ソロ・ギターの音作り EQ/コンプと空間系 [難しさ:やさしい vol.059]

前回の記事ではバッキング・ディストーションギターの音作りを説明しましたが、今回はソロギターの音作り。POPSやロックで多いディストーション・オーバードライブギターの音作りの考え方について説明していきます。

前回の記事の続きではなく単体でお読みいただけますが、両方読んで頂くとさらに面白いと思います。

動画版はこちら↓

使用する音源

ディストーションギターのソロがある音源なら何でも構いませんが、当記事では[Re:GO/キニナルコ]のマルチトラックデータを使用しています。このデータはミキシングの練習に限りお使い頂けるもので、以下のサイトで販売しています。

大変勉強になる素材ですので、ぜひご活用ください。

https://soundworksk.thebase.in/items/59372493

曲名:Re:GO
楽曲提供:キニナルコ(みとらぁさま @mitora0809 )
https://twitter.com/mitora
ダウンロード販売:https://www.e-onkyo.com/music/album/tcj859756546979/

上記の素材の中から、以下のトラックをインポートして使用します。

  • ReGo_ギターカラオケ
  • ReGo_Gt1L
  • ReGo_Gt1R
  • ReGo_Gt2L
  • ReGo_Gt2R
  • ReGo_Gt-solo1
  • ReGo_Gt-solo2
  • テンポ:178

Gt1/2はバッキングギターでそれぞれ2本セット(ダブリング)です。前回の記事を参考にグループチャンネルを作成し、音作りをしておきましょう。

ソロギターは2本あり、[ReGo_Gt-solo1]を使用します。

[ReGo_Gt-solo2]は前半は同じフレーズ、後半はハモりです。本記事では使用しませんが、聞いてみて任意でプラスしてみると良いでしょう。

基本的な音作りの概念

ソロギターの音作りにおいて、基本的な考え方として覚えていただきたいことは2つ。

  • 音作りをせずにすむ音=いい音を作ってから録る
  • ボーカルと同様の位置づけで考える

音作りをせずにすむ音=いい音を作ってから録る

1つ目はバッキングギターと同様で、録ってからなんとかしようと思わずに、録音時に良い音を作っておくことが重要です。録音する時のポイントは、リアンプによる保険をかけることと、代用できる空間系エフェクトはオフにして録音しておくということです。

いずれにせよ、音作りの基本概念はバッキングと同じなので、前回の記事の内容を習得しましょう。

ボーカルと同様の位置づけで考える

こちらは考え方です。

ギター・ソロというのは、ギター・ソロなのです。笑

意味するところは、ギター・ソロの間はギターが主役だということ。つまり、ギター・ソロを弾いている間はボーカルよりもギターが目立って良いということです。当たり前のことなのですが、一般的な楽曲ではボーカルが主旋律になりますから、ついつい忘れてしまいます。

バッキングギターはあくまでもバッキングなので、ボーカルより目立っていいかというと、あくまでボーカルが主役です。しかしギターソロは違います。

音作りや演出についてもボーカル同等の豪華な演出、エフェクト処理をして良いということです。すべての楽器の中で最も前に、最も聞こえやすく、豪華な音作りをしましょう。

基本的な音作りの流れ

前述の通りバッキングと同様に考えて音作りをしていきましょう。詳細は前回の記事を参考に。

イコライザー(イコライジング)

3つのポイントで考えてイコライザーを設定しましょう。

  • 不要帯域のカット:中低域に不快な響きがある場合はカットしましょう。
  • エッジのコントロール:ソロギターは存分に目立って良いので、耳に痛くない範囲でブーストしてみましょう。
  • 低域の量の調整:フレーズによりますが、低域が不要なフレーズ(高いメロディライン)の場合は低域をカット気味にコントロールしてみましょう。

参考までに課題曲では以下のようなイコライジングをしました。

  • 不要帯域のカット:BAND2(Peaking), 670Hz/Q=3.4/-5.0dB
  • エッジのコントロール:BAND3(Peaking), 4.99kHz/Q=0.5/+5.2dB
  • 低域の量の調整:BAND1(Shelving), 896Hz/Q=7.4/+2.9dB

ポイントは低域の量の調整です。

不要帯域をカットしたところで全体的に寂しくなったので、シェルビングで中域以下をプラスしています。

さらに高域のきらびやかさをプラスしたい場合は、ビンテージ系のイコライザーで6kHz以上の高域をブーストしてみると良いでしょう。ボーカルと同じような処理です。

コンプレッサー

こちらもバッキング同様でディストーションギターはすでに潰れていますので、音質変化を狙ったコンプレッサーを採用しましょう。

コツという意味では、バッキングと異なるキャラクターのコンプレッサーを使うことで自然とバッキングギターとの音質差が生まれ、目立つようになります。Cubaseで言えば、バッキングギターにTube Compressorを使ったのであれば、ソロギターにはVintage Compressorを使ってみましょう。

ボーカルトラックには他で使わないような特別なエフェクターを使うことでボーカルが目立ちます。ソロギターも同様に、バッキングと違うエフェクトを使うことで豪華さをプラスしていきましょう。言い換えれば、ソロギターのトラックにはボーカルで使うようなエフェクトを使うと良いでしょう。

