元ちとせさん「えにしありて」ボカロ打ち込み担当しました〜!(初音ミク、Chika、LUMi / VOCALOID5)

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元ちとせさんの新曲「えにしありて」が公開されましたが、この曲のバッキングコーラス、実はボカロ(VOCALOID)です。ボカロの打ち込みを担当させていただきましたので、曲とあわせてご紹介します。

え?ボカロ?

そうなんです、この曲のバッキングコーラス、実はVOCALOIDが歌っているのです。

https://chitosehajime.lnk.to/Enishiarite

曲の紹介

まずはぜひ曲をお聴きください。聴きながら読んでいただけると嬉しいです(^o^)

「いのち、むきだし。奄美大島 CMソング」として2022年2月2日にリリースされた「えにしありて」。

元ちとせさんの出身地でもある奄美大島のキャンペーンソングであり、目を閉じて聴くと海の上を風になって渡っていくような、どこまでも透き通る海の中をウミガメが泳いでいくような、そんな風景が脳裏に映し出される歌です。

実は僕は奄美大島に行ったことがないのですが、きっとこんな場所なのではないかというイメージが制作中の音源からも伝わってくる歌でした。完成した音源はさらに上回る感動を、奄美大島のイメージを与えてくれたのは言うまでもありません。行ってみたい場所がひとつ増えました。

以下はオーガスタさんのオフィシャルサイトの紹介文です。

2022年2月6日、『ワダツミの木』での衝撃のデビューから20周年を迎える 元ちとせ。
デビュー記念日に先駆けて2月2日に新曲『えにしありて』を配信リリースしました!
この曲は元ちとせの故郷であり今も生活の拠点とする奄美大島が昨年7月に世界自然遺産に登録されたことを機に、奄美大島自然保護協議会事務局が奄美大島の魅力を伝えるために制作したPRムービー「いのち、むきだし。奄美大島」CMソング。元ちとせの歌声と世界が認めた奄美大島の生物多様性を映し出した映像とのコラボが話題となりました。故郷、家族、自然など、さまざまな「縁(えにし)」に想いを馳せたり、波のようにたゆたう歌声に包まれながら、奄美の風を感じられる一曲です。
さらに奄美大島の豊かな自然この曲のリリックビデオが完成! 奄美大島の豊かな自然の映像に加え、島の海辺で歌う元ちとせの姿が叙情的な作品になりました。
ぜひ楽曲と併せてお楽しみください。

オフィシャルサイトより引用

バッキングコーラスとボカロ

曲はお聴きいただけましたか?

ボカロに慣れた方には遠くに響く初音ミクさんの歌声がほのかに聞こえたのではないかと思います。場所は2:40頃からの「ネリヤカナヤ〜」のセクションです。

実は、初音ミクさんも含め全部で三人のバーチャルシンガーさんが歌っています。紹介していきましょう。

使われているボイスバンク

ボカロの打ち込みはYAMAHA VOCALOID5を使っています。バッキングコーラスのパートは全6パート構成になっています。

バーチャル・シンガーは、以下のお三方。全員わかった人がいたら凄いです!

どのようなコーラスを作りたいかというオーダーをお伺いした上で、人間ではない、しかし元ちとせさんの歌に自然と馴染み、目立ちすぎないというコンセプトをもとに3人を選びました。

初音ミクさんはもっともボカロらしい、ボカロとして認識される声として登場。初音ミクの声を聞けばボカロ=人間ではないというのを連想してくれることを狙っての起用です。ミクさんの声は埋もれにくいのでこの狙い通りの役割を果たし、ほのかに聞こえるミクボイスが不思議な雰囲気を出しています。

続いてはChikaさん。VOCALOID3時代のボイスバンクですが、バッチリまだまだ歌います。とても明るい声が特徴で、コーラスの広がりを出すために一役買っています。

最後はLUMiさん。あまり知られていないバーチャル・シンガーかもしれません。ベニクラゲの巫女さんです。ボカロでは珍しく少し暗い、落ち着いた声が特徴。ミクさん、Chikaさんだけだと明るすぎるので、落ち着いたLUMiさんにご登場いただきました。ベニクラゲということで、海、奄美大島というつながりも少し考えました。今回の3人の中で最も特徴的な起用といえるかもしれません。

先程の6パート x 3人、合計18パートのバーチャル・シンガーボーカルが、コーラスセクションを彩っています。

そもそも歌詞の「ネリヤカナヤ」というのは奄美大島の言葉で「海の彼方の楽園」を意味するのだそうで、そこから連想して、楽園から聞こえてくる奄美大島の精霊の声みたいなイメージで作りました。元ちとせさんを囲む精霊です。ふわ~っとした、人間では出せない雰囲気が感じて頂ければ嬉しく思います。

打ち込みデータ

ボカロデータの打ち込みについては、ピッチベンドを使って元ちとせさんの歌にマッチするようにコントロールしています。

ボカロの世界ではそのままベタ打ち(人間らしく歌わせない)という打ち込みが多いと思います。一方で人間らしく打ち込むという方向性もあります。今回はちょうど中間のようなイメージ。人間らしくなりすぎてもイメージに合わないので、元ちとせさんの歌に違和感なく隠れるようにデータを打ち込みました

