ボーカル編集Level.2 実録!Melodyne修正 GarageBand 歌ってみたMIXテクニック vol.8 最終回

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みなさんこんにちは!歌ってみたで覚えるMIXテクニック講座もついに最終回です。今後もレコーディング、ミキシングなど音のことに詳しくなりたいみなさんに向けたコンテンツを発信していく予定ですが、歌ってみた編は今回が最後になります。

最終回では前回に引き続きボーカルのピッチ編集を取り上げます。Melodyneというボーカル編集用ソフトを使ってボーカルのピッチ修正をしていきますが、今回は動画をまずはご覧ください。(バナーをクリックしてください)

というのも、1コーラスにわたっての修正作業をお届けする内容ですので、動画で観ていただいた方がわかりやすいはずです。この記事では、動画内で出てきたテクニックを解説していきますので、動画を見た後にご覧いただければ理解が深まるでしょう。

それでは参りましょう。

Melodyneのインストール方法

Melodyneのインストール方法はこちらで解説しています。

Melodyneに解析させましょう

下準備として、Melodyneに音を取り込む必要があります。Melodyneの[Transfer]を点灯させた状態でGarageBandを再生し、ボーカルの音をMelodyneに取り込みましょう。

取り込む作業は曲の最初から最後までまとめて取り込んでしまうことをおすすめします。分割して取り込むとつなぎ目の部分を2回録音してしまうなど、トラブルが起こりやすくなります。

取り込んだら修正作業を始めます。まずは全て選択し[ピッチを修正]マクロを起動。選択した音を(ある程度)一括修正します。これは前回の記事を参照してください。

全体を一括修正したら個別修正を始めますが、ここでひとつ。

修正作業はセクションごと、センテンスごとに行いましょう。

歌詞1行ごとに修正作業をして、チェックをして、OKを出していくイメージです。このように細かくOKを出していくことで作業漏れを防ぐことができます。

基本的な作業フロー

  • 再生し、気になる箇所をチェックします
  • Melodyneで気になる音をクリックして発音させ、正しく聞こえる高さに修正します
  • 再生して正しく聞こえるかどうかチェックします

この繰り返しです。

ポイントは、自分の耳を使うこと。

表示されている数字やピッチカーブの情報だけでは気持ちよく聞こえる高さに修正できないものです。必ず耳で聞いて判断するようにしましょう。

自分の耳で聞いて考え判断することで、自分のピッチ感覚も養われますよ。

テクニック1:適切な場所で音を分割する

下の画像をご覧ください。

赤枠の部分は「躓いて転んでたら」の「ころんで」の部分ですが、「ろ」と「ん」が同じ音として認識されています。これはMelodyneとしては音ひとつずつに切ったつもりなのですが、実際は切れていないという状態です。

Melodyneは2つの音を一緒に解析して音の高さを判定してしまいますので、動作の精度が落ちてしまいます。

このような音を見つけたらダブルクリックして音を分割し、個別に修正作業を行いましょう。

テクニック2:ピッチの傾斜を修正する

ロングトーンではピッチがフラットになっている方が聞きやすいのですが、実際は傾斜がついていることがよくあります。特に最初は合っているのにだんだん下がっていくカーブになっている場合は、ずれて聞こえます。

このようなケースでは、ロングトーンをいくつかの音に分割し、ピッチの傾斜を修正していきます。多くの場合は音の終わりの部分を切り離し、ピッチを修正すると綺麗に聞こえます。

注意点は切り離した継ぎ目の部分。ここでノイズが出ることがあります。ノイズが出てしまったら再度ダブルクリックして結合し、分割するポイントを変更しましょう。

尚、Melodyneの上位版では切り離さずに傾斜の角度を変えることができます。

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テクニック3:ビブラートの幅を修正する

ビブラートは音を揺らすテクニック。うまくいくと上手に聞こえますが、揺れ幅が一定でない、不定期になっている場合はピッチが悪く聞こえます。

このような場合はビブラートの揺れ幅を狭める修正をしてみましょう。ビブラートの山ごとに分割し、それぞれ調整することができます。

また、ビブラートはどこが正解の高さなのか画面上では判断しにくいものです。再生しながら耳での判断が基本になりますが、わかりにくい時はビブラートの波の中心が狙った音の高さになっているかを確認してみましょう。

テクニック4:検出できていない音・苦手な音を分割する

Melodyneには苦手な音があります。苦手な音は無理やり修正すると変な音になったり、ノイズになったりします。

また、すべての音のピッチが検出できるかというとそうではありません。ピッチカーブが表示されていない部分はピッチ検出ができていません。前述の苦手な音は検出できないことが多いです。検出できていない部分を修正するとノイズ化することが多くあります。

この対策として、修正を始める前に検出できていない音を切り離してしまうことが有効です。

方法は簡単で、ピッチカーブが表示されていない部分をダブルクリックして分割します。分割された後はピッチカーブがある音だけを操作し、切り離された苦手な音は触らないようにします。