以下は参考までに課題曲での設定です。

  • RATIO:4:1
  • ATTACK:5.5ms
  • RELEASE:AUTO

そうなんです。イコライザーもコンプレッサーもボーカルと同じようなかけ方、考え方で音を作るとうまくいくのです。

ソロギターを目立たせる音作り

さて基本的な音作りは終わりましたが、これだけではバッキングとの差があまりなく、ソロギターとして目立ってきません。

基本的な音作りをした後に、空間系エフェクトを用いてさらに豪華に、目立たせていきましょう。

ショートリバーブ

音に立体感を出してみましょう。ショートリバーブを使います。

このリバーブは曲の響きを表現するものではなく、部屋の響きをシミュレートして立体感を出すためのリバーブです。サンプリングリバーブを使ってみても良いでしょう。

ここでは無料のサンプリングリバーブ[MConvolutionEZ]を使ってみました。

※このリバーブが含まれるMelda Productionの無料バンドルのインストール方法はこちらです。

  • プリセット:Chambers/Small 1
  • サンプリングリバーブなので、響きを選んで設定終了です

使い方は、センドリターン形式にして使用します。リバーブのトラックにもイコライザーを入れて、必要に応じ低域のカットなどを行いましょう。

ポイントは、ショートリバーブなので、響きの短いものを選ぶことです。

リバーブについてはリバーブ集中講座も参考にしてみてください。

ステレオ・テンポ・ディレイ

続いてのエフェクトが肝になるでしょう。ステレオのテンポディレイです。

テンポディレイというのは曲のテンポにマッチしたディレイ・タイムに設定したディレイのことです。詳細は以下の記事で解説しています。

DAW標準のディレイでOKです。Cubaseの場合は[stereodelay]というものがあるので、これを使いましょう。こちらもリバーブ同様にセンドリターンで使用しましょう。

まずテンポを曲にあわせます。4分音符に設定してみましょう。

ソロギターの音を送ると、いきなりそれっぽくなりますね!

ただし、この状態はステレオディレイに見せかけてモノラルディレイになっています。

左右のディレイ・タイムが同じなので、左右のチャンネルから同じ音が同じタイミングで発音され、結果的にディレイ音が真ん中から聞こえる状態です。左右から同じ音を出すと音は真ん中から聞こえます。

ステレオディレイ化するために、左右のディレイ・タイムを少しだけずらしてみましょう。

[SYNC]ボタンを消灯させテンポ同期を解除し、好きなディレイタイムに設定できるようにします。ここで、テンポにあわせたディレイタイムを手動計算して打ち込み、左右どちらかのディレイタイムを1msでも良いのでずらします。

課題曲の場合はテンポ178なので、4分音符のディレイタイムは[約337ms]となります。

左=338ms/右=336msなどに設定してみましょう。

なお、ディレイタイムの計算にはこちらのサイトが便利です。テンポ120の4分音符=500msは覚えておくと便利です。

いかがでしょうか?音がいきなり広がりますね。左右の音が違う音であることがステレオ感を生み出すのです。

この状態でさらに煮詰めてみましょう。

原音とディレイ音の差をつけて、ディレイ音が後ろに行くように、ディレイのローパスフィルターを設定してみましょう。

ここでは3kHzのローパスフィルターを設定しました。高域成分が落ちることで自動的に原音よりも目立たくなり、奥に定位するようになります。

では最後の極めつけ。

ギターの音像の大きさをコントロールしてみましょう。ディレイトラックのPAN幅を調整します。

ディレイトラックのPAN幅がMAXになっていると思いますが、この状態だと原音とディレイ音は分離して聞こえるので、あくまでディレイ・エフェクトがかかっているように聞こえます。

しかしPAN幅を狭めていくことで一体化して聞こえるようになり、結果、ギターのサイズをディレイのPAN幅でコントロールできるイメージになります。

このように、バッキングギターにはかけないエフェクトを多用することで差別化し、目立たせていきます。なお、どちらのエフェクトも実はボーカルにも使える技です。したがって、ボーカルトラックとエフェクトを共有しても良いでしょう

曲を演出するエフェクト

最後に曲を演出するエフェクトをかけてみましょう。

これは言い換えればギタリストのみなさんが普段コンパクト・エフェクターやマルチ・エフェクターでかけている空間系エフェクトです。ギタリストの思うママに空間系エフェクトをかければOK。ポイントは、ここまでの音の下地処理が終わったあとにギタリストが好きなエフェクトをかけるという点です。

例えばギタリストが大好きな付点八分のディレイなどは、同じディレイと言えどこの「演出系セクション」に分類されます。

まとめ

ということで、ソロギターの音作りの考え方を駆け足で巡ってみましたが、いかがだったでしょうか。

ポイントは「ボーカルだと思え」ということ。

同じギターと言えど、バッキングギターと同じ扱いではいけないという点が最大のポイントでしょう。丁重に、豪華に。存分に目立つようにソロギターの音を作ってみてください。

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