「Solo Live at Lydian / 魚返明未」 ピアノ・ソロ収録記 (ジャズ・ライブレコーディング)
こちらの作品の録音記。魚返明未さんの演奏するLydian珠玉のYAMAHA C-3ピアノ。ぜひお楽しみください。僕は「みかん」という曲が好きです(^o^)
https://www.e-onkyo.com/music/album/tcj4582530660054/
▼魚返明未さんの演奏スケジュール
https://ameblo.jp/amiogaeri/
録音システムとトラック割り
最近ハイレゾ音源の仕事も時代の流れからか次第に増えて来まして、今回もピアノソロをハイレゾ収録するお仕事です。クライアントさんの配信するレーベルのコンセプトで、ライブハウスに通っているような気分になれるというものがあるので、林のようにマイクを立てることはせず、会場の雰囲気を収録することを目指しました。
レコーダーはTASCAM HS-P82。
ハイレゾでマルチトラック収録ができ、ハイレゾ収録時も安定稼働する、マイクプリ搭載のレコーダー。やはりライブハウスやジャズクラブは設置スペースや機材が限られているため、また、小回りが効くようにしたいということでHS-P82を選びました。とにかく安心してレコーディングできる機材です。
ステージ脇のスペースがなく、前に陣取るとお客さんの視界で目立ってしまうので客席最後方に陣取りました。
トラック割りは以下のようにしました。
1-2:客席ステレオ
3-4:ピアノオンマイクステレオ
5-6:ピアノオフマイクステレオ
7:ピアノオンマイク ハンマー
8:ピアノオンマイク 予備
マイクのセッティング
全景はこんな感じ。
普通ピアノは真横向きが多いのですが、お客さんから演奏者がよく見えるように、ということでこの向きに。基本的にはライブ収録はライブ演出優先だと考えてますので、これに対応せねば。
何が問題かというと、ピアノは反響板の向きに音が飛ぶので、この場合は音が斜めに飛ぶことになります。
ということで、ピアノのオフマイクをステージ上手脇に設置。壁の反射が気になりますが、まぁ聞いてみて考えようかなと。
セッティングはX-Yで。
僕は基本的にX-Yのまとまった音が好きです。ステレオ2本でひとつ、という感じが強く出るので。
といいつつオンマイクはA-Bで。笑
イメージ的にはこのオンマイクをメインに使う予定で、ピアノソロなので、左右の音場を広く使うためにオンマイクは広めの音像に、オフマイクは狭い音像にしたいという狙いです。
違う角度から。
場所は耳で聞いて決めました。ソロだと嬉しいのは、他の楽器のカブりを気にしなくて良いので、こういう自由なセッティングが出来るところですね。
低音のパワー感を出す為に一応オンマイクを低音弦に立てました。あとは距離的に弱くなる最高音部にも1本。どちらもあまり期待してないです。笑
ということで、このような全体像になりました。
リハーサルの時間に録って直してを繰り返しましたが、概ね最初の位置が良かったようで数センチの修正で済みました。
録音された音の印象
自宅に帰ってチェックしたところ、オンマイクステレオの音が非常に良かったので、オンマイクステレオを中心に音作りしました。他のオンマイクはなくても十分だったのでオフ。
オフマイクステレオはやはり背面反射が強かったので、ほどほどにしました。
Lydianのピアノ、とても良い音で鳴っていました。まぁヤマハの音なんですが、比較的高音域の抜けが良く、むしろアタックを抑えたいくらいでしたね。なんでもオーナーさんがわざわざ浜松まで行って聞き比べして買ったんだとか。
こういう良い楽器との出会いはなかなか楽しいものです。
見ての通りオンマイクステレオはAKG C214、オフマイクはAKG C480なんですが、C214、結構いいです。確かに単一指向性しかないC414という感じの音。ちょっと元気のいい音でしたが、それは多分新しいからだろうなと思います。使い込んで落ち着けば良い感じになってくれそうです
反省点としては機材の位置が当日決めで後ろになってしまったので仕方ないのですが、マイクケーブルの長さの組み合わせが悪く、ステージ上で赤いケーブルを使わざるを得なくなってしまったことですね。結構目立つなと、、。
あと、あまり喋らないしMCの予定無かったんでMCマイク無しにしたのですが、結構喋っていたのでMC用立てておけば良かったかなと笑。
ミキシング進行中
ミキシング作業も無事に進行中です。
このツイートの通りですが、ピアノはミキシングが本当に難しいです。
というのも、イコライザーやコンプレッサー等のプラグインで音を作るわけですが、位相の乱れが如実に出る楽器なんですよね。使うイコライザーが限られるし、もっと言えばイコライジングしない方がいい。なるべくイコライジングしないで完成するように録音時から考えてマイキングするのが良いなと思います。が、これはよく考えてみればどの楽器も同じことが言えますよね。今更当たり前のことを言っていることに気づきましたw
前はWavesのリニアフェイズEQをよく使っていましたが、最近はiZotopeのOzoneを使うことが多いです。さらに言えば、SONARでミキシングしていた時はCakewalkのリニアフェイズEQを使っていたんですが、これが結構使いやすくてよかった印象です。普段は色々なEQを使いますが、それらのEQだと特にピアノの時は「冷静に聞くとかけないほうがいい音だなー」という音になります。
今回はハイレゾ音源での配信がメインということで、リスナーさんもそこそこオーディオな人々ということで、つまり、あまりダイナミックレンジを狭めずに済むし、再生される機器もそこそこの環境が期待できるということ。助かります。
最近某有名ドラマーの方に、「コンプってかけなきゃいけないの?」と聞かれて、答えるのがなかなか難儀しました。よく考えると確かにかけなくても良いものではあるなと。
エフェクトってかけなければいけない、かけたいからかけるんですよね。一般的な再生環境で普通に聞こえるようにするためにダイナミックレンジをコントロールするので、逆説的には良い環境で大きな音で聞く人が対象であれば、音量差を残した方が良いということになります。コンプレッサーの音質が欲しい時も多いので、それとは別の話ですが。ちなみに僕はあまり音を汚したりしないタイプなので、ドラムの音なんかは生音に近い方向性です。故に、ドラマーの方には気に入って頂けることが多いです。僕も叩くのでよくわかりますけど、ドラマーさんって、ドラムの生音が好きという事が多いんですよね。
色々考えていると進まなくなるので、ズバっと混ぜちゃいますけどね。ミキシングは難しい!
そんなこんなで、この作品の発売は年末から年始くらいかなと思います。あとは収録曲が決まったらミキシングの修正をして、マスタリングです。
お楽しみに。
完成音源
https://www.e-onkyo.com/music/album/tcj4582530660054/
ミキシングを中心にレコーディングからマスタリングまで手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事、合同会社SoundWorksK Marketing代表社員。2021年よりYouTubeチャンネル「SoundWorksKミキシング講座」を展開中。過去には音響機器メーカーTASCAM、音楽SNSサービスnanaのマーケティングに従事。