無料でDDPマスターファイルを聞く方法 -Steinberg DDP Player-
CDマスタリングにおいて作成されるマスターファイルの1種であるDDP(Digital Description Protocol)ファイルを無料で再生する方法を解説します。
マスタリングする側はDDP再生環境がありますが、チェックをお願いするプロデューサー、ミュージシャン側にDDPが再生できるDAW等があるとは限りません。ここで紹介するSteinberg DDP Playerを使えば誰でも無料でDDP環境が構築できます。
目次
Steinberg DDP Player
DDPを再生するには専用の再生環境が必要で、以下のSteinberg DDP Playerは無料で入手できます。
https://japan.steinberg.net/jp/support/content_and_accessories/ddp_player.html
ページ内にはSteinberg Download Assistantという名前が出てきますが、気にせずページ下のリンクからダウンロードしましょう。
Steinberg Download Assistantは同社のソフトウェアを複数使用する場合、同社のDAWソフトを使用する場合の専用ダウンローダーです。DDP Playerしか使わない場合はSteinberg Download Assistantをインストールする必要はありません。
DDP Playerの使い方
DDP Playerを起動すると、以下のような画面になります。[Drop a DDP image or folder here:ここにDDPイメージかDDPフォルダをドラッグアンドドロップしてください]とありますので、再生したいDDP書き出しされたファイルを、フォルダごとドラッグアンドドロップします。
すると画面にDDPの中身が展開されます。この段階で問題なくファイルが展開されるか、予定された曲数があるかどうかを確認しましょう。無事に展開されると以下のように曲が並びます。展開されなかったらDDPファイルに問題がありますので、制作者に問い合わせましょう。
基本的な使い方は一般的なCDプレーヤー等と同じです。再生ボタン[>]を押すと再生し、停止[■]で一時停止となります。
チェックして欲しい項目
マスタリングにおいてエンジニア側でチェックは行っているのですが、チェックする人間は多いほうが安心です。プロデューサー・ミュージシャン側(チェック側)でチェックしていただけると助かる項目(チェック可能な項目)をまとめてみました。
- 音質(最重要)
- DDPが展開できるか
- 曲数と曲順が正しいか
- 頭出し(曲送り)をした時に曲の頭が欠けないか
その他にも細かいチェック項目がありますが、マスタリング・エンジニア側でもチェックしていますので、上記の簡単かつ最重要な項目をご確認ください。
DDP Player上部の[ALBUM][ARTIST][UPC/EAN]や、音量メーター、その他の情報に関してはチェックする必要があればエンジニア側から要請があると思います。特にテキスト情報関係は細かく入力する場合と全く入力しない場合がありますので、表示されていなくても気にしなくて良いです。
以下のように横に伸ばすと色々な情報が出てきます。以下の画像では全く入力されていない状態ですが、この案件の場合はこのままプレスに出しました。
DDP Playerで注意すべき点
ワードクロックに注意
※ワードクロックの意味がわからない場合、この項目はスルーしていただいて問題ありません
PCのみで再生している場合は問題ありませんが、外部からワードクロックを供給している場合は注意が必要です。48kHzのクロックを供給した状態でDDP Playerを使用するとピッチとスピードが正しくない状態で再生されます(ピッチが上がって早回しになります)。
曲送り時の挙動がCDプレーヤーと異なる
これもチェック側の方は特に気にしなくて良いと思いますが、エンジニア側は一応知っておいた方が良い仕様です。
CDプレーヤーの場合、次に曲へ送ると再生中の曲がバツっと切れて次の曲の頭からの再生になります。DDP Playerでは再生中の曲をやんわりとフェードアウトしてから次の曲の頭より再生という挙動をします。結果、実際のCDプレーヤーで再生するよりも次の曲までが少し長く、柔らかく感じます。
ハードウェアのCDプレーヤーでも曲送り操作時にフェードアウトを入れています。フェードアウトがあるためプツっというノイズが発生しません。ただしフェードアウトの時間が非常に短いため、フェードアウトを感じないことがほとんどです。これに対しDDP Playerの場合ボタン操作後のフェードアウトが長いので、フェードアウトを感じてしまいます。
DDPファイルとは?
DDPはDigital Description Protocolの略で、CDプレス工場にCDプレス用マスターデータを送るためのファイル形式です。従来はCD-Rに焼いたものをプレスマスターとして物理的にプレス工場に送付していましたが、現在はDDPファイルをギガファイル便等インターネット経由で送る方法が主流です。(多くのプレス業者はCD-Rでも受付はしてくれます)
DDPを作成できるソフトウェアは限られており、筆者はSteinberg WaveLab Proを使用しています。WaveLabでも最上位グレードのProでないとDDP作成はできません。安価なソフトでDDP書き出しに対応しているものもありますが、使っている人を見たことがないので信頼性の面で不安があります。
DDPでマスターファイルを作成すると、指定フォルダ内に以下のような構成でファイルが作成されます。
IMAGE.DATが音声データ本体です。このアルバムは46分のCDアルバムですが、容量は487.2MBとなっています。16bit/44.1kHzステレオのWavファイルは約10MB/1分ですので、妥当な容量でしょう。他のファイルはその他のCDに必要なテキスト情報が入っているファイルです。ファイル名等を変更すると正しくマスターが作成されないので、フォルダ内は手を触れないようにしましょう。
なお、上記ファイルが格納されたフォルダ名(上記画像の場合は[CD1]という名前)は自由に変更ができます。ファイルの汎用性を考慮すると2バイト文字(日本語等)は使用しないほうが無難でしょう。国内でプレスされるとは限りません。
いかがでしたでしょうか。エンジニアさんは必要な場合、このページのURLをクライアントさんに送るなどの方法でご活用ください。
また、当方にてCDマスタリングをお受けすることができますので、CDマスタリングをご希望の方はぜひお問い合わせください。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。
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