のだめを読みながらクラシックを聞いてみる 〜ブラームス交響曲第1番〜
いまさらですがのだめを全巻読破しました。
のだめ、説明の必要も無いかもしれませんが、漫画「のだめカンタービレ」です。何を隠そうあれだけ話題になっていたのにドラマも観ていなかったし、漫画も読んだことがありませんでした。(僕はほとんどテレビ観ませんので)
彼女さんが全巻持っていたので貸してもらい、読んでみたらまぁ面白いです。音楽やってる人なら刺激されるものがあるのではないかなと思いますので、ぜひ読んでみてください。
目次
のだめに出てくるクラシックをハイレゾで聞いてみたい。
作中にはクラシック楽曲の演奏シーンがたくさん登場します。
こんな仕事をしていますが、クラシックというのはあまり触れる機会がないもので、実際に観に行った回数も数えるほど。ちゃんとしたホールで観たことがあるのは15年前くらい、サントリーホールのストラヴィンスキーだけかもしれません。誰が演奏していたかすら思い出せない、、、申し訳ないです汗
読んでいるとね、すごく聞きたくなる訳です。どういう曲なんだろう?千秋(登場人物、千秋真一:指揮者)が勉強しているのはどういう曲なんだろう、のだめ(登場人物、野田恵:ピアニスト?笑)の超絶演奏はどんな曲なんだろうと。
しかし、クラシック楽曲、ぶっちゃけそんなに詳しくないです。自分の畑の音楽はだいぶ聞いていると思いますが、他の畑まで聞いているかというと詳しくは聞いていない人が多いんじゃないかと思います。知識として聞いているだけ、という感じでしょうか。
しかしこの湧き上がる衝動。いい音でこの曲聞いてみたい。
はい、耐えきれずに買っちゃいました。
どの音源がいいか迷ったのですが、作中で千秋が指揮するR☆Sオーケストラで演奏され、のだめを泣かせた(8巻、Lesson42)こちらの楽曲にしました。
「BRAHMS ブラームス 交響曲 第1番 上岡敏之指揮、 新日本フィルハーモニー交響楽団」
正直なところクラシックに詳しくないのでどの音源を買うか迷ったのですが、親しみが持てる方がいいなと思ったので、最近の録音で、日本のオーケストラ演奏という基準で選びました。
ほんとどれ買ったらいいか迷いますね。。。クラシックも敷居高いなぁと思ってしまいました。初心者向けクラシックとかまとめてあればいいなぁと思ったら、のだめでまとめられたCDがたくさんリリースされていました。
ハイレゾでなければサントラを買うのも良さそう。ただ、有名な部分だけ編集されているものも多いようなので、フルで聞いてみたい人は要注意です。この辺↓はちょっと聞いてみたいなと思いました。
ハイレゾはiTunesで聞けます。
せっかくなのでハイレゾ音源を聞いてみようということで、wav 24bit/96kHzの音源を購入しました。
ハイレゾ音源とはCDを超える解像度の音源のことを指します。クラシックやジャズなどには向いているフォーマットです。
macの場合(Windowsも?)iTunesがハイレゾ対応しているので、ハイレゾはiTunesに追加して普通に聞けます。パソコンスピーカーでも再生できますが、せっかくなのでハイレゾ対応のオーディオインターフェース(USB DAC)があると良いと思います。
音は、大きくなくてもいい。
改めて腰を入れてスピーカーの前でクラシックを聞いて思うことがいろいろとありました。クラシックに詳しい人、その筋のエンジニアさんなら何を今更当たり前のことをと思うであろうことをつらつらと書きますのでご容赦くださいw
また、曲とか演奏の良し悪しを語れるほどクラシックを聴き込んでいないので、そういう内容は書きません。ストレートに言えば感動しました。何回も聞けるし、もっといろいろ聞いてみたくなりました。美しく柔らかい弦の響き。突然盛り上がって意識を掴んでいくクレッシェンド。ずっと聴いていられる音源でした。
で、聴いていると、音量・ダイナミックレンジ(音の小さいところから大きいところまでの幅、レンジ)について非常に考えさせられるものがあります。
音がね、小さいんですよ。現代音楽に耳がなれた我々にとっては。
普段の音量はこれくらい。↓
マスタリング済音源だとこれ以上あげるとご近所気になる音量です。
ですが、先程のブラームスを楽しく聞くにはこれくらいの音量まで上げないと楽しくないです。↓
昼間だったらもっと大きくしてもいいくらいです。
先程の音が小さいというのはやや表現に誤りがあり。
正しくは、ダイナミックレンジが大きい。小さいところが小さくて、大きいところが大きい、と言うべきでしょう。音量差が大きい訳です。
マスタリングで音圧を上げるのが常識的に行われていますし、僕も音圧上げるのは得意分野なわけですが、果たしてそれが良いのかどうか。いつも考えながらやってますが、改めてその正当性はちゃんと考えないといけないなぁと感じました。
音が小さいのは、小さくていいんですよ。音楽としては。
一方でほとんどの人はiPhoneやパソコンのスピーカーで音楽を聞くわけで、それらの再生デバイスでその音楽が良い感じに聞こえるようにするのもミキシング、マスタリングの作業としては必要な行為ではあります。
つまりは、音量も選択要素なんですよね。音量を大きくしなければならない訳ではない。ということを改めて感じました。
このハイレゾのブラームス、この音量差があるからやっぱり感動的な訳です。どーん!とくるところでドーン!と来る。作曲者の意図もそこにあるし、それをそのとおり演奏できる演奏家がすごいし、録音もそれを表現していないといけない。
現代においては、多くの再生アプリでは音量は自動調整されて均一化されるようになったので、やはり無理に音を大きくする必要なないのかなというのが最近の考え方です。
そもそもオーディオ機器のボリュームって最大にしたことありますか?
