ボーカルの音量調整 わかりやすいコンプレッサーの説明 GarageBand 歌ってみたMIXテクニックvol.4

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この講座も第4回になりました。ご覧いただきありがとうございます。

ここまでの講座でMIXとは何か、音作りとはどんなことをするのか、うっすらと分かってきたのではないでしょうか。今回はボーカルの音量調整とコンプレッサーというエフェクトについてお伝えしていきます。

動画と連動した記事ですので、動画もあわせてご覧ください。

<<https://youtu.be/p-Y60bTJQvc>>

※この記事で使用している全力少年の音源は現在販売を終了しています。

コンプレッサーを勉強したい方はこちらの記事もどうぞ\(^o^)/
コンプのアタックタイムについて考える 音の立ち上がりはどうなっている?
コンプのリリースタイム、どうする? 仕組み・動作と設定方法の目安

曲の中には聞こえやすいと聞こえにくいがある

まずはボーカルのトラックを観察してみましょう。

波形を観察すると、大きさが一定ではないことがわかります。波形においては上下の幅(振幅と言います)が大きいほど音量が大きく、逆に上下の幅が小さければ音量も小さくなります。

サビなどのメロディの音が高いセクションでは音が大きく、Aメロなどの音が低いセクションでは小さいことが多いでしょう。

こちらの画像は題材にしている全力少年のボーカルデータですが、赤枠の部分は音量が小さくなっていますね。歌詞で言うと「よろめきながら進む」と「拭えなくなっていた」の部分で、両方とも音が低い部分です。

このようにセクションごとの音量差は波形を見るとすぐにわかります。さらに、セクションどころか文字ごとに音量差があることがわかります。

別の視点では、同じ音量、音の高さでも聞こえやすい音と聞こえにくい音があることがわかります。

そう、歌詞内容による聞こえやすさの違いです。「あ・い・う・え・お」でもそれぞれに聞こえ方が違いますし、「あ・か・さ・た・な」でも違います。

音量、音の高さ、歌詞の内容など様々な内容によって「聞こえやすさ」に差が出ます。歌ってみたではリスナーさんが聞きたいのは「ボーカル」ですから、聞こえにくい部分があるとストレスになってしまいます。「聞こえにくい」を解消することはMIXの役割のひとつです。

ちなみに、歌詞を書くのが上手な人の歌詞は「聞こえやすさ」を考慮した内容になっています。サビ頭の文字の母音は音が聞こえやすい「あ」や「お」になっていることが多いです。気にして聞いてみてください。

音量調整の下準備〜リファレンス音源を決めよう〜

音量調整をしていくわけですが、そもそもどのくらいの音量に調整するのが良いのかわからないですよね。目標が無いと迷走しますので、まずは目標を作りましょう。普段聞いていて心地よいと感じる作品をいくつかピックアップして、自分の制作環境で再生します。

この時に、小さな音量で聞いてください。

細かい作り込みでは大音量で聞く必要がありますが、音量バランスを決める時は小さい音の方が良いです。また、イヤホンよりはスピーカーが向いています。パソコン本体のスピーカーでも良いので、スピーカーを鳴らして聞いてみてください。

小さな音量でピックアップした音源を再生し、オケ(カラオケ音源)とボーカルの音量がどのような関係になっているのかをよく聞きます

このように参考にする音源を「リファレンス音源」といいます。このリファレンス音源は頻繁に変更しないことがポイント。様々な環境、時間、状況でこのリファレンス音源を聞くことで、自分の基準値が育っていきます。

ちなみに筆者のリファレンス音源は以下のような音源です。ご参考までにどうぞ。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1ZNSFya2o9uBiJ0IgWvPUo6dL2sKB2y2BSRhP-CLsOs4/edit#gid=0

サビの音量を基準に調整しよう

ターゲットとなるバランスが見えてきたら、制作中の曲の中で「ボーカルの聞こえやすさを判定する場所」を作りましょう。

最も適したセクションはサビです。サビはその曲で伝えたいメッセージが詰まっている場所ですから、基準を作るならサビが適切でしょう。サビにフォーカスして調整するとボリュームの設定値が変わってくるでしょう。

リファレンスの音源と聴き比べながら、同じくらいの音量になるようにボーカルの音量を調整してみてください。

題材の全力少年では、オフボ(カラオケ)は-3dB、ボーカルは-2dBという数値になりました。

この状態で、Aメロの「よろめきながら進む」と「拭えなくなっていた」の部分を聞いてみてください。サビと比較すると小さくて聞こえにくいことがわかります。また、サビの冒頭でも「積み上げたもの」は聞こえますが、その後の「ぶっこ」の部分は聞こえにくいことがわかります。

