リバーブ集中講座4 色々なリバーブで響きを作ってみる [難しさ:ふつう vol.055] おすすめリバーブの使い方 H-Reverb, MCharmVerb, LX480, Oxford Reverb

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リバーブ集中講座の第4回、最終回です。

第3回まででリバーブの理解が深まってきたものと思いますが、いかがでしょうか。第4回は、第3回までの知識を背景にいろいろなリバーブエフェクトを見てみる回です。少し知識がつくだけで色々なリバーブが使いこなせるようになってきます。ガレバンのリバーブから筆者お勧めのリバーブまで、5つのリバーブで音を作ってみます。

第3回までお読みになった上で読んでみてください。

※今回は無料のOld Skool Verbを使う内容ではありません。

動画版はこちら↓

シリーズ記事

GaregeBand純正リバーブ

GarageBand(通称ガレバン)にも「マスターリバーブ」というリバーブが搭載されています。形式としてはセンドリターン型となっており。各トラックからセンド量を決めることができます。ただし、エフェクト(リバーブ)の種類を変更することはできません

パラメーターを見てみましょう。

  • [TIME]:リバーブタイムです。
  • [COLOR]:イコライザーと同様にリバーブ音の明るさ(=特性)を変えることができます。
  • [VOLUME]:リバーブの音量です。Cubase FXチャンネルで言うところのFXチャンネルのフェーダーと同じ役割です。

非常にシンプルな構成で、この講座でお伝えしてきた「わからなければリバーブタイムだけ調整し、イコライザーでリバーブ音を作る」という内容そのものです。

プリセット機能は上記3つのパラメーターの組み合わせが変化するだけでリバーブ自体に変化はありませんので、この講座を学んだ方であれば自分でパラメーターを操作したほうが良いでしょう。プリセットの中では[Bright Long Verb]のリバーブタイムを調整して使うのが良さそうです。

なお、DRY/WETを調整するパラメーターは存在せず、常にWET100%(リバーブ音のみ)になっています。


続いてはCubaseで聞いてみましょう。

GarageBandは大変素晴らしいソフトですが、信号経路設定の自由度が低いこと、センドリターンで使える空間系エフェクトが純正のみであることはミキシングにおいては大きな弱点です。純正リバーブで満足できなくなってきたらDAW買い替えを検討してみても良いでしょう。

※GaregaBandでお気に入りのリバーブを使うには

センドリターン方式では使えませんが、インサートでは使用できます。歌ってみたMIXなど、リバーブをかける対象が少ない場合はインサート方式でもあまり問題がでません。リバーブをかけたいトラックにお気に入りのリバーブプラグインを入れて、DRY/WETバランスを調整して使いましょう。

Melda Production MCharmVerb

なんと無料で使える高品位リバーブエフェクトです。VST/AAX/AU形式に対応していますので、GarageBand, Cubase, ProToolsなど主要DAWで使用できます。ダウンロードリンク、インストール方法は以下の記事を参照してください。

パラメーターは以下のようになっています。

パラメーターざっくり解説

  • [DRY/WET]:センドリターン形式で使用する場合、100%に設定
  • [LENGTH(レングス)]:リバーブタイムです。
  • [DAMP LOW]/[DAMP HIGH]:ダンピングです。イコライザーは非搭載ですが、実質的にはDAMP LOW/HIGHがイコライザーとして使えます。[Enable(有効)]を点灯させると有効になります。

おすすめプリセット

プリセットは先程の画像で緑の四角の部分をクリックするとプリセット選択ウインドウが表示されます。

わかりやすくカテゴリ分けされていますので任意のプリセットを選んで使用します。

ボーカル使用時のお勧めは以下の2つ。ホールやルームというよくある名前ではないのが特徴です。

  • [Anchored angle]:わかりやすい音色でロングリバーブとして使いやすい。
  • [Frequent lamp]:ショートリバーブに最適。
  • [Simulating air]:[Frequent lamp]でうるさい時はこちらのプリセットがお勧め。

おすすめの使い方

どのパラメーターも効きがよく、動作も軽いのが特徴。ややデジタル臭くリアリティに欠ける音ではありますが、パートが多い曲では混ぜてしまえばわからないでしょう。かなり使いやすいリバーブです。

先程の[Anchored angle]プリセットにて、初期反射音の大きさ(= Pre Delay [Gain])と、DAMP HIGHの[GAIN]を調整して使用するのがお勧めです。Pre Delay Gainを+5dB程度に設定するとわかりやすい初期反射音が聞こえてきます。かんたんに初期反射音の雰囲気を調整でき、初期反射音を使った音作りがかんたんに体験できるでしょう。

