埋もれないボーカルの作り方 サイドチェインxダイナミックEQ Waves F6で始めるダイナミックEQ その3 ダイナミックEQの使い方 [難しさ:ムズい vol.066]

筆者おすすめのダイナミックEQ Waves F6を使ってダイナミック・イコライザーの使い方を覚えるシリーズの第3回。

今回はコンプレッサーで使われるサイドチェインをダイナミック・イコライザーで使うというテクニックをお届けします。ボーカルとオフボ(カラオケ)のミキシング(歌ってみたMIX)を例にとり、ダイナミック・イコライザーで埋もれないボーカルを作る方法をお伝えします。

前回の記事を読んでいない方は前回の記事もご覧ください。

動画版もあります。音があるのでわかりやすいと思います(^o^)

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サイドチェインとダイナミック・イコライザーの組み合わせ

前回までの使い方は、動作の基準となる音と対象が同じトラック(同じ音)という使い方でした。

これに対して動作の基準を他の音(他のトラック)にする使い方があります。コンプレッサーと全く同じで、サイドチェイン動作と呼ばれます。

サイドチェインの仕組み
サイドチェインの仕組み

前回までは

ボーカルの音で:ボーカルの音を下げる

という使い方でしたが、今回紹介するサイドチェインは

ボーカルの音で:カラオケの音を下げる

という使い方になります。ボーカルの音は変化せず、カラオケの音が変化する使い方となります。サイドチェインを使いこなすことがミキシング上達の近道とも言えますので、頑張って挑戦してみましょう。

ダイナミック・イコライザーのサイドチェイン動作を理解するためには、コンプレッサーのサイドチェイン動作を理解する必要があります。以下の記事でぜひ勉強してみてください。

サイドチェインで埋もれないボーカルを作る

埋もれない音になる仕組み

ダイナミック・イコライザーのサイドチェイン動作、最もわかりやすい使用例として歌ってみたMIXでのボーカル処理をお伝えします。

カラオケとボーカルをミキシングする際、ボーカルを目立たせるためにはカラオケの音量を下げれば良いのです。

しかしそれでは迫力が出ませんので、カラオケを出す→ボーカルが聞こえないのループに陥ってしまいます。原因はカラオケの音量全部を調整していることにあります。ボーカルと干渉する部分だけカラオケの音を下げることができれば、迫力を失うことなくボーカルが埋もれない音を作ることができます。

ではボーカルの音が多い帯域だけイコライザーでカットするとどうでしょうか。

常時イコライジングしてしまうとカラオケへの影響が大きく、カラオケそのものの音のバランスが損なわれてしまうことがわかります。

常時ではなく、「ボーカルの音がある時だけカラオケのボーカルの帯域を下げることができれば良い」ということになります。これは、「〜の時だけ〜の帯域をカット/ブーストする」というダイナミック・イコライザーの動作とピタリ合致するものです。

ということで、サイドチェインを用いて「ボーカルの音がある時だけボーカルの帯域を下げる」という動作を作り出してみましょう。

設定の手順

基本的にはコンプレッサーでサイドチェイン動作を使う場合と同じ手順です。

STEP1 カラオケトラックにF6を挿入する

受け側(ここではカラオケ)のトラックにF6をインサートします。

STEP2 カラオケトラックのF6にボーカルの音を分岐して送る

続いてボーカルの音をカラオケトラックのF6に送る信号経路を作ります。

Cubaseの場合は受け手側であるカラオケトラックのF6側で経路を作ります。DAWによっては送り側(バスドラム側)で先に操作し、受け手側で作った信号経路を指定するという2段階の操作が必要になることもあります。

カラオケトラックに挿入したF6の上部メニュー、[Side-Chainを有効化]と[▼Side-Chain入力を設定]という2つのボタンがあります。[Side-Chainを有効化]を点灯させ、[Side-Chain入力を設定]ボタンを押しましょう。

続いてキー入力を何にするか(サイドチェイン動作のための信号)を選択します。

[Side-Chain入力を追加]を選択し、ポップアップウインドウでキー入力を選択。ここではボーカルトラックを選択します。

STEP3 音量と分岐方法を選択する

以下のようにサイドチェイン入力(キー入力)が追加されました。

Cubaseの場合はこの画面でキー入力の信号の大きさを調整できます。逆説的にはこの画面で音量が小さくなっているとサイドチェイン動作に問題がでてきます。この段階では分岐した信号をそのままの音量で送る設定となる[0dB]になっているか確認しましょう(以下の画像の赤枠)。

