イコライザーって何?ボーカルをよく聞こえる音に GarageBand 歌ってみたMIXテクニック vol.2
みなさんこんにちは。vol.2をご覧いただきありがとうございます。
前回はそもそもMIXって何?というところからMIXで大事な3つのことをお伝えしました。今回はさらに進んで、MIXの花形作業とも言える音作りにチャレンジしてみましょう!
この記事はこちらの動画と連動した内容です。ぜひ動画もごらんください(^o^)
<<https://youtu.be/eRS4slmR228>>
目次
音を整えるためのエフェクト「イコライザー」
オフボ音源やボーカル音源の音をキレイに整えていくことで聞きやすいものになります。色々な音を整える方法がありますが、任意の高さの音だけを上げたり下げたりすることで聞きやすい音に調整していく方法があり、「イコライザー(Equalizer)」というものを使用します。
ここで覚えていただきたい仕組みがひとつ。
音を調整するソフトや機器を「エフェクト(Effect)」と呼びます。Effectは英語で「効果」という意味ですが音の世界でも同様に、音を変化させる(効果を与える)ソフトや機器を総称して「エフェクト」もしくは「エフェクター(Effecter)」と呼びます。
また、あるソフトやアプリに追加することができる後付けの機能を「プラグイン(Plug-in)」と呼びます。これは音の世界に限らずこの呼び方で、画像編集ソフトの雄Photoshopでも追加するプラグインがたくさんあります。

まとめて、DAWソフトに追加する音を変化させる機能を「プラグインエフェクト」と呼びます。一般的には「プラグイン」と省略されます。
やっと本題。
このプラグインエフェクトの1種としてあるのが先述の「イコライザー」です。Equalizer、略して「EQ」と表記されます。EQは指定した高さの音だけ上げたり下げたりできるエフェクター。例えば「ボーカルの高い音だけ上げて輪郭をクリアにして聞きやすく」みたいなことができます。
やってみましょう!
イコライザーをつかってみよう
まずは前回と同様にオフボ+ボーカルのプロジェクトを開きましょう。ボーカルのトラックを選択(トラック名をクリックして反転表示)した状態で、画面下の「EQ」をクリックしましょう。

画面下の表示が異なる場合は、画面左上のつまみボタン(Smart Control)を押すと表示できます。


ここで、紫のポイントをクリックしたままグイ〜っと上に持ち上げてみましょう。

以下のようになります。この状態で再生してみましょう。

音の違いがわかりましたか?わかりにくい場合はもっと上げてみましょう。

これがイコライザーを使った音質調整です。
イコライザーの画面表示に注目。右側が棚のように持ち上がった表示になっています。このように、ある高さの音より高い音(または低い音)を全部まとめて調整するタイプのイコライザーは「シェルビングイコライザー(Shalving EQ)」といいます。Shelvingは棚という意味です。
また、上げるという動作をブースト(Boost)、下げる動作をカット(Cut)と呼びます。MIXや音の世界では英語がわかると色々と便利です。音用語だけでも勉強してみてはいかがでしょうか。
よく聞こえるということはどういうことか
イコライザーでは様々な調整ができますが、今回はボーカルがよく聞こえる状態に調整してみましょう。
この時に考える必要があるのは、「よく聞こえる」というのはどういう状態か?ということです。音作りにおいては音を分解して考える能力が必要で、分解して仕組みを考察シミュレートすることで様々な音を作っていきます。
よく聞こえるという状態をイメージしてみてください。
ひとつの要因は音量の大小です。音が大きい方がよく聞こえますよね。音量については前回解説したフェーダーで調整ができます。
もうひとつは音質の違い。距離が異なることで音質も変化し、遠くの音よりも近い音の方がよく聞こえます。音量が異なるだけでなく音質にも違いがあります。
「よく聞こえる」という状態を作るために「近い音」の特徴をボーカルトラックに取り入れてみましょう。
音の輪郭を強調して近い音を作る
まずは先程ブーストした高域についてさらに調整してみましょう。 EQの右下の表示に注目。3つの項目が確認できます。
- Frequency(単位はHz:ヘルツ)
- Gain(単位はdB:デシベル)
- Q