聞こえないところを聞こえるようにする 〜フェーダーオートメーション〜

解決策はとても簡単。この部分だけフェーダーを上げれば良いのです、が、手動ではかなり大変です。そこで、「オートメーション」という技を使います。上部メニューの[ミックス]から[オートメーションを表示]を選択します。

すると以下の表示に変わります。

それぞれのトラックの上にうっすらと線が出ていることがわかりますか?この線はフェーダーの位置を表しています。どこでも良いので、線の上でクリックしてみましょう。白い点が現れます。

さらに以下のように3箇所点を作ってみましょう。

この点を編集点と呼びます。両端の編集点はそのままに、中2つの編集点を以下のように上げて台形を作りましょう。

おわかりになりましたか?
この線の通りにフェーダーが自動で動いてくれる機能、それがフェーダーオートメーションです。上記の例では台形の上辺の部分では音量が大きくなって再生されます。再生して聞いてみてください。

では先程聞こえにくかったセクション、「よろめきながら進む」と「拭えなくなっていた」の部分をオートメーションで音量アップしましょう。

さらにサビの部分で聞こえにくいところを探して音量を上げてみましょう。ちなみに、このフェーダーオートメーションを作る作業を「フェーダーを書く」と表現します。

いかがでしょうか?

聞こえやすくはなりましたけど、、、なかなか大変ですよね。しかも、もっと細かく調整したいな感じてしまいます。ひとつの音の中でも音量差があるためです。

フェーダーを書いていただいて申し訳ないのですが、次のセクションの説明のために一旦編集点をすべて削除しておいてください。

コンプレッサーを使ってみよう

音量調整をある程度自動化できる素晴らしいエフェクトがあります。「コンプレッサー(Compressor)」です。コンプレッサーは音以外の世界では圧縮機という意味。音の世界でも同じで、音を圧縮するエフェクトです。

圧縮とは?

音の大きい部分を下げて、大きい部分と小さい部分の差を少なくする、つまり音量差を圧縮するという動作をしてくれます。

GarageBandではトラックを選択後、画面下のSmartControlセクションに出てくる青い機械のところに[COMPRESSOR]という部分があります。

最初はスイッチがオフになっていますので、スイッチをクリックしてオンにしましょう。オンになると青いランプが点灯します。

この状態で[AMOUNT(アマウント)]というつまみがありますので、再生しながら[AMOUNT]を回してみてください。以下のように[AMOUNT]の右のメーターが音量にあわせて点灯します。

このメーターは一般的には「GR(Gain Reduction)」メーターと呼ばれ、どの程度音量が抑えられている=圧縮されているかを示しています。同時に音も変化しているのがわかるでしょうか。

音の変化がわかりにくい時は[AMOUNT]を最大まで上げて聞いてみてください。最大にすると少し潰れたような音になるのがわかると思います。

題材にしているボーカルファイルの場合は上記の画像くらいの位置(つまみの位置は時計の針に見立てるので、この場合は13時くらいと表現します)になりました。この状態で聞いてみるとある程度音量差が揃えられていて全体が満遍なく聞こえるようになっていることがわかります。

最終的にはコンプレッサーをかけた状態で、まだ聞こえない部分、聞こえすぎる部分にオートメーションを使うようにすると良いでしょう。

コンプレッサーのことをもう少し知ってみる

勘のいい人はお気づきかもしれません。

コンプレッサーは音を圧縮=潰すので、最大音量は小さくなってしまうのでは?

そのとおりです。
大きい音を自動的に圧縮、つまり小さくしているので、そのままだと小さくなってしまいます。でも、ボーカルがよく聞こえるようになりましたよね。なぜでしょう?

その答えを見てみましょう。まずは[プラグイン]の[Compressor]をクリック。

するとこんな画面が現れます。この画面、実はコンプレッサーの「中身」なのです。さきほどつまみひとつで操作していたコンプレッサーですが、裏では4つのパラメーターが動いていたのです。

[AMOUNT]つまみを回すと[Gain]のパラメーターがどのように動くか注目してください。

おわかりになりましたか?