なお、他のショートリバーブと組み合わせて使う場合は、Pre Delay Gainを下げると扱いやすくなります。

Waves H-Reverb

Wavesでは数多くリバーブエフェクトをリリースしていますが、ひとつだけお勧めするとしたらH-Reverbでしょう。

非常に多機能でありながら、簡易表示にすれば初心者でも使いやすいという素晴らしいユーザーインターフェースを持っています。

パラメーターざっくり解説

  • [REVERB TIME]:リバーブタイムです。数字のセクションで上下させても良いですが、上部のグラフィックの部分を操作してリバーブタイムを可変することもできます。
  • [Dry/Wet]:WET100%の確認はここで。Wavesのリバーブは多くのプリセットで初期値が100%になっていますので、そのまま使えます。

右下の[Expand]をクリックすると隠れていたパラメーターが出てきます。が、まずはプリセット選択→リバーブタイム調整だけでもかなり良い音が作れるでしょう。そのくらいもともとのリバーブが良いです。

おすすめプリセット

無数のプリセットがあり聞くだけでも大変ですが、比較的最初の方にある[Medium Hall]が扱いやすくお勧めです。

  • [Medium Hall]:万能なホールリバーブ。キレイな音で扱いやすい。
  • [Large Plate]:プレートリバーブのプリセットで、他のリバーブエフェクトのプレートリバーブより使いやすいのが特徴です。

おすすめの使い方

H-Reverbは凝ったリバーブやエフェクティブなリバーブにも対応できる懐の広いリバーブエフェクト。全部の機能やパラメーターを使おうとすると混乱しますので、パラメーターを絞って設定していくと理解しやすいでしょう。以下に操作してリアクションがわかりやすい、お勧めパラメーターを紹介します。

  • 残響(リバーブテール)のカーブを変える:緑丸の部分を操作します。残響のカーブを変えることができるので、比例減少するカーブではなく、上の画像のようなカーブにするとよく聞こえつつ曲を濁らせないリバーブが作れます。
  • イコライザーで低域をカットする:緑四角の枠の部分でイコライザーを操作できます。もちろんH-Reverb後段にイコライザーを用意してもOKです。
  • 初期反射音の音量を調整する:ピンクの四角枠のパラメーター、[ER/Tail]を操作します。ERはEraly Reflection=初期反射音、Tailは残響のこと。つまり初期反射音と残響のバランスを可変できます。初期反射音を下げると扱いやすくなるでしょう。
  • それ以外の反射音をON/OFFする:ピンクの丸のパラメーター。[OUTPUT ECHOES]のセクションをOFFにしてみましょう。明瞭な反射音が減るので扱いやすくなります。

上記のパラメーターを操作することでかなりのリバーブサウンドを作り出すことができるでしょう。

H-Reverbは使いやすく、音がよく、発展性がある素晴らしいエフェクトです。リバーブを1台だけ勧めるとしたらH-Reverbを勧めます。H-Reverbは単品購入も可能でなほか、H-Seriesバンドルに入っています。

RELAB DEVELOPMENT LX480 Essential

リバーブを語る上では紹介だけでもしておきたいルックスを持つLX480 Essential。何を隠そうデジタルリバーブの名機Lexicon 480Lを模したリバーブエフェクトです。サウンドが実機と同じかどうかはさておき(苦笑)、使えるかどうかという視点では「使える」リバーブエフェクト。ボーカルを派手にしたい時に使えます。パラメーターを見てみましょう。

ざっくりパラメーター解説

  • RTM:リバーブタイムです。
  • MIX:Dry/Wetのコントロールです。

プリセットは下の赤い枠の部分をクリックして選択します。

ちなみにスライダーやボタンなどのユーザーインターフェースは、実機480Lを模したものです。

おすすめプリセット

  • [Small Vocal Hall]:長いリバーブよりも短いリバーブの方がLX480の良さが出るような気がします。
  • [Bright Plate]:480に真骨頂とも言えるバリッとしたプレートリバーブサウンド。特徴的なのでここぞという時に使えます。

おすすめの使い方

先述の通り、短めのリバーブタイムにするとキレイに響きます。特に[Bright Plate]において、RTMを0.8秒など1秒以下に設定し、ボーカルにリバーブをかけるとなんとも言えない独特の響きが得られます。ボーカルの明るさが足りない時、派手さが足りない時に試してみてください。

RELAB LX480 Essential

Sonnox OXFORD REVERB

今回は断腸の思いで5つに絞るというコンセプトですので、最後にどうしても紹介したいリバーブをひとつ。

パラメーターはトップクラスの難しさで筆者自身未だに使いこなせていないのですが、プラグインのリバーブの中でも響きが最もキレイなリバーブだと捉えています。

ざっくりパラメーター解説

  • REVERB TIME:リバーブタイムです。
  • REVERB MIX:ER(=Early Reflection:初期反射音)とTAIL(=残響)のバランスを変えます。
  • 100%WET:このボタンを押すとWET100%になります。

