Avid VENUE S6LからAVB経由でMacBookにライブレコーディングする設定のメモ

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ライブレコーディングはよく行いますが、xoxo EXTREMEの渋谷PLEASURE PLEASURE公演を収録することになり、PAさんと協議の結果AVBメインでのレコーディングを行うこととなりました。調べてもほとんど情報が出てこなかったので、AVBを経由したAvid VENUE S6Lライブレコーデイング環境に関して、自分のためのメモを残しておきます。

あくまで筆者の環境で発生した出来事をまとめているだけなので、標準的な動作ではないかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

※画像はすべてクリックにより別ウインドウで開き、拡大できます

必要な機器類とセッティング

まずAVBですが、ざっくり言えばLANケーブルを使用したデジタルのマルチチャンネル音声伝送規格です。

市場ではDanteの方が普及してしまった感がありますが、Danteと同じようにマルチチャンネルの音声をLANケーブルだけで伝送することができ、ライブレコーディングに最適な規格です。使ってみた感想ですが、Danteよりシンプルなので、AVB or Danteの選択肢がある場合はAVBの方が良いと感じました。Danteはもともとオーディオ系ではなくネットワーク系なので、生い立ちによる違いも影響しているかもしれません。

PLEASURE PLEASUREのコンソールはAvid VENUE S6Lです。VENUE S6Lはコンソール背面にLAN端子が装備され、そのうち1系統はAVBレコーディング専用の端子です。ProToolsのマークが書いてあります。

VENUE背面にはLAN端子がある

対する接続先(ProToolsでレコーディングするPC)はMacBook Pro。こちらはUSB-C端子しかありませんから、LAN – USB-Cの変換を行う必要があります。様々な変換アダプターが販売されていますが、Avid Webサイトでは以下の2段階変換が推奨されています。(目を疑いました、、、)

Thunderbolt 3 (USB-C) to Thunderbolt 2 アダプターを使用し、その先にThunderbolt 2 to Gigabit Ethernet アダプターのアダプター多段接続。

Avid Webサイトより引用

その他動作条件も記載されているので、AVB経由でのレコーディングを行う際にはこちらのサイトをよく確認しておいたほうが良いでしょう。

ということで、市販のUSB-C to Ethernet変換は使用せずに、2つのアダプターを購入して接続しました。

LANケーブルについては特に指定がありません。間違えてクロスケーブルを買うなどのミスをしない限りは大丈夫でしょう。今回はCAT5eのケーブルを使用しています。もちろんCAT5e以上であれば問題ないでしょう。

以下のように2段階接続しました。結果的にはこのセッティングで無事に動作しました。不格好ですが、、、苦笑。

アダプター2つで接続する

使用したMacBook Proの場合、USB-Cポートが2つしかありません。

対してUSBに接続すべきものがたくさんあります。

  • AVB(Ethernet)>Thunderbolt2>USB-C変換されたオーディオ系統の接続
  • USB-Cコネクター経由の電源
  • USB-CのUSBハブ

上記の写真では、純正のUSB-C to HDMI/USB-A変換を経由してUSB2.0ハブと電源を接続しています。

足していただくとわかりますが、AVB経由のレコーディングを行うために10,000円前後は必要だった、ということになります。

あとはモニター用のオーディオインターフェースが必要です。もちろんAVB経由でS6L側に戻すことも可能です。ただし録音系統とPA系統は分けたほうがシンプルになりますので、なんらかのコンパクトなオーディオインターフェースを用意した方が良いでしょう。

Apogee Duet3とNEUMANN NDH 20でモニタリング

NDH 20は遮音性が非常に高いため、ライブ会場で重宝します。ただし抵抗値が120Ωであるため、ヘッドホンアンプ側の出力が十分かどうか、確認しておく必要があります。

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さらにスリム化することもできそうです。

Ethernetアダプターですが、現場PAさんが検証済というこちらのBelkin製Ethernet to USB-C変換でも問題なく動作しました

Belkin F2CU040

USB-C接続ですが、上記写真ではLAN経由のUSB-Cを優先して直接接続したために、USBハブと電源系統が煩雑になっています。そもそもUSB-Cポートが多いMacBookを用いるか、もしくはLAN接続をUSB-Cハブ経由にする方法もありそうです。本番では写真のセッティングでしたが、チェック段階ではUSB-Cハブ経由でも動作しました。

設定 E6 Engineを表示させる

接続ができたらパソコン側の設定が必要です。

ざっくり言うと、ProToolsで録音するために、AVB入出力をオーディオインターフェースとして認識させる必要があります

まずは一般的なオーディオインターフェース同様にMacのAudio MIDI設定で設定を行いますが、LANが正常に接続されると以下のように「Pro Tools Audio Bridge」というデバイスがたくさん並びます。一見このデバイスを選択すればOKに見えますが、これは

ハズレです!

