プラグインの設定見せます!〜ミキシング徹底解剖・マスタートラック編〜 題材曲:大正浪漫/YOASOBI by Pistaさん

今回のミキシング講座は、実際にミキシングをした音源について、どのようなエフェクトをどのような設定で使っているかを徹底解剖していきます。題材曲はPistaさんのアレンジカバー歌ってみた作品です。歌ってみたなのにマルチトラック!とても豪華な作品に仕上がっています。ミキシングさせていただきました。

大正浪漫 / YOASOBI【アレンジカバー】

本記事の内容は動画版もあります。動画版は音付きですので、ぜひ動画版とあわせてお楽しみください。

プラグインの設定見せます!〜ミキシング徹底解剖・マスタートラック編〜 [vol.042 難しさ:ムズい] 音源:Pistaさんの大正浪漫/YOASOBIアレンジカバー

マスタートラックのプラグイン

マスタートラックのプラグインと設定について紹介していきます。マスタートラックには以下のような順番でプラグインが挿入されています。

マスタートラック 左列→右列の順でプラグインが並ぶ

続いてはそれぞれのプラグインを下流側から説明していきます。音作りというのは結果論なので、下流から理解していくほうが理由がわかりやすいのです。

ちなみに大きく分けると4つのグループになっています。

  • GROUP A:1〜3(音質調整セクション)
  • GROUP B:4(ステレオ調整セクション)
  • GROUP C:5〜6(音圧調整セクション)
  • GROUP D:7(計測セクション)

もちろんそれぞれの役割がかぶることもありますが、概ねこの4つのグループで組み合わせて調整しています。

Melda Production MLoudness Analyser

無料のラウドネスメーターです。メータープラグインなので音質変化はありません。最終段に挿入し、レベルの監視を行うのが目的です。有料、無料、色々なラウドネスメーターを使いましたが、このメーターに戻ってきました。無料ですが無駄がなく使いやすいです。

Melda Production MLoudness Analyser

[TARGET]を[-12LUFS]に設定し、基準値としています。(※この設定は独自設定です)ラウドネスメーター設定の詳細や使い方は以下の記事で説明しています。

Waves L1+ Ultra Maximizer

Wavesが世界に誇るマキシマイザープラグイン。[Ceiling(シーリング)]で指定したレベルに合わせて調整してくれます。コンプレッサーやアナログリミッターと異なり先読み動作なので、レベルオーバー(設定値を超えること)は起こりません。

Waves L1+ Ultra Maximizer

音圧をアップするプラグインとされていますが、僕の場合は「音圧を調整する」イメージで使用しています。現代はあまり大音量を要求されませんから、ミキシング段で過度に音圧アップを行うシチュエーションにはなかなか遭遇しません。よって、最近ではL1でガンガンにつぶして音圧を上げるという使い方はあまりしません。(昔はやりました)

音圧を上げるためではなく、瞬間的なピークの発生によって歪が発生してしまうことを防ぐ最後の防波堤として使っています。したがって設定値も弱めの設定になっています。

  • THRESHOLD:-2.0
  • OUT CEILING:-1.0
  • AUTO RELEASE:ON
  • DOMAIN:TRUEPEAK

以下の図のように、瞬間的なピークだけ抑えるイメージで設定しています。ピークを抑えることでピークにあわせたレベル設定をする必要がなくなり、ミキシングしやすくなります。ゲインリダクション(音を潰している量)は瞬間的に1−2dB程度なので、音質にもほぼ影響を与えません。

トゥルーピーク調整のイメージ図
トゥルーピーク調整のイメージ図

このマキシマイザーによって、トゥルーピークが適切に抑えられた音源になります。

Sonnox Oxford Inflator

Maximizer L1の前段にいるのはSonnox Oxford Inflator。かれこれ20年くらい?愛用しています。Oxford Inflatorは分類で言えばリミッターやマキシマイザーに近いものですが、どちらでもないです。リミッターにやや近いとは思います。

Oxford Inflatorは、単なるリミッターではありません。これ以上のレベルは無理、と思われていた素材にかけることで、さらなる音圧をかせぎ、聞き取りにくかった小さな音の存在感を向上させたい。でも、いかにもコンプやリミッターをかけました、という音にはしたくない。そんなマスタリングエンジニアやミキサーの要望に応えて開発されたOxford Inflatorは、単にピークを抑えるのではなく、独自のアルゴリズムによって聴感上の音量をかせぐことに成功しています。

メディア・インテグレーション様サイトより引用

使い方、目的としては、L1+に入る前の音圧コントロール、そして倍音の付加です。L1+のみで音圧を上げると音質変化が激しくなりますので、音圧はInflatorでアップ(コントロール)して、L1+ではピーク潰しだけしているイメージ。つまり2台セットで動作しています。

Sonnox Oxford Inflator

非常に便利なプラグインで、EFFECTフェーダーを上げれば音圧がアップし、同時に倍音が付加され音がふくよかになるイメージです。アナログ機器を通すような感じです。設定値もいつも同じような設定になります。

