Haritage Audio Baby R.A.M レビュー 低価格・高品質なモニターコントローラー/パッシブ/Baby RAM/ベビーラム
モニターコントローラーはコストと機能のバランスが良い機種があまりないのですが、近年はアウトボード等でも注目を集めるHaeritage Audioからコスパの良さそうなモニターコントローラーBaby R.A.M(ベイビーラム)が発売されています。買ってみたのでレビューしてみたいと思います。
動画版レビュー↓
目次
自宅に適した必要十分なモニコンは?〜少ない選択肢〜
使っていたMACKIE BIGKNOB改のガリがいよいよひどくなってきてしまったのでモニターコントローラーの入れ替えを検討。しかしもともと自宅スタジオに対してはBIGKNOBでもオーバースペック、もとい機能が多すぎるので、この機会に必要な機能を整理してみました。
スタジオの主な用途:ミキシングに特化、たまに同室でのボーカル録音
- スピーカー切り替え(最低2系統、できれば3系統)
- 入力切り替え(最低2系統、できれば3系統)
- スピーカー音量調整
- MUTEスイッチ・・・電源を落とす際、スピーカー保護のために必要
- できればヘッドホンアンプ、でもDAC側にあるので音質が悪いなら不要
上記の用途に対してマッチするアクティブモニターコントローラーを探しましたが、どれも過去の経験上音質的に不安があり、ちょっと厳しいかなという印象でした。
信頼できそうな機種を選ぶと途端に価格が跳ね上がります。
大定番はGrace Designのm905でしょうが、当スタジオにははっきりいってオーバースペックです。当スタジオの場合DACはTASCAM DA-3000なのでDACが不要ですし、入出力もそこまでいりません。ブースも無いのでトークバック関係も不要。m905の魅力は厳密なレベル調整と音質ですが、どちらも活かしきれません。Avocetという選択肢もありますが、デザインがあまり好きじゃないですし(苦笑)、やはりオーバースペックです。
価格、十分な仕様、信頼性(音質)というバランスを満たす機種が無いのです。
安くて良いアクティブモニターコントローラー(コスパの良いアクティブモニターコントローラー)が無いなら、パッシブでも良いかなと思って探したところ、信頼できそうなモデルはやはり少ないのが実情です。
そんな中、比較的新しいモデルとしてBaby R.A.Mを見つけました。サウンドハウスのポイントが溜まっていたのでポイントで買ってしまいました。笑
僕は「使わない」というのが嫌いなので、僕にとってはちょうど良い「使う機能だけ」備えたモニターコントローラーです。
Baby R.A.Mレビュー
導入後にいくつか作品を作ってみましたが、音質的にも信頼できるモデルだと感じました。
そもそもモニターコントローラーなので音質変化は無い方が良く、音質が劣化する機種が多い中、BabyR.A.Mは目立った音質変化を感じませんでした。少なくとも悪い方向には変化していません。低価格ながらも安心して使えるモデルだと感じました。
ボリュームノブにこだわりがあるようで、どのポイントでも音質変化やギャングエラー(左右のばらつき)がありませんでした。
メーカーサイトによると、ブランドは不明ですが4接点・24ポイントのポテンショメーターが使われているようです。わざわざ声高らかに主張しているので、自信のある部分なのだと思います。
アクティブタイプのモニターコントローラーではアンプを経由するため、少なからず音質は変化します。m905クラスになれば変化を感じないものになりますが、10万円以下のアクティブ・モニターコントローラーはどれも音が良くないのです。言い換えれば余計な回路を通って音質が劣化しているとも言えます。使っていたKACIE BIGKNOBも内部改造の上クリーンな電源を供給、かつ117Vに昇圧してやっと使える音になっていました。
パッシブの場合アンプを持たないので、音質を決めるのはボリュームノブ、端子、切り替えスイッチ等のパーツです。アクティブに対し圧倒的にパーツ点数が少ないため劣化要素も少ないのがパッシブタイプの特徴。Baby R.A.Mは良いパーツを使って組み上げているようです。
各スイッチ類も切り替えノイズはありません。もちろん将来的にノイズが出る可能性はありますが、操作した感触では粗悪な部品には感じませんでした。
重さも1,328gあってゴム足なので操作しても動きません。小型のモニターコントローラーは動いてしまうものが多いのですが、モニターコントローラーは操作回数が多い機器なので、意図せず動いてしまうと結構なストレスになります。
欠点があるとすればサイズでしょう。正しく表現すると「大きい」のではなく、「思ったよりも大きい」です。
写真を見る限りかなり小さく見えるのですが、ボリュームノブがそもそもかなり大きいのです。全体のサイズは141 × 97 × 199mmなので、高さ最大値で見れば2U程度の高さがあります。面積としても当スタジオのNEUMANN KH 80 DSP(4インチウーハー)と同じくらいの面積です。よく確かめて買いましょう(笑)。
あとはヘッドホンアンプがありませんから、オーディオインターフェース側のヘッドホンアンプ等を使用することになります。
とはいうものの、満足できるヘッドホンアンプを持つモニターコントローラーなどm905くらいなので、もともとオーディオインターフェースやCDプレーヤー側で聞いている方が良いでしょうから、欠点には感じられません。
まとめると、とてもコストパフォーマンスの良い製品だと思います。10万円前後のアクティブモニターコントローラーより音が良い気がします。置き場所は考えておく必要がありますが(苦笑)、それ以外に目立った欠点は感じませんでした。
どういう人に向いている?