(気づくのにだいぶかかりました、、、)

別の設定項目を用いてAVB経由のルートを開いてあげる必要があります。

Audio MIDI設定の上部「ウインドウ」メニューから、「ネットワーク装置ブラウザを表示」メニューを開きます。この「ネットワーク装置ブラウザ」でAVB経由のルートを認識させないとレコーディングできません。

LAN経由で正しく接続されていれば、以下の「E6 Engine 92dB」が表示されているはずです。チェックボックスを選択して有効にしてください

表示されていなければLANの接続に問題があります。ケーブル類やアダプター類に問題がないか確認してください。

上記の設定を行うことで、ProTools側からもPlayback Engineで「E6 Engine」が選択できるようになります。92dBの部分は表示が異なるかもしれませんので、臨機応変にご対応ください。

なお、以下のように「ProTools Audio Bridge」とは別に「E6 Engine」が表示されます。

ここまでくれば、I/O設定を行うことで各チャンネルの入力でAVB入力が選択できるようになるはずです。

あとはProToolsを扱えるエンジニアさんであれば説明の必要はなかろうかと思います。

所感とバックアップ回線

使ってみての感想は、噂通りDanteより簡単です。

Danteの場合はパッチングと設定があるため少し勉強しないと使えませんが、AVBは認識さえされればスムーズです。PA側のエンジニアさんと会話しなくても設定を完了できると思います。Danteの場合はコンソール側の設定変更が必要な場合も多く、PAと連携した対応が必要です。VENUE / AVBはコンソール側の設定がほぼ無いそうで、この点はDanteよりシンプルだと感じました。

HDDはUSB接続のSSDを使用しましたが、本番中の動作はいたって快適でした。24bit/96kHz 40ch録音ですがCPU負荷/HDDアクセス等かなり余裕がありました。全くトラブルなく2時間半の録音を終了しました。

問題があるとすれば、AVB接続をテストする環境は自宅に構築できません。(さすがにVENUEは買えない、、、、苦笑)

事前に乗り込むことができれば良いのですが、難しいことも多いでしょう。また、スムーズとはいえパソコン録音なので、予算確保できればバックアップは用意すべきと考えます。今回はAVBの状況が全くわからなかったので、2系統のバックアップを用意し、合計で3系統のレコーデイングを行いました。

MADI経由TASCAM DA-6400

メインバックアップとして、ステージ上手袖にTASCAM DA-6400を設置しました。VENUEのステージボックスにはMADI出力があるので、BNCケーブルでDA-6400に接続すれば設定完了です。お世辞抜きで、セッティングに5分もかかっていません。このシンプルさは本当に素晴らしいと思います。

本番前に録音ボタンを押して放置。終演後に戻ってきたら無事に動いており、2時間41分録音できました。

TASCAM DA-6400dp

なお、VENUE側の仕様なのか、ステージボックス側のMADI出力は24bit/48kHzになるとのことでした。本来はメイン回線と同様に24/96で録音したいところですが、仕様であれば仕方ありません。もしかしたら設定変更で対応できるのかもしれませんが、事前にPAさんと調整する時間がないと難しいかもしれません。

パソコンレコーディングを行う場合でもDA-6400は回しておきたいところですね。なお、MADIだけでなくカードを差し替えればDanteも対応可能です。ややお値段が高いのが欠点ですが、何度も使ってノートラブル、止まる気配もありませんから、この信頼性を考えれば安くないかもしれません。

アナログ分岐 TASCAM HS-P82 x 3

個人的に最も安心できる録音方法がアナログ分岐です。今回はどうなるかわからなかったので、アナログ分岐も用意しました。PAさんにご協力いただき、AUX等を用いて24chにまとめたものをマルチボックスから分岐しています。

レコーダーはTASCAM HS-P82です。廃盤品ですが、高品位プリアンプ搭載のレコーダーということでプリを用意する必要がなく、非常に重宝しています。


結局3系統すべて無事に録音できていたわけですが、それはおそらく3系統もバックアップを回していたから無事に録音できたのでしょう。特にDA-6400の安心感は代えがたいです。「精神衛生上」欲しい機器ですね。

AVBについては一度使ってしまえば以降はスムーズに使用できそうです。AVBがあることでDA-6400をバックアップに回すことができ、異なる方法での同時録音を実現できることが素晴らしいと感じます。Danteはいまいち不安があると言いますか(苦笑)、止まりそうな気がしてしまうのですが、AVBの方がやや安心だなと感じました。根拠はありませんが、シンプルゆえに安心なのだと思います。

ということで、ライブレコーディングの方法メモでした。どこへでもライブレコーディングにお伺いしますので、お問い合わせください。