また、キー入力(Side-Chain入力)を分岐するポイントをフェーダーの前後(Pre/Post)から選択することができます(上の図の緑枠)。ポストフェーダーに設定するとボーカル音量にあわせて変化してしまいますので、ここではプリフェーダーを選択しましょう。

上の図では左半円のマークになっており、これはポストフェーダー状態です。

クリックすることで以下のように点灯・右半円になり、プリフェーダー状態になります。プリフェーダーに設定すると、ボーカルトラックのフェーダーを下げても分岐される信号の音量は下がりません。

プリフェーダーとポストフェーダーをおさらいしておきましょう。

  • Pre(プリ)フェーダーセンド:バスドラムのトラックのフェーダーの前で分岐=バスドラムの音量を下げてもサイドチェイン動作に変化がありません
  • Post(ポスト)フェーダーセンド:バスドラムのトラックのフェーダーの後で分岐=バスドラムの音量を下げるとサイドチェイン動作が弱くなります

あまり音量変化のないトラックをサイドチェインのキー(トリガー)にする場合はポストフェーダーでも構いませんが、ボーカルのようにフェーダーの上下が激しいトラックをキーにする場合はフェーダー操作に影響されないプリフェーダーが適しています。

そのうえで、フェーダー操作による音量変化もサイドチェイン動作に影響させたい(意図的に音量変化を動作に組み込みたい)場合は、ポストフェーダーを使ってみましょう。

STEP4 キー入力にあわせてダイナミック・イコライザーを設定する

続いて、ダイナミック・イコライザーの動作モードを通常モード(INT=Internal=キー入力が内部)からサイドチェインモード(EXT=External=キー入力が外部)に切り替えます。ここではバンド3をサイドチェインに切り替えてみましょう。バンド3の[EXT]ボタンを点灯させます。

すると、[THRESHOLD]つまみの周囲のメーターが、ボーカルトラックにあわせて動くようになります。これでボーカルの音をキーとして動作するようになりました。あとはダイナミック・イコライザーを他の音源と同じように設定します。

ボーカルがある時にボーカルの帯域が下がるようにするため、[FREQ.(周波数)]はボーカルの帯域と同じような場所に設定します。500-700Hz程度に設定するとボーカルの厚みが出て聞こえるようになります。[Q]は広めの設定が良いので、まずは[1.0]からで良いでしょう。

[RANGE][ATTACK]を強めに設定して[THRESHOLD]を下げていくのは同じですが、カラオケに動作させる場合はカット量が大きいと影響が大きくなってしまいますので、[RANGE]を通常よりも弱めに設定すると良いでしょう。

最後にMS処理の設定をしておきましょう。

できるだけカラオケへの影響が少ない方が良いので、ボーカルの居場所であるセンター以外の部分には影響が出ない方が良いということになります。したがって、F6のMS設定で[MID]を選択することで、センター以外への影響を最小限にすることができます。ボーカルのための処理をする場合には非常に有効な機能です。

これで聞いてみてください。

ボーカルの音量を上げていないのにボーカルが聞こえやすくなっているのがわかると思います。これでボーカルを聞こえやすくするための選択肢がひとつ増えましたね。フェーダーを上げずに聞こえるようになる手法を持っていると、ミキシングは上達していきます。難しい技ですがぜひ理解して、挑戦してみてください。


次回は最後になりますが、ダイナミック・イコライザーが「コンプレッション・イコライザー」ではなく、「ダイナミック・イコライザー」である所以をお伝えしましょう。次回の内容が理解できればダイナミック・イコライザーの使い方は網羅できたと言って過言ではありません。お楽しみに!

シリーズ記事

その1 ダイナミックEQの概要と使い方 & Waves F6レビュー
その2 歌ってみたボーカルMIX 痛い音軽減&部屋鳴りの除去 アコギの響き改善
その3 ボーカルが大きく聞こえる大技!ダイナミックEQ x サイドチェイン
その4 カラオケ(オフボ)のキックだけ上げる方法 ダイナミックEQをブースト側に使う

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