スピーカーの切り替えと音量操作を手元でやりたい人。つまりは自宅環境でのミキシング作業が多い人に向いているでしょう。
スピーカーが1系統ならオーディオインターフェース側で切り替えている方が音が良いのでそもそもモニコン不要です。逆説的には、スピーカー1機種の人はBaby R.A.Mをきっかけにモニタースピーカー2機種の環境を構築してみてはどうかなと思います。良いスピーカーを2機種揃えるよりも、複数の環境で聞くことが重要なので、切り替えて聞けることは重要です。
トークバック機能が不要、かつDAW側でのモニターコントロール操作が使いにくい人は積極的に検討しても良いのではないかと思います。
仕様など
入出力〜必要最低限の入出力〜
入力は2系統。筆者のスタジオではDAW出力(TASCAM DA-3000:DAC)とCDプレーヤー(TASCAM CD-RW5000)を接続しています。
出力も同様に2系統あり2種類のモニタースピーカー(NEUMANN KH 80 DSP / TASCAM BL-S3BT)を接続しています。
ともに1/4″フォン端子でバランス・アンバランスの切り替えが可能。TRSコネクターを使用し、スイッチを[BAL.&FLOAT.]にすればバランス接続となります。
バランス接続に対応しているので各機器との接続で問題が出ることは無いでしょう。バランス・アンバランスの機器が混在する場合はスイッチをバランス[BAL.&FLOAT.]に設定し、レベル差は接続した機器側で調整するのが良いでしょう。
アクティブモニターコントローラーではないので、入出力のレベルを微調整する機能はありません。接続する機器側でレベル調整する必要があります。ホームスタジオでDAW中心の使い方であれば大きな問題になることは無いでしょう。
モニターコントロール
ボリュームは無段階ではなく3dBステップのロータリーエンコーダーです。
パッシブタイプの場合ギャングエラー(左右のばらつき)が問題となることがありますが、サイン波でチェックしてみたところ、特に左右差は感じられませんでした。これは地味にすごいことです。
その他[MONO]、[MUTE]、[DIM]の3つのスイッチがあります。
- MONO:モノラル化して聞くことができるスイッチ。左右の音を混ぜて左右同一の音となりモノラルに聞こえる。
- MUTE:スピーカーへの出力をカットする機能。
- DIM:Dimmer=音量を小さくする機能。どこにも表記がないのですが、約25dB減衰しているようです。
入出力切り替えスイッチ
INPUT/OUTPUTそれぞれ押した方が接続されます。
が、アナログスイッチなので、裏技としては2個同時に押せば両方接続されます(笑)。INPUT1/INPUT2を同時に押せば両方の音が聞こえます。
価格が安いため低く見られがちですが、実際はしっかりした造りと音質を両立した良いモニターコントローラーです。
アクティブのモニターコントローラーにある機能、「DAC、ヘッドホンアンプ、各入出力の微妙かつ繊細な調整、スタジオコミュニケーション」。
これらの機能が不要で、純粋に切り替えと音量調整、操作性だけを求める人には素晴らしいモニターコントローラーとなるでしょう。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。
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