カラオケ(オフボ)のキックだけ上げる方法 Waves F6で始めるダイナミックEQ その4 ダイナミックEQの使い方 [難しさ:ムズい vol.067]

筆者おすすめのダイナミックEQ Waves F6を使ってダイナミック・イコライザーの使い方を覚えるシリーズの第4回、最終回です。

今回はすでにステレオにミキシングされてしまっているカラオケ音源。のバスドラム(キック)だけ上げる技をご紹介。この一見難しそうに見える調整もダイナミック・イコライザーを活用することで実現できるのです。

これまでの記事を読んでいない方はぜひ他の回もご覧ください。

その1 ダイナミックEQの概要と使い方 & Waves F6レビュー
その2 歌ってみたボーカルMIX 痛い音軽減&部屋鳴りの除去 アコギの響き改善
その3 ボーカルが大きく聞こえる大技!ダイナミックEQ x サイドチェイン

動画版もあります。音があるのでわかりやすいと思います(^o^)

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記事・動画で使用している音源

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コンプレッサーを逆側に動作させる

これまでの連載を読んで頂いた方でしたらある程度コンプレッサーの動作はご理解いただけていると思います。基準値(スレッショルド)を超えた信号を圧縮するという動作です。

もともとのコンプレッサーは圧縮側の動作しかしないのですが、デジタルエフェクトの発達により自由な動作が増え、圧縮ではなく伸長する方向に動作できるコンプレッサーが存在します。圧縮は音量を抑える方向だったので、その逆。

基準値を超えた信号をさらに大きい音にできるコンプレッサーがあるのです。

例えば以下のWaves C1コンプレッサーは、レシオの設定で1未満の設定が可能です。

レシオというのは、圧縮率。

1:1の場合は「入力1に対して出力1」、つまり圧縮しないという設定です。レシオが1未満ということは、入力された状態よりも音が大きくなるということになります。グラフも通常のコンプレッサーと異なり、スレッショルド以上が上に上がるカーブをしていますね。

カラオケトラックの波形を見てみましょう。

一般的にドラムの音というのは大きめなので、カラオケの波形ではドラムのアタック音が目立つようになります。目立っているピーク部にあわせたスレッショルドにすれば、ピーク部の音量だけ大きくなり、結果、音源全体の音量差(=ダイナミックレンジ)が広くなります。

しかし欠点は、全体に対して動作してしまうということです。

バスドラム等にあわせて動作させて、バスドラムは上がったけど、他のものも上がってしまうということです。これまでの回同様ですが、動作を限定的にする必要があります。お気づきかもしれませんが、ダイナミック・イコライザーで問題を解決することができます。

ダイナミックEQの設定

基本的な設定

これまでの記事でダイナミック・イコライザーをコンプレッション側(音量を下げる方向)に使う設定を勉強してきました。基本的な設定方法は同じですが、[RANGE]を動かす方向だけが異なります

まずはバスドラムをダイナミックEQで下げ設定をしてみましょう。[FREQ.][Q]で帯域を設定し、[RANGE]を-10dB程度に、[ATTACK]を最速にして[THRESHOLD]を適正な値に設定します。

これでバスドラムだけ下げるという設定を作ることができました。

続いて、[RANGE]を変更します。[RANGE]をマイナス方向に設定すると音量を下げることになります。ということは、プラス方向に設定すると音量を上げる設定になるということです。やってみましょう。

見事にバスドラムだけ上がってくるのがわかると思います。

もちろん元音源のミキシングでバスドラムの音量が極度に小さい場合や、バスドラムの帯域に他の楽器がたくさんいる場合などは思ったようには上がってきません。しかし、周波数帯域と時間を制限した動きを作ることで、不可能と思われるステレオ音源の中身を操作することができるようになることが、おわかり頂けると思います。

MS処理の設定

F6の場合、ダイナミック・イコライザーでコンプレッションをする時同様にMS処理を行うことができます。バスドラムの場合センター定位の場合がほとんどなので、M(=MID)領域だけを対象に処理をすれば十分です。

F6でMIDを選択して、さらに限定的な処理を施しましょう。

他の音を基準に動作させる

これまではカラオケ音源に含まれるバスドラムを基準に動作させてきましたが、カラオケ音源に十分なバスドラムが含まれない場合はどうすれば良いでしょう。

元音源の素材が不十分である場合は外部からの入力で動作させる、つまり、サイドチェインを使うことで動かすことができます。例えば4分音符にあわせてバスドラムを上げたいという場合は、4分音符で音が出るものがあればなんでも元ネタとして使うことができるのです。

ダイナミック・イコライザーを動かすための音として、以下のような4分音符のドラムの音を打ち込みました。

この音自体は使わないので、どんな音でも大丈夫です。また、トラックはフェーダーを下げて、音が出力されないようにしてください

続いて、カラオケトラックのF6でサイドチェイン入力の設定を行い、打ち込んだ4分音符の音をキー入力として使用します

音量を0dBに、プリフェーダーで設定しましょう。

F6はブーストしたい帯域を指定します。バスドラムをブーストしたいので、先程設定したバスドラムが多く含まれる帯域を指定したままで良いでしょう。[SC SOURCE]を[EXT]に設定して、再生してみましょう。

入力した4分音符の音にあわせてバスドラムの帯域がブーストできるのがわかると思います。

この手法は今回題材としているようなバンドPOPSではなく、EDM等の4つ打ち(常に4分音符でバスドラムが鳴っている曲)の曲で有効な手法です。また、打ち込む内容を変えることでサイドチェイン動作を自由自在に変えることもできます。

このように、ダイナミック・イコライザーとサイドチェインを使うことで固定化されたカラオケトラックの特定の音を(ある程度)操作することができます。


4回に渡ってダイナミック・イコライザーの使い方をお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。

ダイナミック・イコライザーは近年出てきたエフェクトで、もし昔あったら、ミキシングそのものが大きく変わったエフェクトのひとつだと思っています。昔の自分に教えてあげたいエフェクトとも言えます。

様々なメーカーから発売されていますが、動作原理は同じです。お伝えしてきたように、動作原理を理解していることで、新しい使い方を思いつくことができます。自動で設定してくれるものも多くありますが、F6のような使いやすい全手動エフェクトで動作原理を覚えてみてください。ミキシングの幅が広がりますよ。

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その4 カラオケ(オフボ)のキックだけ上げる方法 ダイナミックEQをブースト側に使う