ないですよね。
せいぜい半分。使わないならいらないんじゃないかとはよく思ってました。最大にしたことがあるオーディオ機器ってiPhoneくらいです。
音は大きくしたかったら大きくするし、小さくしたかったら小さくする。何がその音楽と、その音楽を聞く人にとって良い表現なのか。考えるのもミキシングやマスタリングをする制作者の判断。
音が大きいは、選択肢のひとつでしかないというのを、改めて感じました。
クラシック、面白い。〜リズム楽器と楽曲構成〜
現代音楽に慣れている耳にとって新鮮なことは他にもあります。
まず、リズム。
よく聞く現代音楽では、ドラムがリズムを刻んで、その上に演奏が重なって、という構成が普通です。
しかし、クラシックを改めて聞くといわゆるずっとリズムを刻むような楽器はないんですよね。
バンド演奏でよく言われるのは「ドラムが止まらなければなんとかなる」。つまりドラムなどのリズム楽器がリズム、その音楽の要なのです。メンバーが下手でもドラムが上手かったら形にはなる。
そういうもんじゃないんですよね、クラシック音楽。リズムという視点で聞いてみると、非常に面白いなと感じました。
また、楽曲の構成が面白いです。
イントロあって、AメロBメロと来てサビがあって、同じメロディで2番3番。途中にソロや違うメロディがあって、最後にサビでエンディング。ざっくりこんな構成が一般的だと思います。
クラシックの場合、こんなもんじゃない。はっきり言って繰り返し出てくるところを探すだけでも大変。拍子も4/4や6/8ではなくて、どこがどうなってるのか楽譜見ないとわかりません。
僕も曲書きますが、正直なところ表現というよりは単純にカッコいいという理由だけで置かれている演奏やパートもあります。表現というよりは頭の中に降りてきたものを置いているだけというか、そこまで考えてないというか(笑)。
しかし、そんな構造とは根本的に違うのです。
次にどう展開していくのか、何を表現してこの音になったのか。
そんなことを考えながら聴いているととても面白いです。
このブラームスの交響曲 第1番は20年の歳月をかけて完成されたそうで、聴いていると確かにそれくらいかかるかもしれないななどと思ってしまいます。それくらい選ばれた音だけで構成されているというか、ひとつひとつの音に意味を感じるというか。
なんていうか、反省です。もっといろいろ考えて勉強して感じながら音楽しないといかんなぁと。
ぜひ読んで、聴いてみてください。
ということで、のだめきっかけでクラシックを聴いてみたのですが、大変得るものが多くて楽しかったです。読んだことがない人はぜひ読んで、ぜひ曲を聴いてみてください。
在宅ワークの方も多いと思いますが、クラシック、仕事のBGMにも良いかも。ずっと押しの強い現代音楽よりも流しっぱなしには向いているかもしれません。たまにビックリしますけど(笑)。
もっと聴きたいなと思いますので、なんかもう少し買ってみようかなと思います。楽譜も見てみたい。そして、聴けるようになったら生演奏で聴いてみたいです。
人が作ったものに触れると、新しい世界が見えてきますね。
あぁ、黒木君のピンクのオーボエが聴いてみたい(笑)。
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。