AMOUNTを右に回すとGainの数字も大きくなります。Gainというのは「どのくらい音量を上げるか」というパラメーターなので、つまりAMOUNTでコンプレッサーを強くかけた時は同時に音量もアップされていたということ。

この、「大きいところを小さく」「全体を大きく」がコンプレッサーの基本動作となります。

上の図で言うところの「コンプレッサー始動!」の赤い線が「Threshold(スレッショルド)」というパラメーターです。AMOUNTを回すと下がってきます。回せばたくさん音が潰れるということです。

コンプレッサーは非常に奥が深く、それぞれのパラメーターを正確に理解するのは結構たいへんで、勉強が必要です。

が!この段階で覚えておけばいいのは、コンプレッサーを使うことで「ある程度音量を均一化できて聞きやすくなる」ということ。これだけです。他は追々覚えていけば良いでしょう。

コンプレッサーには他の役割もある

コンプレッサーで音量を自動的に揃えることができるというのはわかったと思いますが、コンプレッサーは他の用途で使うこともあります。

コンプレッサーは常々難しいエフェクトだと言われていますが、その要因が、用途が多いのに分けて説明されていないからなのです。他の用途を簡単に説明しておきますが、この段階では覚えなくても良いです。ふーん、くらいで読んでおいてください。

音の立ち上がりを目立たせる

コンプレッサーをうまく使うことでボーカルの子音を目立たせるなど、音の立ち上がり部分の音を目立たせる、または逆に引っ込めることが可能です。

こちらの画像を見てください。

全力少年のサビの最後、「世界を〜」のところの「せ」の音を拡大したところです。「せ」の音は子音と母音で出来ていて、赤い部分が子音、青い部分が母音です。ちなみに赤い部分だけで約100ms(ひゃくミリセカンド、=0.1秒)あります。

この青い部分だけコンプレッサーで圧縮するようにすると、相対的に赤い部分の音が目立つことになり、子音を強調することができます。これを突き詰めるには[Attack Time(アタックタイム)」というパラメーターを使いますが、また別の機会にお伝えしましょう。

なんかいい感じの音にする

コンプレッサーを使う大きな目的がこちら。なんかいい感じの音にするという目的です(笑)

その昔コンプレッサーはハードウェアでしたが、昔のコンプレッサーはそれぞれ独特の動作、独特の音をしていたのです。コンプレッサーを始動させなくても、通すだけで音が変わりました。いい感じに(笑)。すでに生産完了となった今でもビンテージとして愛され、プラグインエフェクト化されています。

モデル名で言うとUrei 1176やTeletronix LA-2Aというコンプレッサーが有名です。特にLA-2Aはボーカルにぴったりで、筆者もよく使っています。

▼UNIVERSAL AUDIO / 1176LN(有名なビンテージコンプレッサーUrei 1176の復刻版)

▼UNIVERSAL AUDIO / LA-2A(有名なビンテージコンプTELETRONIX LA-2Aの復刻版)

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これらのビンテージ系のエフェクターは、使い方がよくわかっていなくても通すだけでいい感じの音になります。故にコンプレッサーを理解していない人でもいい感じの音になり、それがコンプレッサーだと理解してしまいます。

高価でとても手が出ませんが、プラグインという形で再現されていますので、ほしい時はプラグインが良いでしょう。

しかし、説明したように本来の目的は音量調整。これに加え音の立ち上がりや音質を調整するために使用。そしていい感じの音に。これら3つの用途を1台で行うことも可能なので、話がややこしくなっています。

どの目的で何を使うのか、明確にしながらミキシング作業を進めましょう!

コンプレッサーとオートメーションの複合技で仕上げよう

コンプレッサーのおかげで話が長くなりましたが、オートメーションとコンプレッサーを使って聞こえにくい部分をなくしていきましょう。手順をまとめてみます。

1.まずはコンプレッサーである程度音量を揃えてしまいます。設定値は青いランプが2〜3個くらい点くように[AMOUNT]を調整しましょう。

2.この状態でサビの部分でボーカルのフェーダー位置を決めます。小さい音量で、スピーカーで聞いて、リファレンス音源を参考に決めましょう。

3.最後に、聞こえない部分を探してフェーダーを書きましょう。

と、理解してしまえばとても簡単な話です。聞こえにくいを解消するのはとっても大事。何回も聞いて聞こえにくいをなくしましょう。

書き出しチェックと次回予告

最初の回で書き出しの方法を書いていますので、ぜひチェック。作業をして区切りがついたら書き出して色々な機器や色々なシチュエーションで聞いてみましょう。筆者はiPhoneスピーカーチェックとカーステチェックを必ず行うようにしています。

次回はプラグインというものを増やして遊んでみたいと思います。有料おすすめプラグインも紹介しますが、無料で一通り揃ってしまう素晴らしいプラグインがあるので紹介しますね。

プラグインを集めるのが趣味になってしまうと本筋からそれますし、筆者は与えられた環境を使い切る方が好きなのであまりプラグインは買いません。が、少しはあってもいいと思います(笑)。プラグインを追加するという体験を通して音作りの楽しさを知ってもらえれば幸いです。

ではまた次回!

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