思われていますが、PAN100%という位置はヘッドホンで聞いたときに耳の後ろくらいの位置になってしまいます

シンセサイザー等ステレオが基本の場合は良いのですが、ギターのダブリング等モノラルを複数本用意してステレオ化する場合、PAN100%だと後ろに行き過ぎてしまいます。

PAN80%程度にするとヘッドホンやイヤホンで聞いても後ろに行きすぎず、スピーカーで聞いても前から壁のように聞こえます

ディストーションギターのイコライジング

先述の通り基本的には良い音になっている想定です。したがってイコライジングによる過度な音作りはしなくても良いのです。音作りというよりは曲にあわせた音の調整だと考えるほうが良いでしょう。3つに分けて考えてみましょう。

不要帯域のカット

不要な帯域が含まれる場合はカットしましょう。

アナライザー付きのイコライザーを使うと楽です。聞いていて音溜まりを感じる帯域、またはアナライザーで特に膨らんでいる帯域があればカットしましょう。ズンズンと響くギターサウンドを求める場合、低域はカットしすぎないように注意が必要です。LCF(ローカットフィルター)のカーブや周波数を調整して、必要な低域を残しつつ不要な低域をカットできる設定を見つけましょう。

エッジのコントロール

続いてはギターをどの程度目立たせるかを決定づける「エッジ」の部分を調整します。

エッジを強く出すとギター色の強いミキシングになりますし、エッジをおとなしくするとギター入るけど目立たない、コード感を支える縁の下の力持ち的な位置づけにすることができます。

帯域としては4〜5kHzあたりをゆるいQ(広いQ)に設定し、数dBブースト/カットします。

ディストーションギターとしては非常に気持ちの良い帯域なので、ギターの音だけ聞いているとブーストしたくなります。必ず全体で混ぜて、楽曲の方向性にあわせてブースト/カットしましょう。

低域の量を調整する

最後に曲やアレンジにあわせて低域の量をコントロールしましょう。

ズンズン言わせたい場合は低域をブースト。しかし当然ながらギターで低域を出しすぎると他の楽器の低域が見えにくくなりますので、楽曲において誰が低域を担当するのかを明確にして客観的に調整しましょう。ギターだけ聞いていると気持ちよくなってしまいどんどん低域を出してしまいますので、客観的な調整ができるかどうかが重要です。

帯域としては180Hz以下くらいをシェルビングでブースト/カットしてみましょう。


調整ができたら再度フェーダーを操作して音量を適正化しましょう。

目立つ方向に調整した場合は大きく聞こえているはずですし、逆に目立たない方向に調整した場合は音量感が不足しているはずです。

その他のコツ

ディストーションギターへのコンプレッサー

結論的には、ディストーションギターに対しては音量調整をするコンプレッサーはほぼ必要ありません

激しいディストーションがかかっている段階で音のピークは潰れており(=歪んでいる)、音の大小は小さくなっているためです。ディストーションギターはもともと音量差の小さい楽器(音)なのです。したがって、コンプレッサーを使う場合は音色変化を狙ったコンプレッサーを使うと考えましょう。

セクションごとの音量調整はフェーダー操作や波形の大きさ(クリップゲイン)調整で行う方が適切。コンプレッサーでの自動音量調整には期待しないようにコンプレッサーを使いましょう。

Cubase純正コンプレッサーの中では以下のtubecompressor等、音色変化が大きいプラグインを使う方が面白い結果が得られます。

ビンテージ系イコライザーでさらに目立たせる

エッジをアグレッシブに目立たせたい、ギターサウンドを前面に押し出した音作りにしたい場合は、ビンテージ系のイコライザープラグインを使用すると良いでしょう。筆者がよくギターに使用するのはWaves VEQ4というイコライザープラグインです。

イコライザーの効き具合、音の変化が良い意味で「エグい」ので、ギターのエッジを目立たせたい時によく合います。ここまでで行ったイコライジングのうち、ブースト方向のイコライザーを置き換えてみてください。

プラグインのコピー・ペーストやグループを活用する

ダブリングギターの場合は基本的に左右のギターで同じエフェクトをかけるようにします。

したがってプラグインのコピー・ペーストなどを活用することでスピードアップをしながらミスのない確実な音作りができます。

もしくは同じ演奏のギターごとにグループチャンネルを設けて音作りをすると効率的です。この場合はグループチャンネル側でステレオのプラグインを用いて音作りをします。


さて、ディストーションギターの音作りを解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

ディストーションギターの音作りの要点はイコライザーに集約されるでしょう。特にエッジと低域のイコライジング。ブーストするのか、カットするのか。この選択でどのようなサウンド、もといどのような曲にも演出することができます。

楽曲におけるギターの役割を見極めた上で不必要な音作りをしないようにイコライジング。

ぜひチャレンジしてみてください。

ディストーションギターの音作り ギターEQ3つのポイント [難しさ:やさしい vol.056] ダブリング/イコライジング/コンプレッサー/リアンプ” に対して2件のコメントがあります。

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