テクニック5:しゃくりは着地点を気にする

しゃくりという歌い方があります。

発音する際に目的の音の高さよりも低い音から発音し、次第に目的の音にあげるような歌い方です。カラオケの採点でもしゃくりを検出してくれますので、馴染みのある人も多いでしょう。

このしゃくりという歌い方においては、最初の音よりも着地点を気にするようにしましょう。着地点が合っていれば最初の音は多少ずれていても気にならないものです。

ここから先は好みですが、しゃくりの音も曲で使う音になっている方が僕は好みです。下の例はAメロの「転んでたら」の「ら」の部分ですが、「ミ」の音が着地点で、「ミ」に向かって「レ」からしゃくって歌っています。

※ミ=E、レ=D

Cメジャーというキーで使う音は「ドレミファソラシド」ですが、例えば、「ミ」の音に着地するためのしゃくりが「ミb」から始まることがあります。

このままでもそんなに気にならないと思いますが、聞いてみて違和感があるようであればしゃくりの音もスケール内の音(この例の場合は「レ」)に修正してみると良いでしょう。

曲に出てくる音を認識しよう

修正は正しい高さを知っている必要があり、正しく理解するためには音楽の知識が必要不可欠になってきます。

例えば題材の「全力少年」はCメジャー(ハ長調)で始まる曲なので、使う音は基本的には「ドレミファソラシド」です。

しかしBメロ頭の「試されてまでも」の「て」は「シb」という、Cメジャーでは使わない音が出てきます。これが非常にカッコいい音なのですが、この音を理解するには音楽の知識が必要です。

曲の中で使われる音を理解することで作業スピードも向上しますし、何より楽曲への理解が深まるでしょう。最初は難しいと思いますが、音階(スケール)の話くらいでしたらそんなに難しくありません。

少しずつ勉強していくと面白いと思いますよ!

最初は気にならないのに修正していたらピッチが気になる理由

最初に聞いたときはそんなにずれて聞こえなかったのに、作業を進めているとどんどんピッチが悪く聞こえてくるものです。また、1音だけ修正しようと思って修正すると、隣の音がずれて聞こえてくることもあります。

これは修正作業によって正解を作ってしまったことと、隣の音との音程(ピッチの間隔)が変わってしまったことが原因です。

上手な人の歌でも細かいピッチは比較的曖昧なものです。上手な人は無意識のうちに隣の音との音程を調整し、トータルで綺麗に聞こえるように歌います。

修正作業によってこのバランスや音程が崩れてしまうのです。

視覚で例えると、白いものはあたっている光の色で本来は様々な色になっています。黄色っぽかったり、赤っぽかったり。この色々な白の隣に「完璧な白」のものを置くと、途端に黄色っぽい白は黄色に、赤っぽい白は赤に見えてきます。

人間の間隔は曖昧で、自動調整をしているのです。ここに正解を作ることでずれがバレてしまう訳です。

対策としては、隣の音も修正するか、修正対象の修正度合いを弱めるしかありません。

音楽とは実は曖昧なもので、完璧なピッチであることだけが正解ではないと思える事例です。

通しで聞いてチェックしよう

部分ごとに聞いて完璧だと思っても、通して聞くとずれて聞こえることがあります。リスナーさんは通しで聞きますので、流れの中で自然に聞こえなければなりません。

セクションごとの修正が完了したら必ず通しでチェックするようにしましょう。

さらに完成度をアップするテクニック

Melodyneでの修正が完了したら、Melodyneの後にピッチを自動修正できるプラグインを挿入しましょう。この講座で紹介したMelda ProductionのMAuto PitchでOKです。

Melodyneで修正された音を通すことでさらに正しいピッチに近づき、より綺麗に聞こえる効果があります。この使い方をする場合は、反応速度を調整するパラメーターを遅く設定しましょう。MAuto Pitchの場合は[SPEED]というパラメータを下げます。10-20%程度の数値で十分でしょう。

まとめ

ボーカルを編集してきましたがいかがだったでしょうか。

僕の修正作業では、5分の曲、ボーカル1人の場合で約2時間の作業になります。正しいピッチになると不思議と音量も大きく聞こえてくるものです。音楽では響きが重要で、ボーカルのピッチが正しくなることで他の楽器との響きが美しくなり、綺麗に聞こえてくることで、大きく聞こえるような効果があります。

この作業はMIXをする人が行うことが多いのですが、歌い手さんが自分で修正できるようになると良いかなと思っています。また、歌い手さんが自分で修正作業をすると、飛躍的に上手になるでしょう。正解を知るということは重要なことで、ボーカル編集に立ち会った歌い手さんは急に上手になるものです。

音楽とは正解のないもの。

しかしピッチを正解に向けて修正する作業がボーカル編集。哲学的でもあり難しい話ですが、「自分が気持ちよく聞こえるように修正する」ということをひとつの目標に挑戦してみてください。

みなさんの作品を楽しみにしています!

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