Frequencyは周波数という意味で、音の高さを表しています。数字が大きいほうが高い音です。
Gainは英語では利得やもうけといった意味がありますが、音の世界ではボリュームのような意味合いです。ゲインを上げるといえば音量を上げるということです(※厳密にはもう少し難しい意味合いを持ちますが省略します)。
Qは難しいので後回しにしましょう(笑)。
理解できたところで、以下のように調整してみましょう。
- Frequency:5300Hz
- Gain:+6dB
- Q:1.00

さぁいかがでしょう?ボーカルの輪郭がはっきりしたと思いませんか?
音の変化がわからない場合はGainの数字を大きくしてください。
このようにEQでよく聞こえる音の特徴を取り入れることができます。何かの音に近づけていくことが音作りの基本です。
低域を強調して近い音を作る
輪郭の次は低い音について考えてみましょう。
近くで聞こえる音は「音量が大きい」という要素のほかに「低音がよく聞こえる」という要素もあるのです。
人に怒鳴られるとびっくりしますが、これは音量だけが原因ではないのです。ドスが効いているという言葉があるように、低音がよく聞こえると迫力を感じるのです。遠くで怒鳴っているのを聞いてもそこまでドキドキしませんが、目の前だと自分が怒鳴られていなくてもびっくりしますよね。
つまり、低音をブーストすることでも近い音、迫力のある音を演出することができます。やってみましょう。
先程は高域(帯域7)のシェルビングEQを使いましたが、今度は黄色の帯域3を使ってやってみましょう。

黄色の点をぐいっと持ち上げて、以下の設定にしてみましょう。
- Frequency:330Hz
- Gain:+6.0dB
- Q:0.75
Qの設定をする時は右下のQの表示のところでマウスを操作すると調整できます。

先程のシェルビングと異なり選んだ場所の周囲だけブーストされました。このようなタイプのイコライザーを「ピーキングイコライザー(Peaking EQ)」と呼びます。Peakは山の頂上です。
音はどのように聞こえますか?やや迫力のある音になったのではないかと思います。
このようにイコライザーで特定の高さの音について音量を調整することで、さまざまな効果を作ることができます。上記の輪郭(高音)と迫力(低音)のコントロールはボーカルの音質調整に有効です。
音源が違えば音も違いますので、音によって周波数の設定値を変更する必要があります。聞きながら周波数を動かして好みの変化が得られるポイントを見つけると良いでしょう。
逆にすると、、、どうなる? 遠い音を作る
よく聞こえる音を作ってみましたが、この論理が理解できればよく聞こえない音も作ることができます。やってみましょう。
Frequencyはそのままに、Gainを下げます。それぞれ-10dBくらいに設定して聞いてみましょう。

いかがでしょう。かなり遠くの音に聞こえてきませんか?
音量を変えていないのにカラオケとボーカルの位置関係が逆転し、ボーカルの方が奥に聞こえる気がしませんか?
ボーカルが遠い、はっきりしない音になったため、聞こえ方が変わったのです。このように音質を調整することで音の距離感をコントロールすることもできます。
もっとアグレッシブに調整してみる ラジオボイス
ではもうひとつやってみましょう。
巷の音源でもたまに聞くことができるラジオボイスと呼ばれる音です。先程の遠い音の状態でさらにもうひとつEQの調整点(ポイント)を追加してみましょう。
緑のポイント(帯域5)を選択して以下の設定に。
- Frequency:1020Hz
- Gain:+12.0dB
- Q:1.10

さぁどうでしょう。いわゆるラジオボイス風に聞こえませんか?
ラジオボイスとは読んで字のごとく、ラジオから出てくるボイス(声)のような音という意味です。
が、しかし!
大変なことに気づいたのですが、お若い皆様、ラジオを聞いたこと、、、ありますか?カセットテープがもはや絶命危惧種というのは認識済なのですがラジオはどうでしょう、、、^^;
音作りの場面で出てくるラジオボイスのラジオは、こういうラジオ↓を想定したものです。