ものすごい数の、しかも難解なパラメーターが並びますが、とりあえず上記のパラメーターを押さえれば良いでしょう。

おすすめプリセット

実は使うプリセットはあまり多くありません。実際に稼働率が高いのが以下2つのプリセットです。

  • [Large Vocal]:このリバーブで使うのはほぼこの[Large Vocal]のみです。そのくらい気に入っています。どんなに音量をあげても不快にならない素晴らしい響きが得られます。初期反射音が無いプリセットなので、他のリバーブエフェクトと組み合わせる場合も使いやすいです。
  • [Lex Cont Plate]:名前からも分かる通りLX480でも出てきたLexicon 480Lを模したプリセットです。LX480で派手すぎる場合にこちらの480Lシミュレーションを使用します。

おすすめの使い方

群を抜いて美しいリバーブなので、リバーブ音量が大きくても小さくてもキレイに響きます。特にリバーブ音量を小さくしても聞こえるので、長いリバーブを薄めに使うのがおすすめです。

  • リバーブ音量を下げる:小さくしても聞こえ、かつボーカルを邪魔することはありません。
  • PANを狭める:壮大でかなり広がりのあるリバーブです。曲やパート数によってはPANを狭めた方が扱いやすいでしょう。
  • イコライザーで高域を制御する:高域が美しく響くので、高域を下げることで全体のきらびやかさを調整できます。

最大のポイントは、下げても聞こえるし、上げても気持ち良いということでしょう。この2点を両立できるプラグインリバーブはほとんどありません。

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Melda Production MConvolutionEZ

最後にご紹介したいのは、サンプリングリバーブ。

これまでに紹介したリバーブはすべてデジタルリバーブと呼ばれるタイプで、ある場所での響きを予想して作り出したリバーブです。言い方は悪いですが、「それっぽい音」「それっぽい響き」です。

これに対し、実際に特定の場所で響きのデータ(IR=Impulse Response)を収録し、そのデータに基づいて収録場所と同じ響きを作り出すリバーブがサンプリングリバーブです。コンボリューションリバーブとも呼ばれます。デジタルリバーブに対比させるのであれば、理論的には「その場所の音そのもの」と言えるでしょう。

昔はかなり高価なリバーブでしたが、なんと!先程のMelda Productionの無料バンドルにも付属しています。

サンプリングリバーブは基本的にはプリセットを呼び出してそのまま使うと考えてください。MConvolutionEZの場合もほとんどパラメータがありません。気に入った響きを選び、リバーブ後段にイコライザーをかけての音質調整という使い方が良いでしょう。

筆者の場合は特にショートリバーブを作る場合にサンプリングリバーブを多用します。

おすすめプリセット

[Medium Vox]:響きにクセがなく扱いやすいIRです。このプリセットを薄くかけておき、LOW-PASS/HIGH-PASSまたはイコライザーで音質調整して使うと良いでしょう。

無敵とも思えるサンプリングリバーブですが、弱点はとにかく重いです。マシンパワーを大量に消費しますので、注意して使いましょう。また、リバーブの密度が高い、音の情報量が多いため、音が濃くなりすぎることがあります。パート数の少ない曲の方が向いているといえるでしょう。

リバーブを扱ううえで大事なこと

さて4回に渡って集中講座をお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。

少し仕組みやワークフローを理解しているだけで、色々なリバーブが使えるようになる、使える気がしてくるのではないかと思います。

初期反射と残響。そのコントロール。

そして初期反射や残響とはなんなのか。

これらがイメージできるようになれば、どんなリバーブでもそれなりに使えるようになるでしょう。

どんどん時代が進み、きっとボタンを押すだけで最適なリバーブを設定してくれるプラグインも出てくるでしょう。素晴らしいツールですが、何も知らないままに全自動化、AI化をしてしまうと、そのツールがなくなったときに何もできない人になってしまいます。他のツールで同じ音を作ることができないのです。

自分の認めたツールだけを使う孤高の職人スタイルもプロフェッショナルですが、どんな道具と環境でも自分の音を作れることもまたプロフェッショナルです。弘法筆を選ばず。仕組みを知っておけば対応力も広がり、自分で作れる音の幅も広がります。結果、全自動で音作りをするよりも楽しく感じられるのではないかと思っています。

リバーブに限らず、音の仕組みやエフェクトの仕組みに興味を持ってミキシングを楽しんでみてください。

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