  • INPUT:-1.02dB
  • EFFECT:42%
  • BAND SPLIT:ON
  • CURVE:19.8
  • OUTPUT:0.0dB

使い方はかんたんで、EFFECTを上げるだけなのです。その後CURVEで音質を調整します。

L1+とInflatorは最終段の調整であり、主にレベルオーバーを防ぎつつ、ターゲットの音圧に調整することを目指しています。マキシマイザーらしい音になるのを避けるため2つのプラグインを組み合わせて音の温かみを残しつつ音圧を自在にコントロールできるようにしています

音圧は「上げている」のではなく、「コントロールしている」ところがポイントです。

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Sonnox
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T-RACKS QUAD-IMAGE

音圧調整をする前にステレオイメージ(ステレオの広がり)を調整するためのプラグインがQUAD-IMAGEです。低域〜高域まで4つの帯域に分けて、それぞれの左右の広がりを調整することができます。

ステレオイメージの調整では音量も上下しますし、音圧も変化します。広がりを変えているだけなので音量は変わらないような気がしますが、いえいえ、むしろ大きく音量・音圧は変化します。したがって、イメージャー(ステレオコントロールフェクト)はマキシマイザー等の前段に挿入する必要があります

T-RACKS QUAD-IMAGE

中央のグラフを上下させることでステレオ幅を調整します。

グラフの通り、低域をかなり広げていることがおわかりいただけるかと思います。低域は左右の広がりが無い方がシンプルに通る音になります。一方で、シンプルすぎる音だと音像が逆三角形になってしまい、曲全体の安定感に欠けることがあります。

この問題に対処するために、低域のステレオ感を広げる調整をしています。

もちろん広げすぎるとベースが聞こえにくくなってしまいますので、音を聞きながら調整が必要です。また、シンセベース等もともとステレオで作られたベースには有効性が低い技です。ライン録音のエレキベースに有効な技と言えます。

https://www.ikmultimedia.com/products/trquadimage/?L=JP

T-RACKS Precision Compressor / Limiter

ここより上流は音の調整を行っているセクションです。最下流に位置するのはコンプレッサーであるT-RACKS Precision Compressor/Limiterです。このプラグインはNeve 33609コンプレッサーをモデリングしたものです。なめらかであり、かつコシのある音が特徴。もちろん実機とは異なりますが、同じような傾向を持ったプラグインです。

ということで、コンプレッサーによる音量調整効果よりも、33609のような音質への変化を期待した起用です。設定も弱めの設定になっています。

T-RACKS Precision Compressor / Limiter

T-RACKS Master EQ 432

こちらも実在するSontec MES 432というマスタリング用イコライザーをモデルにしたプラグインです。先程のPrecision Compressorは音重視でしたが、MEQ432はきっちり音作り用のイコライザーとして使用しています。

T-RACKS MEQ 432
  • HI SHELVING:+1.5
  • LO:5/140Hz/+2
  • MID:5/420/+1.5
  • HI:5/9500Hz/+2

高域シェルビングブーストは僕の定番なので、アゲアゲです。LO/MID/HIのEQはそれぞれ以下のような意味合いをもたせています。

  • LO:楽曲の重心を下げる、安定感を出す
  • MID:楽器のコード感を強めてリッチさを出す
  • HI:ボーカルやブラスのきらびやかさを強調する

ブーストしてもスムーズにブーストされ違和感が少ないのが特徴です。僕の場合は後述のF6-RTAと組み合わせて使っていて、F6-RTAはカット、EQ432はブーストという役割分担をしています。餅は餅屋という感じです。

Waves F6-RTA

F6-RTAは僕の中ではイコライザーのスタンダード。ダイナミックEQとされていますが、普通のイコライザーとしても使えますし、優秀です。マスタートラックの初段に挿入し、不要な音をカットして引き締めるのに使っています。

Waves F6-RTA

LCFと1/2/3は不要音のカットに使っています。マスタートラックにおけるこういう使い方は本来リニアフェイズEQの方が適しているのですが、使いやすくて音がいいリニアフェイズEQになかなか巡り会えず今に至ります。F6-RTAは音質変化も少ない部類なので、こういったマスタリング的用途でも有効です。

バンド5は「5M」という表記になっています。これはM/SのM(ミッド成分)に対してのみ有効という意味です。M/SというのはM=MID、S=SIDEのことで、音を真ん中の成分とそれ以外の成分に分けて調整する方法です。つまりここでは、真ん中の成分のみイコライザーをかけているということになります。

この帯域(3-4kHz)は音圧を上げていくと耳に痛くなってくる帯域で、この帯域をコントロールすることで楽曲の雰囲気をシャープにしたりまろやかにしたりできます。-2.0dBのカットに加えて、さらにダイナミックEQで-3.5dBカットしています。ボーカルの音量があがって来た時だけ動作するようになっています。


マスタートラックの音作りを解剖してきましたが、いかがだったでしょうか。

動画を見ていただくとわかりますが、マスタートラックのプラグインは全部OFFにしても聞けない範囲ではないです。つまり、マスタートラックのプラグイン無しである程度完成された状態を作った上でマスタートラックの調整をしているということです。マスタートラックでミキシングを調整しようとしてはいけない、ということです。

次回は続きでドラムトラックの解剖をしていきたいと思います!お楽しみに。

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