この音をシミュレートすれば良いのです。こういうラジオって、スピーカーの能力は高くないのです。高い音も低い音も出ない。そしてすぐ歪む。この音を作ってあげればラジオボイスになるというわけです。
ちなみになぜこの話を出したかというと、最近はラジオを聞くとしても高音質なのでラジオボイスと言うイメージが沸かないのでは、、、と思ったためです。音を知らなければ作れません。
ラジオサウンドのイメージとしてぜひ観てもらいたいのはスタジオ・ジブリの「魔女の宅急便」と「紅の豚」です。2作品ともラジオが重要な役割を持っています。
音楽や音を作っていく上では時代背景の理解も必要。音楽に限らず作品を作るという意味では背景をよく理解したうえで作品に取り込んでいくことが重要です。尾崎豊さんの「15の夜」という曲では缶コーヒーが100円で買えますが、これは安売りではないのです。安いコーヒーを買ったという描写ではなく、寒い寒い夜という描写なのでしょう。なぜここで缶コーヒーを買ったのか。時代背景が違うと変わってしまうんです。
余談のつもりではじめましたが余談ともいえないような話でした(笑)。
不要な音のカットも忘れずに
ここまではブーストする方向にイコライザーを使ってきました。ここでカットする方向の考え方もひとつお伝えしたいと思います。ミキシングが高度になってくると、イコライザーはカットに使う場面が多くなります。
イコライザーの設定をもとに戻して、左上の右上がりの斜め線(帯域1)をクリック。クリックすることでONになります。

赤い点をグイ〜っと右の方に持ってきましょう。すると何やら今までとは異なる形の表示が出てきます。
これは見た目通り、指定した周波数より低い帯域をすべてカットしてしまうイコライザーで、ローパスフィルター(Low Pass Filter)」というものです。厳密にはイコライザーではないのですが、多くの場合イコライザーと同じように扱われています。
設定値を以下のようにしてみましょう。
- Frequency:112.0hz
- Slope:18dB/Oct
- Q:0.67

少し設定項目が違います。Slopeというのが出てきました。フィルターはカット専門のエフェクトなのでゲイン設定はありません。そのかわり、どのくらいの勢いでカットするかを選ぶ設定項目がスロープです。数字が大きいほど急峻なカーブでカットします。(18dB/Octは、1オクターブ下がると18dB下がるカーブという意味です)
音を聞いてみるとどうでしょう?あまり変化がないように聞こえませんか?
そのとおり。この設定は、聞こえていない不要な低音ノイズをカットしてしまうための設定なのです。
録音においては、声そのものの他にも様々なノイズが入ってしまうことがあります。特に電気機器や電源、振動に起因する低音ノイズは厄介です。
MIXは決まった箱にキレイに音を詰める作業なので、無駄なものは入っていない方がキレイに仕上がります。故に、確実に不要な音はカットしてしまうことで品質向上を図ることができます。
実際はノイズが入っていないかもしれません。つまり無駄なカットになることもあります。しかし、まずは「ノイズをカットする」「音楽に不要な音と必要な音を選別する」能力を磨くことが重要です。音を聞いて不要だと思う音は積極的にカットする習慣をつけてみましょう。音をひとつひとつ聞いて考えることが重要なのです。
この音は意味があるのか、ないのか。この考えの深さ、考えた回数が作品の深さに繋がります。
次の回はお風呂場に行ってみましょう
さてイコライザーによる音の調整はいかがだったでしょうか。
多くの場合、歌ってみたでは歌がよく聞こえる設定・音作りをしてあげれば大丈夫です。リスナーさんが聞きたいのは歌ですから、とにかく歌がよく聞こえる、迫力がある、臨場感がある音にしてあげましょう。
ラジオボイスを使う機会はなかなか無いものです。毎回使いたくなりますけどね(笑)。
次回は響きを人工的に作ることで臨場感を演出、さらにリッチな音にしてみたいと思います。この作業も楽しいのでハマりますよ。
また次回お会いしましょう!