元ちとせさんの歌を分析し、ボカロデータのピッチカーブをコントロールする、元ちとせさんの歌にカーブを似せることで程よく隠れ目立たないようになることがわかりましたので、元ちとせさんの歌に沿うようなピッチカーブを手書きしています。

書き出しとラフミックス

各パートはそれぞれ別のオーディオファイルとして書き出し、ProToolsに読み込んで音量と音質の最低限の調整や微細な波形編集を行ったのち、再度書き出したものをエンジニアさんにお送りしました。イメージが伝わるようにラフミックスもお送りしました。

VOCALOID5は書き出しが44.1kHz固定なので、ProToolsに読み込む際に48kHzでリサンプリング、書き出しは24bit/48kHzで書き出しを行いました。

制作の思い出

すみません、先に謝りますが、このコーナーは「字だけ」です(笑)。

このお話、ある日突然なった一本の電話から始まります。

電話の相手は若い頃の制作会社の同僚、YSK.F氏。誰でも知ってる著名プロデューサーさんのところでシンセサイザープログラマーやマニュピレーターを務めた敏腕クリエイターで、昔は一緒に悪いことをしたものです(笑)。

彼が言いました。

「小泉さん、ボカロ作れる?」

また大雑把に来ましたねぇ(笑)

ボカロPではないYSK.F氏のもとに舞い込んだ「ボカロの声をコーラスとして入れたい」案件。

実はYSK.F氏、ボカロの打ち込みくらいはできますし、周りに超絶なクリエイターの方がたくさんいるのです。

にも関わらず僕に?

クリエイターはいてもボカロPはいないと。正確には「ボカロをパパッと信頼できるクオリティで作れる人はいない」と。で、「小泉さんなんかボカロ曲たくさん作ってるじゃん」と。

つまり。つまりです。

なんとボカロP活動が遂にお仕事になって返ってきたということになります。やはりクリエイターは色々と本気で作ってたくさん発信しておくものだなと改めて感じました。

さて、少し嫌な予感がします。

自分でやってやれないこともない、むしろ時間があればやりたいはずの案件を頼んでくるということは。

はいご明察!超短納期でした。

知ってましたって!だから僕に頼んでくれたんですよね?やりましょう、YSK.Fさん!笑

話を聞いていくと、話はどうやら作曲家・アレンジャーの森英治さんから来たお話とのこと、、、!なんと。ほんとに!?(森英治さんはピカソのキーボーディストとして活躍され、「めぞん一刻」「らんま1/2」など、数多くの映像音楽を手がけられた大変著名な方です。)僕も興奮しましたが、うちの奥さんはさらに喜んでました

「ピカソーーー!!(奥さん談)」

話はトントン拍子に進み、「打ち合わせいつにしますか?」「明日どうですか!?」的なノリで特急のように進みました。まさに制作中とのことでスタジオにお伺いして曲を聞き、家に帰ってデータ制作を開始。この時に先述のピッチカーブの研究やデータ制作を行いました。

メール経由でやり取りの後、最後の詰めは森英治さんに我が自宅スタジオにお越しいただき、音を聞きながらアレンジを煮詰め、それを反映してデータ修正。半日の缶詰作業で完成しました。

久しぶりの超特急、久しぶりの「一緒に同じ部屋で作る」という制作。しかも森英治さんと、自宅スタジオで。もはや感動でした。そして、あーだこーだ言いながら何かを作るというのは楽しいものだなと改めて感じました(*^^*)。誰とも会わずに音楽が作れるようになり、会わずに作れる楽しみが生まれた時代ですが、会って音楽を作ることもまた同じように楽しいものです。

話は変わりまずが、「えにしありて」はアレンジが最高に素晴らしく、1回聞いたらこれ以外のアレンジは考えられない、そんな衝撃を受けました。最初に聞いた時に、です。カッコいいとも異なり、適切な単語が見当たらないのですが、「感動的」と言えば少し伝わるでしょうか。Emotional。ぐっと来る。語彙に乏しく月並みで気が引けますが、そんな感じです。

ちなみにスタジオにお邪魔したときは弦(バイオリン等のストリングス)の録音中だったのですが、この弦の録り音がまた素晴らしかった。柔らかくもくっきりとしたトランジェントを持って立ち上がるストリングスが曲の雰囲気を盛り上げていました。

もちろん、仕上がってきた音源の音、ミキシング、マスタリングが最高だったのは言うまでもありません。

制作中僕が聞いていたのは該当セクションだけですから、全体像を聞いたのは完成後です。イメージと一部も違わぬ素晴らしい仕上がりに感動しました。冒頭の元ちとせさんの声の存在感に圧倒され、そのまま最後まで心をつかんで離さない、そんな仕上がりでした。

何がいいたいかというと、ぜひ聴いてみてくださいということです(^o^)

このような素晴らしい作品に関わることができて、大変光栄に思います。いつか奄美大島に行こうと思います。

え?

オチ?

オチ、無いですよ?笑

追伸、森さんが家に来たとき、人見知りのうちの奥さんはわざわざ買い物に出かけてしまいました。家にいれば会えたのに。笑


各種配信サイト

森英治さんWeb

元ちとせさんオフィシャルWeb

オフィスオーガスタ様Web

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